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相場展望2月13日号 米国株: トランプ大統領は支離滅裂? インフレ加速でも経済成長? 日本株: 「高評価の石破・トランプ会談」は本当か? ぬか喜びしたが
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)2/10、NYダウ+167ドル高、44,470ドル
2)2/11、NYダウ+123ドル高、44,593ドル
3)2/12、NYダウ▲225ドル安、44,368ドル
【前回は】相場展望2月10日号 米国株: トランプ関税は後退、覇権国・中国に絞るか? 日本株: ホンダ・日産自との統合破談は、ホンダは正しい決断だが、日産自は不幸
●2.米国株:トランプ大統領は支離滅裂? インフレ加速でも経済成長が続くと思うのか?
1)決算発表で好業績株と、半導体株が米国株高を支えた
2)トランプ米国大統領の関税政策の不透明感が、米国株の重荷に
3)FRB「利下げを急がない」姿勢で、金利上昇⇒円安・ドル高に進行
4)米国の物価上昇は着実に再上昇の過程にある⇒金利上昇の方向にある
・米国1月消費者物価指数(CPI)は前年比+3.0%、コア指数+3.3%上昇。
5)トランプ大統領は支離滅裂? インフレ加速でも経済成長が続くと思うのか?
・関税引上げ⇒物価高(インフレ)を招く⇒金利引上げでインフレ抑制が必要になるというのが、市場の定説である。しかし、トランプ大統領は、FRBに金利引き下げを要求⇒景気浮揚を誘引する方向も指向している。つまり、「(1)関税引上げ(2)金利低下で、米国景気の上昇」を示している。インフレ加速の弊害を無視している。高インフレの下で、長期経済成長が実現すると信じているのだろうか?高インフレで米国民の生活が平穏に過ごせると思っているのか?高インフレが長期化すると、個人の生活や米国経済に悪影響をきたした歴史がある。今回の大統領選挙で民主党のハリス氏が負けたのは、民主党のバイデン氏の経済運営で高インフレが発生し米国民の支持がトランプ氏に回った側面が強い。(1)関税引上げと(2)利下げを追い求めるトランプ大統領の政策では、米国のインフレは再加速が必至である。インフレ加速による生活苦が増すと、反トランプ・デモが起こると予想する。2年後の中間選挙では、トランプ共和党は負ける可能性が濃い。
・現状は、1月消費者物価指数(CPI)は住居費や食品が上昇し前年比+3.0%、コア指数も+3.3%と予想を上回る上昇となりインフレが加速している。FRBが目標とするインフレ目標+2.0%に近付いていたが、今やインフレの再加速懸念が高まっている。そのため、FRBが政策金利を引き下げるとの期待がさらに薄れている。むしろ、インフレ抑制のため「金利引上げ」が必要となる可能性が増している。
●3.米国1月消費者物価指数(CPI)は前年比+3.0%に上昇が加速、予想上回る(ロイター)
1)1月は前年比+3.0%上昇、市場予想は+2.9%、12月は+2.9%だった。
2)変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数は前年比+3.3%上昇、昨年12月は+3.2%上昇だった。
●4.トランプ大統領、鉄鋼・アルミ製品に+25%の追加関税を課す命令書に署名(TBS)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)2/10、上海総合+18高、3,322
2)2/11、上海総合▲4安、3,318
3)2/11、上海総合+28高、3,346
●2.中国・SMIC、純利益▲38%減の約1.1億ドル、レガシー半導体投資が収益圧迫(ロイター)
●3.中国の婚姻数が▲2割減少し、過去最低を記録(ブルームバーグ)
1)2024年の婚姻数は610万組と、2013年に記録したピークの半分未満。婚姻数はこの10年間ほぼ一貫して減少し、2019年には年1,000万組を割り込んだ。
2)結婚は、高額な費用や景気不振、伝統的な結婚を巡る考え方の変化に伴い、特に若年層で人気がなくなっている。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)2/10、日経平均+14円高、38,801円
2)2/11、祝日「建国記念日」で休場
3)2/12、日経平均+162円高、38,963円
●2.日本株:「上々の評価を得た石破・トランプ会談」は本当か? ぬか喜びしたが・・・
1)好業績株が買われた
2)日本・米国会談が無難に通過し、個別物色が活発
3)米国は鉄鋼・アルミニウムに関税賦課
・米国の鉄鋼の輸入先
(1)カナダ (2)ブラジル (3)メキシコ (4)韓国 (5)ベトナム (6)日本
