相場展望3月6日号 米国株: 金利低下=株高が法則なのに、金利低下⇒株安を紐解く 日本株: トランプ関税に引っ掻き回される

2025年3月6日 12:56

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)3/3、NYダウ▲649ドル安、43,191ドル
 2)3/4、NYダウ▲670ドル安、42,520ドル
 3)3/5、NYダウ+485ドル高、43,006ドル

【前回は】相場展望3月3日号 米国株: 「皇帝」トランプ氏への懸念材料が、世界を震撼させる 中国株: 上海総合指数は3,500ポイントが大きな壁 日本株: 12/27高値から軟調局面、ボックス圏相場から下放たれる

●2.米国株:金利低下=株高が法則なのに、金利低下⇒株安の現象を紐解く

 1)米国雇用統計の3/7発表が次の試金石
  ・米国労働市場の勢いを判断する手掛かりを提供する。

  ・米国景気を占う
    ・雇用者が増えれば、経済が拡大していると判断される。減少となれば、米国経済は後退していると見られる。
    ・ADP雇用者数が予想を下回ったことは、米国経済の後退を示す。

 2)トランプ関税引上げにより、(1)経済悪化(2)インフレ(物価上昇)上昇する
  ・株安を招く  :経済後退と企業収益悪化で株式がリスク回避で売り。 
  ・金利低下する :リスク回避として債券市場に資金が流入し債券が買われるため。

 3)米国株の先行きを占うエヌビディアの株価下落が示す米国株先安の難題
  ・エヌビディア株価
     1/07最高値 153ドル
     1/13    133
     1/24    148
     2/03    116
     2/18    143
     3/05    117
    ・高値から3/3まで▲24%安

  ・エヌビディア株価下落は調整局面入りの判断水準▲10%を大きく下回った。米国株高を牽引してきただけに、米国株全体への波及が懸念される。

 4)金利低下=株高が法則なのに、金利低下⇒株安の現象を紐解く
  ・金利の推移
               2/19    3/5  金利の低下幅
    10年国債利回り   4.533%  4.280  ▲0.253%低下
    02年国債利回り   4.266   4.007  ▲0.259%低下

  ・主要株価指数の推移
              2/19    3/5  株指数の下落幅 下落率
    NYダウ      44,627   43,006  ▲1,621下落  ▲3.6%
    ナスダック総合   20,056   18,552  ▲1,504下落  ▲7.5%
    S&P500      6,144    5,842  ▲ 302下落  ▲4.9%
    半導体株(SOX)  5 ,309    4,700  ▲ 609下落  ▲11.5%

  ・株価は金利が低下すると株高意識が薄れ株高となる法則がある。しかし、最近の株価は金利低下という追い風が吹いているのに、逆行安となっており、法則に反する動きとなっている。

  ・その原因は、「金利低下の要因が、関税措置が巻き起こす景気後退と物価高を意識したリスク回避のため、株売り⇒債券買い」にある。つまり、スタグフレーションの恐れから株式市場から債券市場に資金が流入している。株式が売られて債券が買われる、「債券価格が上昇=債券利回りが下げる」という環境に現在、陥っているのである。

 5)昨年11月の米国大統領選後の株価上昇をほぼ帳消し、特にナス・S&P・SOX
  ・米国主要株価指数の推移
              11/4(大統領選前) 高値   3/5
    ・NYダウ      41,794   12/04 45,014  43,006
     ナスダック総合   18,179  02/16 20,173  18,552
     S&P500       5,712   02/19  6,144   5,842
     半導体株(SOX)   4,973   01/22  5,469   4,700

  ・NYダウは、トランプ勝利で+3,227ドル上昇したが、その後、▲2,008ドル下落。上昇幅の▲62%下落している。特に、ナスダック総合とS&P500は、大統領選前の付近に戻っている。半導体株(SOX)に至っては、選挙直前をも下回る状況にある。

  ・トランプ関税が発するリスクを嗅ぎ取って、株式が売られている状況にあると思われる。

●3.米国ADP民間雇用者数、2月は+7.7万人増、市場予想+14万人を下回る(ブルームバーグ)

 1)2月米民間雇用者数は昨年7月以来の小幅な伸びにとどまり、労働需要の鈍化と整合する結果となった。

●4.米国政権、司法省やFBIビルなど443物件の売却検討、政府効率化で(ロイター)

 1)この取り組みの下、早期退職や解雇により既に職員10万人が削減された。

●5.関税が物価押上げの可能性も、金融政策は「良好」=NY連銀総裁(ロイター)

●6.トランプ関税で自動車メーカーの影響、GMは利益▲90%減=野村証券(産経新聞)

 1)メキシコとカナダからの輸入に25%関税、中国からの輸入に10%の追加関税という前提で、野村証券が試算した。
   GM ▲90%減、マツダ ▲57%減、ステランテ ▲53%減、
   フォード ▲30%減、トヨタ ▲18%減、起亜 ▲8%減

 2)米国で販売される自動車価格は+6%上昇する。2025年の米国の自動車需要は▲12%減少すると予想した。

●7.ベツセント米国財務長官、「関税で株売り」を一蹴、株安は一時的と主張(ブルームバーグ)

●8.米国の対中国関税、中国の事業者が吸収するため価格上昇せず=米財務長官(ロイター)

●9.米国小売大手ターゲットのコーネルCEO、関税影響「農産物は数日で価格上昇」(ロイター)

