覚えておきたい中国語のネット流行語10選【2024年版】

2024年4月3日 15:59

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 中国では毎年、新聞・雑誌等各種メディアがネット流行語を発表している。現代社会において、ネット流行語はその国の社会状況を理解するためのキーワードだ。

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 今回は、上海市言語文字工作委員会及び上海教育出版社が編集する「言語文字週報」が発表した「2023年流行語トップ10」をもとに、中国語学習者が知っておきたいネット流行語の意味や使い方について解説したい。

■1: i人/ e人(i rén /e rén)

 「i人」は内向的な人、「e人」は外交的な人を表す。iは内向性を意味する英語introversionの、eは外交性を意味するextroversionの頭文字。

 「i人」、「e人」は中国で流行した性格判断テスト「MBTIテスト」の2つの代表的な性格のタイプを表している。MBTIは、心理学者ユングの理論に基づいて開発されたもので、昨年ごろから中国の若者の間で流行している。恋愛、就職、結婚などを語る時に、対象者との相性や職種との適正などを確かめるために使われ始めた。

 ・例文: 我是 i 人,所以适合办公室工作。 你是 e 人,所以适合从事与媒体相关的工作。
 (私はi型の人間なので事務系の仕事に向いている。あなたはe型の人間なのでメディア系の仕事に向いている。)

■2: 显眼包(xiǎn yǎn bāo)

 「显眼包」は「注目を集める存在」、「目立つ人」、「目立ちたがり屋さん」と言った意味。

 もともとは「でしゃばり」といったネガティブな意味で用いられていた言葉。しかし現在インターネットやSNSでは、豊かな個性や誇張されたユーモラスな表現によって人目を引くといった、ポジティブな意味に変わっている。

 YouTubeやTicTokで流れる動画の気の利いた楽しい表現を、フォロワーたちが賛美する時に使われる。

 「显眼包」は、「言語文字週報」、「咬文嚼字」、「国家言語資源モニターリング・研究センター」の3つの異なるメディア・機関によって2023年の10大ネット流行語に選ばれている。

 ・例文:大熊猫以其幽默可爱的姿态受到了广大群众的喜爱,成为全世界网友们热议的话题之一,也可以称为国家级显眼包。
 (パンダはそのユーモラスで愛らしい姿が人々から愛され、世界中のネットユーザーの間で話題になっており、国宝級の注目を集める存在だ。)

■3: 特种兵旅游(tè zhǒng bīng lǚ yóu)

 「特种兵旅游」は、「特殊部隊スタイルの旅」の意味。週末など限られた時間を利用して、安い費用で、できるだけ多くの観光スポットを巡る強行軍の旅行のことを指す。

 まるで特殊任務を遂行するかのようなハードな旅行スタイルとなるため、「特种兵旅游(特殊部隊スタイルの旅)」と名付けられた。時間も予算もない中で、それでも自分探しやリフレッシュのために個性的な旅を楽しむ若者が増えていることが見て取れる。

 「特种兵旅游」も「显眼包」に等しく、「言語文字週報」、「咬文嚼字」、「国家言語資源モニターリング・研究センター」の3つの異なるメディア・機関によって10大ネット流行語に選ばれている。

 ・例文:选择「特种兵旅游」的内在驱动力,是年轻人试图找回属于自身的活力。
 (若者たちが特殊部隊スタイルの旅に駆り立てられるのは、彼らが自分の内なるパワーを取り戻したいと願うからだ。)

■4: x门 (x mén)

 「x门」の门は日本の漢字では門と書く。xの部分に商品、動物、物事の名称が入って、xの熱烈なファンであることを表す。

 最初に流行ったのは「麦門」。麦は麦当劳(マクドナルド)の意で「麦門」は「マック好き」、「マック・マニア」、「マック・ファン」といった意味になる。その後「x门」のxの部分に様々な言葉が用いられ、「猫門」(猫マニア)「香門」(パクチーマニア)といった言葉が流行した。

■5: 遥遥领先 (yáo yáo lǐng xiān)

 「遥遥领先」は「遥かにリードする」という意味。Huaweiの端末事業を統括するCEO余承东氏がMate40シリーズの新製品発表会見で、「遥遥领先(遥かにリードする)」という言葉を14回使ったことが流行のきっかけとなった。

 余CEOは、自社の製品の技術力が他社の製品を遥かに上回っていることを強調したかったと言う。その後、「遥遥领先(遥かにリードする)」は、物事を誇張して賞嘆したり、大げさに自慢したりすることを揶揄して使われるようになった。

 ・例文:好了,好了,你什么都知道,你真聪明,在我们几个朋友圈里你总是遥遥领先。
 (分かった分かった、あなたはなんでも知っているおりこうさん。私たちのグループの中で常に遥か先を言っているよ。)

■6: 多巴胺××( duō bā àn××)

 「多巴胺」は快楽、多幸感、やる気に関係する脳内物質「ドーパミン」の意。

 最初に「多巴胺・穿搭(ドーパミン・ドレッシング)」と言う言葉が流行った。これは、鮮やかで明るいコーデの服装で、ドーパミンの分泌を促し、人を明るく楽しい気分にさせると言う。その後、服装以外にも、人々に幸福感をもたらすもの、目にすると楽しくなるような物事を形容する場合もドーパミン××という言い方をするようになった。

