【分析】中国製DUV露光装置はASMLを脅かすのか 性能、量産化、輸出規制への影響を読み解く

2026年7月29日 23:43

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記事提供元:Tech Times

中国が初めて液浸DUV(深紫外線)露光装置を商用生産したと報じられた。この動きは、中国が製造できる半導体の微細化水準を引き上げるものではないが、既存の製造能力を維持するための装置を国内で調達できるようになったことを意味する。米国やオランダの政策決定によって遮断されない供給ルートを確保したという点で、戦略的に重要な節目となる。

■中国初の液浸DUV装置が意味するもの

The Informationの報道によると、スタートアップのShanghai Yuliangsheng Technologyを含む複数の中国企業の開発チームを取り込んだ、政府支援を受ける上海企業が、シリコンウェハー上に回路パターンを形成する液浸DUV露光装置の製造を開始した。この報道を受け、ASMLの株価は月曜日に最大8%下落し、6月上旬以来最大の1日当たり下落率を記録した。アプライド・マテリアルズ、ラムリサーチ、KLAも連れ安となり、5〜7%下落した。

投資家がこの節目を評価する前に知っておくべき事実がある。アメリカン・エンタープライズ研究所が2026年4月に発表した報告書「Lithography Loophole」に記されているように、新装置の最初の顧客になるとされる中国の半導体メーカーSMICは、すでにASMLの旧型DUV装置を使って7nmクラスのチップを製造しているということだ。

Yuliangshengの装置がもたらすのは、新たなプロセス能力ではない。中国がすでに持つ製造能力を支える国内供給ルートを追加するものであり、ワシントンやハーグの政策決定によって遮断されることのないルートである。これは戦略的に重要だが、市場の売りが示唆したものとは根本的に異なる。

■液浸DUV装置の仕組みと能力

液浸DUV露光装置は、波長193nmのフッ化アルゴンレーザー光を、「液浸」の要素となる水を通して、フォトレジストが塗布されたシリコンウェハーに照射する。水の屈折率(1.44)によって、レンズシステムの実効的な開口数(NA)を空気中より高め、より微細なパターンを形成できる。ASMLの現行の液浸装置はNA 1.35を実現し、1回の露光で38nmまでの回路パターンを解像できる。回路寸法が36nmを下回り、先端AIチップ向けの微細なプロセスに入ると、水を用いる方式は物理的な限界に達し、マルチパターニングと呼ばれる技術が必要になる。

マルチパターニングは、わずかに位置をずらしたマスクを使ってウェハーを複数回露光し、1回の露光よりも微細なパターン密度を実現する技術である。SMICは少なくとも2023年からこの手法を使い、既存のASML製装置で7nmクラスのチップを製造してきた。ファーウェイの「Mate 60 Pro」に搭載されたプロセッサ「Kirin 9000S」もこの手法で製造されており、その存在を受けて、米商務省は制裁違反の可能性について調査を開始した。しかし、露光回数が増えるたびに、マスク層間の微小な位置ずれであるオーバーレイ誤差が蓄積し、歩留まりを直接制限する。アメリカン・エンタープライズ研究所の2026年4月の報告書によると、SMICの5nmプロセスの歩留まりは約20%であり、TSMCがEUV(極端紫外線)装置によるシングル露光で実現している、ほぼ完全に近い歩留まりとは対照的だ。

技術分析によれば、Yuliangshengの装置は、ASMLが2008年ごろに出荷を開始した「TWINSCAN NXT:1950i」と同程度の能力を持つ。同システムは当初、シングル露光による32nmクラスのプロセス向けに設計された。ASMLの現在の主力液浸装置は「NXT:2100i」と「NXT:2050i」である。2008年当時の仕様と現在の仕様の差は、単なる開口数の違いではなく、スループット、オーバーレイ制御、歩留まりにおける約15年間の継続的な改良の蓄積を表している。

新装置は、シングル露光による28nmプロセスでの製造を対象としている。エンジニアらは、マルチパターニングを使えば7nmクラス、さらに歩留まりは低くなるものの、5nmチップの製造に到達する可能性もあるとみている。つまり、SMICがASML製装置ですでに到達しているのと同じ限界に位置しており、それを超えるものではない。

