エヌビディア製GPUは6Gに必須か?ノキアのAI-RAN戦略にエリクソンとサムスンが異論

2026年8月28日 17:02

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記事提供元:Tech Times

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6Gに向けた無線アクセスネットワーク(RAN)の演算基盤を巡り、主要ベンダーの戦略が分かれている。ノキアはNvidiaのGPUを組み込んだAI-RANを推進し、エリクソンは専用設計のシリコンを重視する。サムスン電子は汎用CPUを基本とし、必要に応じてGPUなどのアクセラレータを組み合わせる立場だ。

策定中の6G標準は、特定のプロセッサや半導体メーカーを指定していない。通信事業者にとっては、各方式の性能や消費電力だけでなく、既存設備との互換性、ソフトウェアの移植性、特定ベンダーへの依存度も重要な判断材料となる。

■ノキアはNvidia製GPUでAI-RANを強化

ノキアとNvidiaは2025年10月、5G Advancedから6Gへの移行を見据えた戦略的提携を発表した。Nvidiaはノキアに10億ドルを出資する計画を示し、ノキアはNvidiaのアクセラレーテッドコンピューティング基盤を利用したAI-RAN製品を自社のRANポートフォリオに加える方針を打ち出した。

両社の発表によると、出資価格は1株当たり6.01ドルで、Nvidiaの持ち分は約2.9%に相当する。10億ドルは1ドル159円で換算すると約1,590億円となる。T-Mobile USも両社とAI-RAN技術の検証に取り組み、試験は2026年中に始まる予定とされた。

ノキアは2026年7月、NvidiaのAerial AI-RANプラットフォームと自社のanyRANソフトウェアを組み合わせた商用AI-RAN基盤を発表した。同社によると、AIを利用した無線技術により既に20%を超える周波数利用効率の向上を確認しており、2027年に50%、2028年には100%を超える改善を目標としている。

これらはノキアが公表した開発目標であり、導入環境、周波数帯、ネットワーク構成などによって実際の効果は変わる。100%を超える改善が得られれば、同じ周波数資源から引き出せる通信容量を大幅に増やせる可能性がある。

ノキアがGPUに期待する理由の一つは、ベクトル演算を多用する高度なアルゴリズムをRANに取り込みやすくなることだ。同社の最高技術責任者であるパラビ・マハジャン氏は、計算負荷の高さから従来利用してこなかった再生核ヒルベルト空間(RKHS)に関連する手法も、GPUによって扱えるようになるとの見方を示している。

GPUの採用は、単に既存処理を高速化するだけでなく、ソフトウェア更新によって新しい受信処理や最適化手法を追加しやすくする狙いも持つ。ノキアは、既存の基地局設備に追加する構成や、CPUとGPUを一体化した演算基盤など、複数の導入形態を用意する方針だ。

■エリクソンはリアルタイム処理と電力効率を重視

エリクソンは、GPUを6GやAI-RANで利用できる選択肢の一つと認める一方、必須の演算基盤とは位置付けていない。用途ごとにCPU、GPU、専用シリコンを使い分けるべきだとし、時間制約が厳しい無線処理では専用設計のシリコンに利点があると主張する。

エリクソンが重視するのが、RANにおけるリアルタイム処理の制約だ。5G NRではサブキャリア間隔によってスロット長が変わり、30kHzの場合は1スロットが0.5ミリ秒となる。スケジューリングやリンク適応など、短い制御周期で動く処理にAIを適用する場合、その周期に間に合う推論時間が求められる。

同社のRANコンピュート部門責任者であるマイケル・ベグレー氏は、こうした処理では大規模なAIモデルをそのまま使用するのではなく、限られた時間と演算資源に合わせてモデルを小型化する必要があると説明している。エリクソンは、モデルが比較的小さい用途ではGPUの大規模な並列処理能力が常に決定的な優位性をもたらすとは限らないとの立場だ。

これは、すべてのRAN機能が一律に0.5ミリ秒以内の処理を求められるという意味ではない。要求時間は機能やネットワーク構成によって異なる。GPUの効果を評価する際には、演算性能だけでなく、データ転送や待ち時間、消費電力を含めたシステム全体を見る必要があるというのが争点である。

