相場展望4月8日号 米国株: NYダウなど主要株価指数が「弱気」、上昇支持線下回る 日本株: 買い主体の交替「海外投資家⇒証券自己」に、リスク注意

2024年4月8日 11:32

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)4/4、NYダウ▲530ドル安、38,596ドル(日経新聞より抜粋
  ・米国市場でNYダウは4日続落して終えた。1日の下げ幅としては2023年3月22日の▲530ドル安以来の大きさだった。年内の利下げに慎重な姿勢を示す米連邦準備理事会(FRB)高官の発言に加え、原油高などによるインフレ懸念が意識され、午後に下落に転じた後は、幅広い銘柄に売りが出た。

【前回は】相場展望4月4日号 米国株: インフレ再加速・金利上昇に入ったと予想、米国株割高意識 日本株: 期初の下落は想定通り、今週後半は反発予想、問題はその後

  ・ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は4/4、経済のモメンタム(勢い)が強いことを背景に「インフレの横ばい状態が続けば利下げする必要があるか疑問が生じる」との見解を示した。FRBが年内の利下げを見送る可能性が意識された。市場は年内の利下げを織り込んできただけに売りが広がりやすかった。

  ・米原油先物相場が午後に上げ幅を拡大し、一時1バレル=87ドル台と期近物として昨年10月以来の高値をつけた。原油高もインフレ懸念につながった。市場では「相場はFRBの政策予想に敏感な地合いだ」として、米国が金融緩和に転じにくくなるとの見方を誘った。

  ・4/5には3月の米雇用統計の発表を控える。市場は非農業部門の雇用者数が前月比+20万人増え、増加幅は2月の+27.5万人から縮小を見込んでいる。一方、失業率は3.8%と2月の3.9%から低下が予想されている。予想を上回る雇用の強さを示せば、利下げ観測が一段と後退する。重要指標の発表を前に持ち高調整の売りも出た。

  ・朝方は買いが先行し、NYダウの上げ幅は+290ドルを超える場面があった。4/4発表の週間の米新規失業保険申請件数が22.1万件と、ダウ・ジョーンズ通信がまとめた市場予想の21.3万件を上回り、1月下旬以来の高水準となった。前日に昨年11月下旬以来の高水準をつけていた米長期金利の上昇が一服し、ハイテクや半導体株を中心に幅広い銘柄に見直し買いが入っていた。

  ・個別銘柄では、セールスフォースが大幅安となった。アルファベットが顧客情報管理(CRM)のハブスポットを買収すると伝わり、競争が激しくなるとの見方が重荷となった。スリーエムやアメリカン・エキスプレス、アムジェンの下げが目立った。

  ・ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は反落し、前日比▲228安の16,049で終えた。3/22につけた最高値16,428を上回る場面があったが、買いは続かず下げに転じた。エヌビディアやアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)など半導体株の下げも目立ち、アルファベットも安かった。

 2)4/5、NYダウ+307ドル高、38,904ドル(日経新聞より抜粋
  ・4/5の米株式市場でNYダウは5営業部ぶりに反発し、前日比+0.79%高で終えた。4/5発表の米雇用統計は雇用者数が市場予想以上に拡大したものの、賃金インフレの加速は示さなかった。NYダウは前日に▲530ドル下げており、ハイテクなどを中心に幅広い銘柄に見直し買いが入った。

  ・雇用統計では非農業部門の雇用者数が前月比+30.3万人増と、ダウ・ジョーンズ通信がまとめた市場予想の+20万人増を大幅に上回った。失業率は3.8%と2月の3.9%から低下した。一方、平均時給の伸びは前月比+0.3%と市場予想に一致し、前年同月比では2021年6月以来の低さとなった。労働参加率が上昇したこともあって、雇用者数が拡大しても「労働需給の明らかな引き締まりは示さなかった」との受け止めがあった。

  ・雇用の堅調を背景に米連邦準備理事会(FRB)の利下げが想定よりも先送りになったり、利下げペースが緩やかになったりするとの見方があった。半面、労働需給の緩和とインフレ鈍化基調が続くとして、一部参加者はFRBの6月利下げ開始予想を維持した。

  ・インフレ高止まりや米景気の底堅さを背景にFRBが利下げに慎重になるとの懸念から、NYダウは前日までの4営業日で▲1,200ドルほど下げていた。雇用統計の発表を受けて材料出尽くし感から売り持ちを整理する動きがあった。ハイテクに加えて景気敏感株や消費関連株の一角にも買いが入った。

  ・NYダウは+400ドル強上昇する場面があった。アマゾンやキャタピラー、セールスフォース、マイクロソフトの上昇が目立った。一方、インテルは下落した。

  ・ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は反発した。前日比+199高(+1.24%高)の16,248で終えた。メタプラットフォームズが高い。エヌビディアやアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)など半導体株も上昇した。一方、低価格モデルの投入を中止する計画と4/5にロイター通信が報じたのを受け、テスラが下げた。

