「Yob」とはどんな人のこと?イギリス英語のスラング特集(34)

2024年3月30日 09:46

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 イギリス英語のスラングには、社会的な背景や行動パターンを映し出しているものが多い。今回は、「yob」とその変種「yobbo」というスラングに焦点を当て、これらがどのように使われているのか、また、その由来である「back slang」について紹介したい。

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■Yob(Yobbo)

 「yob」、または、「yobbo」とは、粗野で無教養な男性を指すスラングだ。

 「yob」と「yobbo」はどちらも同じ意味だが、国により利用が異なる。イギリスではおもに「yob」が、オーストラリアでは、それよりやや穏やかな表現として「yobbo」がよく使われている。

 英和辞書には「暴れん坊」、「ならず者」、「暴漢」、「フーリガン」、「ちんぴら」、「不良少年」、「与太者」などなど、さまざまな訳語が挙げられているが、おもに若者を指すことが多い。

 ロンドンなどの大都市では、近年、若い暴徒たちによる騒動が取り沙汰されることがあるが、それを伝えるニュースで「yob」という言葉がしばしば使われている。ネガティブなニュアンスがあるせいかBBCでは使われていないようだが、民間のネットニュースや雑誌などでは、「Yobs Attack Local Shop」(暴徒が地元の店を襲撃)のように、見出しにもしばしば登場する言葉だ。

 その由来についてだが、「yob」という言葉を見れば想像できるのではないだろうか。「yob」を逆から読んだらどうなるだろう?そう、「boy」だ。

 このように、もともとの言葉の綴りを逆さまにして作られたスラングのことを「back slang」と言う。「back slang」の例は他にもあることはあるが、「yob」のように現在も広く知られているものはほとんどない。

 「back slang」とは、もともと特定の職業グループや社会集団内で使用されていたものだ。19世紀のロンドンの売り子たちは、客に値段を知られずに仲間とコミュニケーションを取るために、隠語として使っていたという。たとえば、「bit」を「tib」、「tobacco」を「occabot」と言い換えて、「a tib of occabot」(a bit of tobacco、タバコを少し)などと使っていたそうだ。

 しかし、あくまで隠語であり、一般的な言葉ではない。現在もなお広く通用する「back slang」は、「yob」ぐらいと考えていいだろう。ちなみに、「yob」も19世紀後半から使われていたが、今のようにネガティブな意味合いで使われるようになったのは、1930年代からとされている。

 ・Don't hang around with those yobs; they're nothing but trouble.
 あの不良たちとつるむな。問題ばかり起こす連中だ。

 ・The local newspaper called the rowdy teenagers a bunch of yobs, criticising their disruptive behaviour.
 地元の新聞は粗暴な10代の若者たちを「yob」と呼び、その乱暴な行動を批判した。(記事:ムロタニハヤト・記事一覧を見る

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