エリクソンは、専用設計のEricsson Siliconを搭載したRANコンピュート製品を展開している。NTTドコモは2026年7月、同社のRAN Processor 6672を含む最新世代のRANコンピュートプラットフォームを選定し、商用導入を開始した。エリクソンによると、6672は従来モデルと比べて収容局数を最大2倍にしながら、消費電力を半分未満に抑える。

同社は2026年6月、ソフトウェアサブスクリプション「AI in RAN」も発表した。既存の対応ハードウェア上で利用でき、リンク適応、ビームフォーミング、基地局配置の最適化などにAIを取り入れる。

エリクソンによると、AI in RANの技術は商用ネットワークへの導入と試験を合わせて世界15件以上で検証され、ダウンリンクスループットを最大20%、周波数利用効率を最大10%改善した。これらも特定の導入環境で得られた同社公表値であり、すべてのネットワークで同じ効果を保証するものではない。

■サムスンはCPUを基本にアクセラレータを追加

サムスンは、CPUだけ、GPUだけという二者択一を取らない。汎用CPUをRANの基本的な演算基盤とし、ワークロードが並列処理に適し、追加性能が必要な場合にGPUや専用アクセラレータを加える構成を想定している。

同社はCPUをSUV、GPUをスポーツカーに例える。スポーツカーは速度で優れる一方、SUVは人や荷物を運び、長距離を走り、多様な用途に対応できるという比喩だ。RANではピーク時の演算性能だけでなく、多種類の処理への対応、運用効率、更新のしやすさも考慮する必要があるとの考えを表している。

サムスンはIntel Xeon 6を利用したvRANを商用ネットワークで検証している。2026年1月には、米国の大手通信事業者の商用ネットワークで、Intel Xeon 6700P-Bシリーズを搭載した単一の汎用サーバーを使い、同社のvRANによる通信に成功したと発表した。

AMDとも協業し、AMD EPYCプロセッサ上で動作するAI対応vRANの検証を進めている。サムスンによると、最新のAMD製CPUを使ったマルチセル試験では、追加のアクセラレータを使わずに商用水準を想定したvRAN性能を確認した。

一方、サムスンはGPUの利用を否定していない。大量のデータを並列処理できるGPUの特徴が生きるワークロードであれば、CPU主体の構成にアクセラレータとして追加する考えだ。

同社は、GPUの処理量を増やそうとすると、データをまとめて投入するための待ち時間などが増え、厳しい処理期限との間にトレードオフが生じる場合があると指摘する。GPU、CPU、専用シリコンの評価は単純な演算性能の比較ではなく、各RAN機能の遅延要件や処理量に即して行う必要がある。

■CUDAへの依存と汎用基盤の集中リスク

ノキアの戦略では、NvidiaのCUDAを利用してRANソフトウェアを最適化する。CUDAはNvidiaのGPU向けに設計されたソフトウェア基盤であり、蓄積したコードや開発ノウハウを他社の半導体へ移す場合、大幅な改修が必要になる可能性がある。

そのため、ノキアとNvidiaの組み合わせは高度なGPU処理を活用できる一方、通信事業者やノキアがNvidiaの製品計画やソフトウェア環境に依存する度合いを高めるとの見方がある。実際の移行コストは、どの機能をCUDA向けに最適化するか、ハードウェア抽象化層をどの程度利用するかによって変わる。

汎用CPUを使えばベンダーロックインが自動的に解消されるわけでもない。vRANソフトウェアが特定プロセッサの命令、アクセラレーション機能、ネットワークインターフェースに強く最適化されていれば、別のCPUへ移す際にも検証や調整が必要となる。

サムスンがIntelとAMDの双方でvRANを検証しているのは、こうした依存を抑え、通信事業者が演算基盤を選択できる余地を広げる取り組みと位置付けられる。ただし、異なるプロセッサ間で同じ性能、消費電力、運用性を得られるかは、それぞれの商用構成で確認する必要がある。

エリクソンの専用シリコンにも別の形の依存がある。電力効率やリアルタイム性能を高めやすい半面、演算基盤とRANソフトウェアが密接に統合されるため、通信事業者が別のアーキテクチャへ移行する際には設備更新や再検証が必要になる。