■開発の背景:Yuliangsheng、SiCarrier、ファーウェイ

業界の報道でこの生産計画の中心とされているのは、2022年に設立され、登録資本金10億人民元(約1億4800万ドル、約243億円、1ドル=164円換算)のスタートアップ、Shanghai Yuliangsheng Technologyである。TrendForceによると、ファーウェイとの関係が報じられている深センの半導体製造装置メーカーSiCarrierも株主に名を連ねている。

この生産計画全体には、Yuliangshengだけでなく、複数の中国企業から集められた開発チームが関与しているとみられる。ロイター通信は独自の情報源に基づき、量産立ち上げを担う企業としてShanghai Aishengnaという別の事業体を挙げている。意図的に秘密裏に進められているこの計画を巡り、関係企業の構図には曖昧さが残っている。

新システムの部品の大部分は中国国内で調達されている。ただし、一部の重要部品は依然として日本から調達されており、国内サプライヤーの遅れが2026年の生産量を制限している。この装置は2025年9月からSMICで評価を受けている。初期の顧客としては、SMIC、華虹半導体(Hua Hong Semiconductor)、そして今週上場した長鑫存儲(CXMT)が見込まれている。

この3社はいずれも、2026年4月に米連邦議会へ提出され、その後、下院外交委員会を通過した「MATCH法案(ハードウェアに関する技術規制の多国間協調法案)」の対象施設リストに含まれている。この法案は、これらの企業に対するASML製DUV装置の販売と保守サービスを法律で禁止するものである。Yuliangshengの装置は、まさにこうした事態に備えて各社が構築を進めてきた保険に当たる。

■投資家が織り込んだもの、本来織り込むべきだったもの

月曜日のASMLの株価は最大8%下落し、6月上旬以来最大の1日当たり下落率を記録した。アプライド・マテリアルズ、ラムリサーチ、KLAもそれぞれ5〜7%下落し、iシェアーズ半導体ETF(SOXX)も急落した。ある二次分析は、半導体製造装置セクター全体で失われた時価総額を約440億ドル(約7兆2160億円、1ドル=164円換算)と推定している。ただし、これは単一の情報源による推定であり、規模の方向性を示す数字として扱うべきである。

この株価下落は、構造的に永続すると考えられてきた競争上の堀に、少なくとも1つの亀裂が入ったとの懸念を反映している。その懸念には根拠があるが、亀裂は月曜日の市場の動きが示唆したほど大きくはない。

SemiAnalysisのアナリストはCNBCに対し、「装置の性能、装置自体の量産、稼働する装置群の性能、周辺エコシステム、そして減価償却を終えたASML製装置と比べた経済性の低さは、いずれも中国製DUV装置に不利に働く」と述べた。また、「装置自体の量産は、最も過小評価されている部分だ」と指摘した。さらに、中国製装置は「輸出規制によってASMLがすでに失った売上を置き換える」ものであり、「ASMLが法的にも物理的にも供給できない装置が現地で製造されても、完売状態の受注残から売上が差し引かれるわけではない」と述べた。

ODDO BHFの株式調査責任者Stephane Houri氏はCNBCに対し、この装置がDUV生産のローエンドに限定される可能性が高いことを踏まえ、「割り引いて受け止める」と語った。DGA Albright Stonebridge GroupのパートナーPaul Triolo氏は、世界規模の装置群を運用する能力について、「最低限の能力を備えた少数のDUV装置を国内で供給することと、真の競争をもたらす世界規模の装置群を支えることは別問題だ」と率直に指摘した。

ASMLの中国事業への実際の依存度も、この状況を理解する手掛かりになる。ASMLの純売上高に占める中国の割合は、2025年の33%から2026年には約20%に低下した。第2四半期には、ASMLの純システム売上高約66億ユーロ(約75億ドル、約1兆2300億円、1ドル=164円換算)のうち、中国が約14%を占めた。金額にすると約9億2400万ユーロ、約10億5000万ドル(約1722億円、1ドル=164円換算)である。7月の決算説明会でCFOのRoger Dassen氏は、ASMLが2026年に約130台の液浸DUVシステムを出荷する計画で、2027年には液浸装置の生産能力を30%拡大し、2028年にはさらに30%拡大する可能性を検討していると明らかにした。Yuliangshengの5台は、ASMLの2026年の計画出荷台数の3.8%に相当する。2027年に20台を生産した場合は、同年のASMLの想定生産能力の約12%に当たる。