●2.米国株 : NYダウなど主要株価指数が「弱気」となり上昇支持線を下回る

 1)NYダウなど主要株価指数は上昇支持線を下に抜き「弱気」をみせた
  ・NYダウの推移
   3/28   39,807ドル
   4/04   38,596
   差引  ▲1,211ドル下落
   4/95に+307ドル反発上昇したが、上昇支持線まで追いつかず。

 2)同様に、SP500株価指数とナスダック総合株価指数も、上昇支持線を下回って推移している。

 3)フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は米主要株価指数を牽引してきたが、先行して、株価指数を切り下げている。

 4)したがって、当面の米国株買いには、慎重なスタンスが目立つと思われる。
  ・米国株上昇を担ってきた主要7枚柄の中から脱落が目立ち、4銘柄に減少。

●3.FRBの2幹部、インフレ上振れリスクを指摘し、利下げ転換に警戒発言(ロイターより抜粋

 1)ボウマン理事、「複数の上振れリスクが存在し、利下げが適切になる段階にはまだ達していない」と述べた。「インフレの鈍化が停滞、もしくは再加速した場合は、政策金利引上げの必要が出てくる可能性がある」とも語った。

 2)ダラス連銀ローガン総裁、「利下げについて検討するのは時期尚早だ」と明言。

●4.リッチモンド連銀総裁は、利下げに慎重(フィスコ)

●5.米新規失業保険申請件数は前週比0.9万件増の22.1万件、予想は21.4万件(ロイター)

 1)2カ月ぶりの高水準となり、労働市場の緩和を示唆。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)4/4、祝日「清明節」で休場

 2)4/5、祝日「清明節」で休場

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)4/4、日経平均+321円高、39,773円(日経新聞より抜粋
  ・東京株式市場で日経平均は反発した。米長期金利の上昇一服を背景とした4/3の米ハイテク株高が支えとなり、東京市場でもソフトバンクGなどハイテク株の一角に買いが入った。日経平均は前日までの下げ幅は3月末比で▲900円を超えていたため、自律反発や押し目を狙った買いも入りやすかった。上げ幅は+700円を超える場面もあったが、買い一巡後は利益確定目的の売りが出て伸び悩んだ。

  ・米サプライマネジメント協会(ISM)が4/3発表した3月の非製造業(サービス業)景況感指数は市場予想を下回った。インフレ鈍化が意識されたことで米金利低下を促し、4/3の米市場ではハイテク株の上昇が目立った。主要な半導体関連銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)は上昇して終えた。東京市場でも多くの半導体関連株は高い水準が続いたものの、株式分割考慮後の上場来高値を更新した東エレクは午後に利益確定売りが出て下げに転じた。日経平均も大引けにかけて急速に上げ幅を縮小した。

  ・東証プライム市場の値上がり銘柄数は約6割だった。伊藤忠は4/3午後に発表した2025年3月期(今期)の株主還元方針が引続き好感され、2カ月ぶりに上場来高値を更新した。市場では上場企業の株主還元強化や資本効率改善の動きが一段と広がる可能性が意識され、日本株買いに弾みが付いたとの見方があった。国内内外の2,400人の人員削減など構造改革を午後に発表したコニカミノルタは一段高となった。

  ・東証株価指数(TOPIX)は4営業日ぶりに反発し、+0.94%高。JPXプライム150指数も4営業日ぶりに反発して+0.79%高で終えた。

  ・個別銘柄では、三菱UFJやディエヌエー、東電が上げた。一方、ニッスイや住友ファーマ、ANAは下げた。

 2)4/5、日経平均▲781円安、38,992円(日経新聞より抜粋
  ・東京株式市場で日経平均は大幅に反落した。節目の39,000円を下回るのは3/15以来の3週間ぶり。前日の米株式市場で主要株価指数が下落した流れを受け、東京市場では半導体など主力銘柄を中心に利益確定売りが膨らんだ。外国為替市場でやや円高・ドル安が進んだことも重荷となり、海外短期筋と見られる株価指数先物に断続的な売りが日経平均の下落に拍車をかけた。下げ幅は一時▲1,000円に迫った。

  ・前日の米株式市場でNYダウなど主要株式指数は下落した。米連邦準備理事会(FRB)高官が年内の利下げに慎重な見方を示したことや、原油高によるインフレが意識されたことが響いた。米エヌビディアなどの下げが目立ち、東京市場でも東エレクやレーザーテク、ソシオネクスなど半導体関連銘柄への売りにつながった。

  ・午前の中頃に日経平均は一段安となった。チャート上で日足の25日移動平均(4/4時点で39,796円)を下回ったことで調整局面入りが意識され、売り圧力が強まった。もっとも、午後に入ると根強い先高観を背景にした押し目買いが入ったほか、週末を控えた売り方の買い戻しも入り、日経平均はやや下げ渋った。