・中国から米国への鉄鋼輸出は1.4%程度であるが、メキシコやベトナムを経路した間接輸出量を含めると総量は大きい。
・日本は鉄鋼輸出は6位で、バイデン政権時に125万トンまでは関税がゼロとされた。そして、最近年の輸出量は118万トンで、全量が関税非課税となっている。
4)円相場は円高⇒円安に転換
・パウエル米国FRB議長の発言「金利低下に慎重」発言を機に、金利低下を見込んでいた投資家が債券を買いなおし、米国金利が上昇し、円安・ドル高に転じた。
5)「上々の評価を得た石破・トランプ会談」は本当か? ぬか喜びしたが・・
・会談したものの「日本の果実はなし・米国への巨額お土産持参」に過ぎず。むしろ、トランプ氏から要求される一方で、トランプ氏ベースの会談に終始した。
・石破首相は2/12の参議院本会議で、トランプ氏との会談で「関税については議論がなかった」と述べた。つまり首脳会談で関税について問わなかった、議題に挙げなかったのだ。
・2/7の首脳会談前に、トランプ氏は「鉄鋼・アルミニウム・半導体・医薬などに追加関税を課す」と発言していた。首脳会談前に伝わっていた鉄鋼などへの関税賦課に対して、石破首相は「首脳会談でなぜ反発を示さなかったのか」、なぜ質問もしなかったのか?なぜ、日本の鉄鋼輸出に対する関税賦課から回避する言動を取らなかったのか?それは、日本の国益を守るのが首相の責任という自覚に欠けていたのか?
・首脳会談直後は、(1)関税賦課を回避(2)日本製鉄のUSスチール買収の落としどころが見つかった、ということで首脳会談は「成功」と高評価された。
・しかし、
・関税回避の要求はせず。
・日本製鉄のUSスチール買収案件は、「投資」と言葉をすり替えて解決に近づくどころが、混乱を増長させた。
・石破首相はトランプ氏にお土産を持参したが、トランプ氏の要求に膝を折って捧げた。
・米国の対日本貿易赤字を解消する規模となる、アラスカ産液化天然ガスの輸入を申し出た。1,300キロのパイプライン敷設費用の負担が日本に降りかかってくる可能性がある。
・日本の防衛増強を約束した。これは米国から高額な武器購入の拡大を意味する。
・日本から米国に1兆ドル投資を表明した。例として、いすゞの米国での工場建設を挙げた。
・石破首相のトランプ氏への贈り物が実現しなければ、反感を買うだけ
・石破首相は、帰国後「米国への1兆ドル投資は、【民間がする】」と語った。政府が積み上げたところ8,000億ドルだったため、きりの良い1兆ドルにするために2,000億ドルを積み増したという。他人事で、リーダーショップ性が見られない。
・破首相とトランプ大統領の首脳会談は当初「高評価」されたが、実際は「ぬか喜び」で「ただ単にトランプ氏詣をした」に過ぎない。しかも、その手土産の負の遺産はとてつもなく大きいといえる。
・インドのモディ首相、カナダの首相、メキシコの大統領の対処の上手さと比べようがない。
●3.台湾・シリテク社、FDK社をTOB、1株435円、富士通の保有株を一部取得(ロイター)
1)買い付け価格は2/12終値の640円から▲32%ディスカウント。
2)発行済み株式の45%取得し、持分法適用の関連会社とし、上場を維持。
●4.シマノ、新たに500億円の自社株買い、今後2年で約1,000億円取得へ(ロイター)
●5.ソフトバンクG、4~12月期決算最終利益+6,361億円、3年ぶりの黒字(NHK)
●6.いすゞ、米国に新生産拠点、商用車の電動化にらみ約430億円投資(ロイター)
●7.台湾・鴻海、目指すのは日産との協業で、買収ではない=会長(ロイター)
1)ルノーが保有する日産株の買い取りを検討(ブルームバーグ)
●8.倒産件数、1月では11年ぶり800件超、「人手不足」倒産が3.1倍増(東京商工リサーチ)
●9.小林製薬、2024年度通期営業利益248億円(前期比▲3.6%減)、最終利益100億円(前期比▲50.5%減)、特別損失▲127億円計上(読売テレビ)
●10.資生堂、2024年12月期通期純損益▲108億円赤字、前期は+217億円黒字
1)年間配当金は前年60円を40円に減額。(ブルームバーグ)
過去事業売却で▲128億円の引当金。
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・4385 メルカリ 業績好調
・5726 大阪チタニウム 業績好調
・6080 M&Aキャピタル 業績好調
著者プロフィール
中島義之(なかしま よしゆき)
1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou
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