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【映画で学ぶ英語】『ハンガー・ゲーム0』、「応援する」という意味の動詞”root”の使い方
22日に公開された『ハンガー・ゲーム0』は、ジェニファー・ローレンス主演で好評を博したディストピア的アクション映画『ハンガー・ゲーム』3部作の前日譚。前作でドナルド・サザーランドが演じた独裁者・コリオレーナス・スノー大統領の、若き日の姿が描かれる。
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今回はこの映画のコリオレーナスの名言を例に、「応援する」という意味の動詞”root”の使い方を解説したい。
■映画『ハンガー・ゲーム0』のあらすじ
物語の舞台となる架空の国家パネムでは、12の地区を首都キャピトルが強権的に統治していた。この国では、「ハンガー・ゲーム」という殺人サバイバルゲームが毎年キャピトルで開催され、全国にテレビ中継されている。
このゲームは、各地区から12歳から18歳までの男女各1名が選出され、生き残りが1人になるまで殺し合うという残酷なものである。かつて12の地区がキャピトルに対して反乱を起こした罰として始められたゲームだが、10年も続けていると視聴者に飽きられてきた。
そこでゲームの考案者で名門校「アカデミー」の校長を務めるキャスカ・ハイボトムは、自分の学校の成績優秀な生徒たちを、ゲーム参加者の教育係に任命することを思いつく。ゲームの優勝者を教育した生徒には、本来なら成績最優秀の生徒に与えられる奨学金が賞金として与えられることになった。
この教育係に選ばれた生徒の1人こそ、名家ながら両親を早くに失って貧しい生活を送るコリオレーナス・スノー(英国出身の若手俳優トム・ブライス)であった。
■映画『ハンガー・ゲーム0』コリオレーナス・スノーの名言
校長に嫌われているコリオレーナスに割り当てられたゲーム参加者は、定住する場所を持たない流浪の民の少女・ルーシー(2021年の『ウェスト・サイド・ストーリー』のレイチェル・ゼグラー)だ。
ゲームの勝敗に自分の人生がかかっているコリオレーナスは、彼女の生存のチャンスを増やそうと必死。ルーシーに歌の才能があることに目をつけたコリオレーナスは、視聴者の人気に応じて、ゲーム参加者に水や食料を与えるようにすることを提案する。感情移入で視聴率も伸びるというわけだ。
People need someone to root for and to root against. - 「民衆には、応援や野次の対象となる人物が必要だ」
■表現解説
”Root”という語には、「根」という名詞や「根付かせる、根こそぎにする」といった動詞の意味に加えて、スポーツや選挙などで「応援する」という意味もある。
この意味での”root”の自動詞としての用法はアメリカ英語独特のもので、古くは19世紀末に用例が確認されているそうだ。
由来は不明であるが、オックスフォード英語辞典(OED)や、『Green's Dictionary of Slang』は、「掘る」という意味と関連があるのではないかと推測している。
“Root”には豚などが鼻で地を掘る意味もあり、そこから観客席に穴を掘るほど熱心に応援するという意味が生じたのではないか、というのだ。
このような意味での”root”は、肯定的な意味でも否定的な意味でも使われる。
”Root for”は、肯定的に成功を期待して応援するという意味で、自分の好きなチームや選手に声援を送るという用法で使われる。例えば「バスケットボールの試合では、いつも自分の好きなチームを応援する」を英語で言うと、”I always root for my favorite team in basketball games.”となる。
一方、”root against”は、自分の好きなチームやプレーヤーのライバル、対戦相手に対して、彼らが失敗することを期待して野次る場合に使用される。フェアプレーの精神で、"Even though they're our rivals, I can't root against such a talented player."(ライバルとはいえ、あんな才能のある選手を野次るわけにはいかない)と言うこともできる。
今回とりあげたコリオレーナスの名セリフは、”root”の持つ両方の意味を使って、共感や競争心が娯楽や政治において重要な役割を果たしていることを示している。後に独裁者となるコリオレーナスだが、彼の大衆を操作する才能の片鱗を早くも示したセリフと言えるだろう。(記事:ベルリン・リポート・記事一覧を見る)
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