 例えば「多巴胺・美甲(ドーパミン・ネール)」、「多巴胺・旅游景点(ドーパミン・観光スポット)」、「多巴胺・假期(ドーパミン・ホリデー)」、「多巴胺・下午茶(ドーパミン・アフターヌーンティー)」など。

 「多巴胺××」も「特种兵旅游」、「显眼包」に等しく、「言語文字週報」、「咬文嚼字」、「国家言語資源モニターリング・研究センター」の3つの異なるメディア・機関によって10大ネット流行語に選ばれている。

■7: 孔乙己文学 (kǒng yǐ jǐ wén xué)

 『孔乙己』は、中国の作家、魯迅によって1919年に雑誌『新青年』に発表された短編小説。主人公の孔乙己は科挙の試験に落第し続け、すっかり落ちぶれてしまった読書人。自分が知識人でいたいという思いに囚われているため、現実を受け入れることができない。このため、自分でもできる仕事をみつけようとせず、酒に逃げてその日暮らしの日々を送る。

 中国国家統計局によると、2023年4月における6~24歳の失業率は20.4%に達し、2018年1月以降で最悪のレベルだと言う。こうした中、大学を卒業してもホワイトカラーには就職できないが単純作業や肉体労働はやりたくないという大学生が、自らを孔乙己に例えだした。

 これに端を発して流行したのが、孔乙己文学という言葉だ。孔乙己文学がSNS上で広がる背景には、苛烈な受験競争を耐えて学歴を手にしたのにそれが報われない、矛盾に満ちた世の中で生きていく若者たちの悲哀がある。

 ・例文:孔乙己文学盛行的背后有着许多年轻人找不到心仪工作的困顿和苦闷。
 (孔乙己文学といった言葉が流行した背景には、希望する仕事に就けない多くの若者たちの苦悩と困惑がある。)

■8: 公子/王子 请×× (gōng zǐ /wáng zǐ qǐng××)

 「お姫様(王子様)、どうか××してください」という意味。ネットでバズった笑える動画がきっかけで流行した言葉。動画は、バイクで迎えに来た父親にわがままな娘が「お姫様、どうか乗ってくださいと言ったらバイクに乗ってやるわ」と要求したところ、あきれた父親が娘をその場に放置するといった内容だ。

 その後、これを模倣して、彼氏が彼女に「公主请喝茶(お姫様、どうかお茶をお飲みください)」と言ったり、彼女が彼氏に「王子请暴富(王子様、どうか大金持ちになってください)」と言ったりする多種多様なバージョンの動画が作られた。様々なことを大げさに仰々しく要求する姿が滑稽で多くの視聴者に受けたようだ。

■9: 你人还怪好的嘞 (nǐ rén hái guài hǎo de lē,lei)

 「あなたは本当にお人好しなのだから」という意味。世間に疎い純粋な大学生が、他人をむやみに信じる様子を皮肉って使われた言葉。

 人身売買業者の言葉を安易に信じる大学生、駅で見知らぬ他人に荷物を見ていてほしいと託す大学生など、様々なストーリーの動画の締めのセリフとして、この言葉が使われた。

 ・例文:听说你又把钱借给朋友了,你人还怪好的嘞。
 (あなたまた友達にお金貸したんだって?あなたは本当にお人好しなのだから。)

■10: 挖呀挖呀挖 (wāyā wāyāwā)

 「挖呀挖呀挖」は、「掘って掘って掘りましょう」という意味。「挖」は日本語で「掘る」の意、「呀」は語気助詞。

 「挖呀挖呀挖」は武漢の幼稚園教諭が中国版TikTok(抖音)上にアップロードした童謡「花园种花(庭に花を植える)」の歌詞の一部。「花园种花」という歌は、「在小小的花园里面挖呀挖呀挖(小さな小さなお庭に、穴を掘って掘って掘りましょう)」から始まる。

 「挖呀挖呀挖(掘って掘って掘りましょう)」は、「ワヤワヤワー」という発音で、楽しく耳に残る。歌詞には「小小的种子(小さな小さな種)」,「小小的花(小さな小さな種)」など「小小的(xiǎo xiǎode)」と言う言葉が繰り返し使われていて覚えやすい。

 簡単で真似しやすい曲調のため、ネット上で替え歌が流行した。替え歌は主に給与の少なさや生活空間の狭さを皮肉る内容で、下記のようなものがある。

 ・工事現場のショベルカー運転手バージョン:「在小小的工地里面挖呀挖呀挖,挣小小的马尼,给我媳妇花(小さな小さな工事現場で掘って掘って掘りましょう。少ない少ないお金を稼いで奥さんに渡しましょう)

 ・会社員:「在小小的公司里挖呀挖呀挖,挣得少少的工资,根本不够花。」(小さな小さな会社でワヤワヤワー。給与はほんのちょっぴりで足りやしない!)

 多くのネット流行語はSNSやYouTubeに投稿された動画から生まれている。日常の1コマから採用された軽く笑える楽しい内容のものがほとんどだ。

 今回紹介した10大ネット流行語の中で、「显眼包」、「特种兵旅游」、「多巴胺××」の3つは「言語文字週報」、「咬文嚼字」、「国家言語資源モニターリング・研究センター」と3つのメディア・機関から共通でネット流行語に選ばれている。多くの中国人が日常的に耳にしている言葉なので、普段の会話やSNSのやり取りの中で気軽に使ってみよう。(記事:薄井由・記事一覧を見る

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