■輸出規制が防ごうとした問題を生み出した理由

今回の節目は、緊迫した政策局面のただ中で訪れた。MATCH法案は、既存のEUV禁輸措置を液浸DUV装置とその保守サービスにまで拡大するものである。一部の規定は、中国の半導体工場ですでに設置され、稼働している装置にも影響するため、大幅な規制強化となる。欧州政策分析センター(CEPA)は2026年5月のレビューで、MATCH法案は多国間合意に向けて重大な構造的障害に直面していると指摘した。ワッセナー・アレンジメント自体の交渉に約3年を要したことを踏まえると、同盟国間の輸出規制を調整するために設定された150日という期限は非現実的だとしている。

政策論争の根底には、規制が意図したとおりに機能したのかという、さらに難しい問いがある。AI Futures Projectは2026年6月の予測で、中国が液浸DUV装置を商用規模で生産できるようになるのは2030年代半ばだと見込んでいた。オランダの半導体アナリストが指摘したように、実際の出来事はその予測より少なくとも10年早く到来した。アメリカン・エンタープライズ研究所の2026年4月の報告書は、より根本的な問題を記録している。中国は規制強化前に取得して備蓄していた数百台のASML製DUV装置を使い、すでに最先端に近いAIチップを製造していた。そのためDUV規制は、阻止しようとした製造能力が確立された後に適用された、不完全な措置になったということだ。

中国国内での装置生産がその流れを加速させるのか、それとも中国がすでに持つ製造能力について供給網の自立を確保するだけなのかが、政策立案者にとっての重要な問いとなる。その答えはMATCH法案の政策判断を左右する。中国が自国で装置を生産できるのであれば、ASMLによる既設装置の保守を禁じても、中国の半導体生産を必ずしも遅らせない一方、ASMLには実質的な損失をもたらす可能性があるからだ。

■ASMLの真の優位性とは

DUVにおけるASMLの優位性は、装置そのものだけに基づくものではない。同社は40年をかけ、約5,000社の専門部品サプライヤーからなるグローバルサプライチェーンを構築してきた。通常、各EUV装置にはASMLの技術者が現地担当者として配置され、装置の約30年にわたる稼働期間を通じて顧客の工場を支援する。DUVにも同じように蓄積された専門知識が生かされている。スループットの最適化、プロセスレシピのライブラリ、計測システムとの統合、オーバーレイ制御ソフトウェア、歩留まり改善技術は、装置仕様だけでなく、ASMLの組織的な知識と顧客のプロセスフローに組み込まれた資産である。

ASMLは年間約130台の液浸DUVシステムを出荷している。現在の主力装置であるNXT:2100iとNXT:2050iは、Yuliangshengの装置が現在匹敵するとされる2008年当時の技術から、15年以上にわたって改良を重ねた成果である。ASMLのCEOであるChristophe Fouquet氏は7月の決算説明会で、メモリ製造で必要となる露光工程の増加は、顧客がすでに「マルチパターニングを、より安価なシングル露光のEUVに置き換えている」ことを部分的に反映していると述べた。この発言は経済的な現実を正確に捉えている。7nmでDUVのマルチパターニングを使う方法は高コストで時間がかかり、EUVを利用できる環境では経済合理性をますます失っている。中国は、その非効率な道を歩まざるを得ない。

中国が現在手にしているのは、ASMLと同等の技術ではない。供給を遮断される可能性のある輸入装置ではなく、国内で調達できる装置を使ってその道を歩む能力である。

■今後の展望

当面の問いは、中国がASMLに追いつけるかどうかではない。スループット、歩留まり、エコシステムの厚みという点で、中国が追いつくには何年もかかり、10年以上を要する可能性もある。問うべきなのは、5台が50台になるのか、残る日本製の輸入部品を完全に国産化できるのか、そして性能と歩留まりが競争の時間軸に影響するほど速く向上するのかという点である。

生産規模の拡大は、SemiAnalysisが最も過小評価されていると指摘した課題である。Yuliangshengが現在の水準から生産量を2倍または3倍に増やしたとしても、年間生産台数で見たASMLとの差は、見通せる将来にわたって大きなままである。また、中国の半導体工場がASML製装置への依存から完全に脱却できるほど安定した大量生産を実現するには、装置についてさらに検証を重ねる必要がある。