■6G標準はプロセッサの種類を指定しない

国際電気通信連合(ITU)が進めるIMT-2030と、3GPPが策定する6G仕様は、特定のCPU、GPU、ASICや半導体メーカーを採用するよう求めるものではない。ITUの技術性能要件は、候補となる6G無線方式を評価するための最低性能を定めるもので、実装方法を制限しない。

3GPPではRelease 21から6Gの規格策定が本格化する。2026年6月に承認された日程では、Stage 1の凍結が2027年3月、Stage 2が2028年6月、Stage 3の機能凍結が2028年12月、ASN.1とOpenAPIの凍結が2029年3月に予定されている。

したがって、「6G仕様が2029年3月に一度に確定する」という理解は正確ではない。機能仕様は段階的に固まり、2029年3月は主にプロトコル記述を含む最終段階の節目となる。

標準がプロセッサを指定しない以上、GPU、専用シリコン、汎用CPUのいずれも6Gの実装候補になり得る。最終的な選択は、各社が規格上の性能要件を満たしながら、通信事業者が求める容量、遅延、電力効率、導入コスト、更新性をどのように実現するかに左右される。

■通信事業者が比較すべき3つの方向性

ノキアの提案は、GPUの演算能力とソフトウェア更新性を利用し、従来の基盤では扱いにくかったアルゴリズムを導入する方向である。2028年までに100%を超える周波数利用効率の改善を目標に掲げるが、商用ネットワークでどこまで再現できるかが今後の焦点となる。

エリクソンは、RAN向けに設計したシリコンと既存設備上で動作するAIソフトウェアを組み合わせる。既に商用ネットワークと試験環境で改善値を示していること、追加ハードウェアなしで導入できる構成があることを強みとする。一方、設計が自社の専用基盤と密接に結び付くため、別のアーキテクチャへの移行には相応の負担が伴う。

サムスンは、IntelやAMDの汎用CPUで動作するvRANを基本とし、必要な場所にGPUなどを追加する。プロセッサを選べる余地が比較的大きい一方、ノキアのような大幅な周波数利用効率の改善目標は示していない。

3社の違いは、GPUが速いか、ASICが省電力かという単純な比較ではない。RANのどの処理にAIを使い、その処理をどの時間枠で終え、ソフトウェアとハードウェアを何年単位で更新するかという設計思想の違いである。

通信事業者は、ノキアの今後の試験結果、エリクソンの商用導入実績、サムスンのマルチプロセッサ対応を比較しながら、性能と柔軟性、消費電力、移行コストのバランスを判断することになる。

■注目ポイントQ&A

●6G通信にNvidia製GPUは必須ですか?

必須ではありません。ITUや3GPPの6G関連仕様は、特定のプロセッサや半導体メーカーを指定していません。GPU、専用シリコン、汎用CPUのいずれでも、定められた性能要件を満たせる可能性があります。

●「0.5ミリ秒の制約」とは何ですか?

5G NRでサブキャリア間隔が30kHzの場合、1スロットの長さは0.5ミリ秒です。短い制御周期で動くRAN機能にAIを組み込む場合は、その処理期限に間に合う推論速度が求められます。ただし、すべてのRAN処理に一律の0.5ミリ秒制限が適用されるわけではありません。

●サムスンの立場はエリクソンとどう違いますか?

両社ともGPUを6Gの必須条件とはしていませんが、エリクソンは専用設計のシリコンを重視し、サムスンはIntelやAMDの汎用CPUを中心とするvRANを推進しています。サムスンは必要な処理に限ってGPUなどを追加する方針です。

●ノキアのGPU戦略にはどのようなリスクがありますか?

CUDA向けにソフトウェアを最適化するほど、他社製プロセッサへの移行時に改修や再検証が必要になる可能性があります。また、ノキアが掲げる周波数利用効率の改善目標が、さまざまな商用ネットワークでどの程度得られるかは今後の導入結果で評価されます。

元記事: Samsung and Ericsson Say Nvidia GPUs Aren’t Essential for 6G; Nokia Disagrees

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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