  ・東証株価指数(TOPIX)は反落し、終値は▲29安(▲1.08%安)の2,702だった。JPXプライム150指数も反落し、▲16安(▲1.40%安)の1,171で終えた。

  ・個別銘柄では、日経平均への寄与度が高いファストリやソフトバンクGが下げた。トヨタや三菱UFJも安い。一方、エーザイやTOTO、キッコーマンが買われた。

●2.日本株 : 海外投資家の撤収と、証券自己の買い上がりが目立つ、リスクに注意

 1)投資主体別で見ると、証券自己が海外投資家(現物)を超えて1位、リスクあり
  ・投資主体別の年初~3月4週(~3/29)の累計残高
   買  証券自己       +4兆1,132億円買残
   買  海外投資家(現物) +3兆0,143
   売  年金        ▲4兆0380億円売残
   売  海外投資家(先物) ▲2兆7,385     
   売  個人(現物・信用) ▲  8,152

  ・証券自己の買い残高が目立つ。

  ・日経平均の40,000円超えは、証券自己による買い上がり抜きには考えられない。

 2)海外投資家(現物)は買いが止まり、短期筋の海外投資家(先物)は売り圧力増す
  ・海外投資家の残高推移
               現物    先物    合計
   1月1週(~1/05)  +1,406億円  ▲2,541億円  ▲1,135億円
   3月1週(~3/08) +3兆2,183   ▲1兆1,254   +2兆0,929
   3月2週(~3/15) +3兆1,308  ▲1兆7,106   +1兆4,204
   3月3週(~3/22) +3兆2,269   ▲1兆7,718   +1兆4,551
   3月4週(~3/29) +3兆0,143   ▲2兆7,385   +2,758

  ・日経平均の上昇は、海外投資家(現物買い)が牽引した。しかし、海外投資家(現物株)買いは、3月1週がピークを迎えた。一方、短期筋の海外投資家(先物売り)で利益を確定してきた。

  ・海外投資家は現物と先物合計で見ると、3月4週に、わずか+2,758億円まで減少していることに注目したい。

  ・海外投資家全体では、3月4週で、日本株買いから撤収と言える状況にある。

  ・日経平均は海外投資家の買いが牽引して上昇してきた。

  ・3月1週以降、海外投資家(現物)は買いが伸び悩んでいる。半面、短期筋の海外投資家(先物)は売り越し攻勢を増した。

  ・3/29時点で、海外投資家を全体(現物+先物)で見ると、+2兆0,929億円の買い越しから、わずが+2,758億円の買い越し額まで撤退したと言える。

  ・つまり、日経平均を年初から上昇させた牽引役が3月2週以降消えたということになる。

 3)日経平均は史上最高値をつけたが、証券会社の買い上がりによるものか?
  ・日経平均の株価上昇の牽引役は、海外投資家(現物)⇒証券自己が引き継いだ。

  ・日経平均は3/22に史上最高値を更新して、40,888円をつけた。これは、証券自己の買い上がりのおかげであろう。

  ・しかし当面は、この最高値を更新できないと見る。

  ・理由は、証券自己のおかれた状況にある。証券会社は証券売買の取引のつなぎ業がメインであるため、今後は解消売り圧力が増すと考える。
 
  ・証券自己の買いは、「相場操縦」の疑いが掛けられる可能性を含んでいる。

  ・いずれにしても、証券自己の買いは長続きしないだろう。よって、証券自己による買いは、はほどなくピークを迎えると見る。

  ・そのため、証券自己の動向が市場に大きな影響を与えることに備えたい。

 4)日経平均は今週、反発すると予想する
  ・日経平均の推移
   3/22 40,888円
   4/05 38,992円
   差引 ▲1,896円下落(▲4.64%安)

  ・日経平均のピークから▲1896円安となっており、下値狙いの押し目買いが入る水準であり反発局面があるだろう。

  ・反発幅は4/5の下げ幅▲781円の回復には届かないと見る。戻し幅は下落幅の36%の680円を目途と予想する。

  ・日経平均は、「下値切り下げ」が進行しているためである。そのため、反発しても「下落幅以上の切り返し」は望めない。

  ・日経平均のチャートも、以前の上昇支持線を下回ってしまった。

  ・米主要株価指数であるNYダウ、SP500株価指数、ナスダック総合指数のチャートも下を向いた。

  ・日本株は売り圧力が増すと予想され、新たな買い牽引役が現れるまでは「守り」の姿勢に徹することが賢明のようだ。

●3.清水建設、東京で建設中のタワマンのコンクリート検査で強度不足、販売休止(NHK)

 1)東京・中央区豊海、高さ189m・地上53階建て2棟のタワーマンション。

●4.アダストリア、2024/2営業利益+56.4%増の180億円、来期予想190億円(フィスコ)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・1812 鹿島       業績向上期待
 ・4452 花王       業績好調
 ・6383 ダイフク     半導体関連投資に期待
 ・9602 東宝       好決算期待

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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