ASMLの戦略的地位は保たれているが、今後の軌道は変化した。輸出規制により、中国はすでにASMLにとって成長市場ではなくなっていた。中国はすでに国産の代替装置を開発し、DUV装置の限界に当たる微細なチップを製造するためにマルチパターニングを利用していた。月曜日に変わったのは、その代替装置がほぼすべての公表予測より早く登場し、しかも試作段階ではなく生産段階に達したことだ。

ASMLは、自社技術を再現することは「決して容易ではない」と述べている。この点については、ASMLと独立系アナリストの見方が一致している。中国のDUV装置は、事業計画ではなく物理的限界を基準に節目が測られる業界において、実質的な前進である。この装置が突き当たる上限は、競争に失敗したために生じるものではない。世界中のすべてのDUV装置が共有する物理的限界である。

■注目ポイントQ&A

●中国の新しいDUV装置は、これまで中国で製造できなかったチップを製造できるのですか?

いいえ。これが、市場の売りによって見えにくくなった重要な点です。SMICはすでに、旧型のASML製DUV装置でマルチパターニング技術を使い、7nmクラスのチップを製造しています。Yuliangshengの装置は、2008年ごろに初めて出荷されたASML製装置の仕様とおおむね同等です。この装置がもたらすのは、中国がすでに実証している製造能力を支える国内供給ルートであり、将来の輸出規制強化によって遮断されないルートです。これは戦略的に重要ですが、製造能力の拡大ではなく、供給網の自立を意味します。

●中国製装置の能力が限定的であるなら、なぜASMLの株価は急落したのですか?

投資家が価格に織り込んでいるのは、Yuliangshengが2026年に出荷すると見込まれる5台そのものではありません。中国の国産露光装置開発が、ほぼすべての専門家の予測より早く試作段階から生産段階へ移ったという、その軌道です。AI Futures Projectは2026年6月の時点で、中国が液浸DUV装置を商用生産できるようになるのは2030年代半ばだと予測していました。この予測はすでに現実と合わなくなっています。市場の共通予測より約10年早く実現したことで、投資家はASMLの中国における長期的な市場地位の見積もりを変更することになります。ASMLがすでに販売を禁じられている装置が現地生産されても、世界的に完売状態にあるASMLの短期的な受注残には影響しません。

●マルチパターニングとは何ですか?なぜ中国の新装置の能力を制限するのですか?

マルチパターニングとは、わずかに異なるマスクを使ってシリコンウェハーを複数回露光し、1回の露光で形成できる限界より微細な回路パターンを作る技術です。中国製かASML製かを問わず、DUV装置で28nmクラスを下回る微細な製造プロセスに到達するために使われます。問題は、露光を重ねるたびにオーバーレイ誤差と呼ばれる微小な位置ずれが蓄積し、歩留まりが低下することです。DUVのマルチパターニングによる5nm製造では、SMICの歩留まりは約20%と報告されています。ファーウェイのAIアクセラレーターの生産目標を満たせる水準ではあるものの、シングル露光のEUVと比べると経済的に非効率です。中国の新装置も同じ制約を受けます。DUVの上限は、より優れたDUV装置を作れば解消できる競争上の差ではなく、この技術方式そのものの物理的限界です。

●MATCH法案とは何ですか?中国の国内DUV生産は、この法案の重要性にどう影響しますか?

MATCH法案(ハードウェアに関する技術規制の多国間協調法案)は、米連邦議会で審議されている法案です。Yuliangshengの装置の初期顧客として名前が挙がるSMIC、華虹半導体、CXMTを含む中国の半導体メーカーに対し、ASML製DUV装置の販売と保守サービスを禁止する内容です。可決されれば、新規輸出だけでなく、すでに設置されている装置の保守も対象となるため、大幅な規制強化になります。中国による装置の国内生産は、MATCH法案を巡る判断を二つの方向で複雑にします。西側諸国の決意を示すという点では禁止の緊急性を高める一方、中国が既存のプロセスでチップを製造し続ける能力に対して、禁止措置が及ぼす実質的な制約を小さくするためです。

元記事: China Makes First DUV Lithography Machine: Supply Independence, Not New Nodes

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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