 1)家電量販大手ベストバイのバリーCEOは、販売製品の調達先は「中国が1位、メキシコが2位」であり関税の影響は大きいと指摘。また、消費者の必需品以外への支出が抑制傾向にあるとの見方を示した。

●10.トランプ氏、対ウクライナ軍事支援を一時停止、首脳会談の衝突受け (ロイター)

●11.米国ISM製造指数、2月は停滞領域に近付く、仕入れ価格大幅上昇(ブルームバーグ)

 1)ISM(米国供給管理協会)製造業供給景況指数は▲0.6低下の50.3、予想50.7を下回った。
 2)受注と雇用が縮小圏に沈む。仕入れ価格は2022年6月以来の高水準になった。

●12.米国ISM非製造業総合指数53.5と、前月52.8から上昇、予想は52.6(ロイター)

 1)最近見られる工場の原材料価格の急騰と相まって、今後数ヵ月でインフレが加速する可能性を示唆した。
 2)トランプ政権によるカナダ・メキシコ・中国製品への関税により、アボカドから自動車まで、あらゆる品目の価格が上昇すると予想される。

●13.カナダ外相、「米国関税に対応用意」、発動なら1,550億カナダドル相当の報復(ロイター)

●14.トランプ氏、「4/2、輸入農産物に関税」、農家に国内販売準備を呼びかけ(ロイター)

●15.米国、ロシア制裁緩和の可能性を財務・国務省に検討作業を要請=情報筋(ロイター)

●16.トランプ氏、関税発動巡り揺るがず、消費者への影響は「軽微」と高官(ロイター)

●17.トランプ氏、パナマ運河の運営会社を米国連合で買収を称賛(ロイター)

●18.台湾TSMCが米国に15兆円投資、トランプ氏と面会、報道(共同通信)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)3/3、上海総合▲3安、3,316
 2)3/4、上海総合+7高、3,324
 3)3/5、上海総合+17高、3,341

●2.中国全人代が開幕、成長目標は+5%前後、景気支援に特別国債増発(ロイター)

●3.中国国防費、2025年も+7.2%増、地政学的緊張下で拡大続く(ロイター)

 1)伸び率は昨年と同じで、予想と一致し、引き続き経済成長率目標の+5%前後を上回った。

 2)習近平氏が国家主席兼軍最高司令官に就任した2013年の国防予算は7,200億元だったが、10年余りを経て今年は1兆7,800億元(2,456億5,000万ドル)に拡大した。中国軍は現在、新型のミサイルや軍艦、潜水艦、監視技術などを開発中で、習氏は2035年までに軍の近代化の完了を目指している。

●4.中国、鉄鋼産業再編へ減産方針を表明、規模は明示せず(ロイター)

●5.中国、対米国鶏肉・小麦に3/10から10~15%の報復関税(ロイター)

●6.中国、全人代は3/5~11に開催(ロイター)

●7.中国BYD、香港市場で2021年以来最大の新株発行55.9億ドル調達(ロイター)

 1)BYDは調達資金8,330億円を、研究開発への投資、海外事業の拡大、運転資金の補填などに充てる計画。

●8.中国の銘酒「茅台」、不景気や嗜好変化で販売不振、貴州省財政にも暗雲(ロイター)

●9.中国の石炭余りが深刻化、輸入規制再開の可能性=モルガン・スタンレー(ブルームバーグ)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)3/3、日経平均+629円高、37,785円
 2)3/4、日経平均▲454円安、37,331円
 3)3/5、日経平均+87円高、37,418円

●2.日本株:トランプ関税に引っ掻き回される

 1)円高から円安に転換も、トランプ氏の円安政策に言及で、再び円高
  ・トランプ氏の円安批判が直撃し、円相場は3/4に一時148円台半ばに突入。その後、急激な円高となったため円が売られ149円半ばとなった。
  ・トランプ氏は、円安問題を解決する手段として、関税の発動が必要になるとの認識を示した。

 2)日本株は(1)米国関税(2)円高懸念(3)対中国輸出規制強化で軟調続く

 3)トランプ関税に引っ掻き回される
  ・3/5、カナダとメキシコに「関税の軽減」のうわさで株式は反発。
  ・世界の景気敏感株である日本株は、不透明感が拭えず、反騰のきっかけをつかみにくい状況が続く。

●3.キリン、免疫を護る「プラズマ乳酸菌」を世界展開、収益源に期待(ブルームバーグ)

●4.セブン&アイ、ヨーカ堂などの統括会社株をベインに7,000億円超で売却へ(ロイター)

●5.国民負担率、今年度45.8%の見込み、前年度を▲0.3%下回る(NKK)

●6.日銀・内田副総裁、追加利上げは「基調的な物価上昇率を見て判断」(HNK)

●7.法人企業統計、10~12月期設備投資は▲0.2%減、前年の反動で15期ぶり減(ロイター)

●8.トランプ大統領、日本と中国を名指しで通貨安誘導と牽制(読売新聞)

●9.ホンダ、次期「シビック」の生産をメキシコから米国へ変更、関税回避(ロイター)

●10.スーパーでのコメ平均価格、8週連続値上がり、5キロあたり3,939円(NHK)

●11.セブン&アイ創業家、MBO取り下げ説明「短期間での資金調達、容易でなかった」(NHK)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・2607 不二製油    業績向上期待
 ・6141 DGM森精機   受注拡大予想
 ・8630 SOMPO     業績堅調

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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