川崎重工、ばら積み船にガスエンジンハイブリッド推進システム納入 世界初

2023年12月31日 08:44

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ばら積み船(石灰石運搬船)のイメージ(画像: 川崎重工業の発表資料より)

ばら積み船(石灰石運搬船)のイメージ(画像: 川崎重工業の発表資料より)[写真拡大]

  • ガスエンジンハイブリッド推進システム

 川崎重工業(以下、川崎重工)は26日、NSユナイテッド内航海運が運航する石灰石などのばら積み船向けに、ガスエンジンハイブリッド推進システムを納入したと発表した。天然ガスのみを燃やすガスエンジンと、リチウムイオンバッテリーを組み合わせたハイブリッドなシステムで、ばら積み船向けの納入は世界初という。

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 ハイブリッド推進システムは、船の推進と給電を一体化して構築している。船全体の省エネを図るシステムとして川崎重工が開発した。天然ガス専焼エンジンが主に航行と電力供給を担うが、電力変換装置とリチウムイオンバッテリーを併せて搭載し、蓄電と供給が可能な仕組みを構築している。

 天然ガス専焼エンジンは、長距離・長時間の高効率な航行が可能だが、環境負荷も低減する。これまでの重油焚エンジンの同型船と比べて、CO2排出量は約24%削減。酸性雨や大気汚染の原因物質となる、硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)も大幅に削減できるという。

 全エネルギーをバッテリーから供給する、電気推進モードもある。入出港時や停泊時などに用いれば、温室効果ガスを排出しないゼロエミッションの航行が可能だ。悪天候で海が荒れた際や、急加速が必要な際は、ガスエンジンとバッテリー両者を組み合わせて使うこともできる。エンジンの安定稼働や燃費削減にもつながる。

 海上輸送の分野でも、国際海事機関(IMO)などが中心となり地球温暖化対策を進めている。IMOは2023年7月、18年に掲げた「2050年までにGHG排出を50%削減」「今世紀中早期の排出ゼロ」の目標を強化。「2050年頃までにGHG排出ゼロ」に改めた。見直し作業は21年から開始したという。

 今回の納入は、21年9月に川崎重工とNS ユナイテッド内航海運、日本製鉄、日鉄セメントなど計6社で締結した、ハイブリッド推進システム船に関する契約にもとづく。6社は、NS ユナイテッド内航海運の石灰石運搬船「下北丸」の後継船として、天然ガス専焼エンジンのハイブリッド推進システム船を建造することに合意。その船の推進装置を川崎重工が担っており、今回の納入に至った。

 同契約では、ハイブリッド推進システム船の運航開始を24年2月初旬に行う予定。主要航路となる、積港の青森県・尻屋岬港、揚港の北海道・室蘭港の港内では、電気推進モードでの航行を予定している。(記事:三部朗・記事一覧を見る

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