地上電波をかき乱す宇宙嵐、発達原因は太陽ではなく地球にあった! 名大らの研究

2023年11月4日 15:27

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日米欧の連携による太陽風とジオスペースの観測イメージ(c)ERG science team

日米欧の連携による太陽風とジオスペースの観測イメージ(c)ERG science team[写真拡大]

 宇宙嵐(うちゅうあらし)は、プラズマの流れが地球近傍を通過する際に生ずる現象だ。地球の磁場を激しくかく乱し、スマホなどの電波通信障害だけでなく、人工衛星や地球上の送電システムに障害をもたらす厄介な存在となっている。

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 磁気嵐も宇宙嵐の一種で、1989年3月13日の磁気嵐はカナダのハイドロ・ケベック電力公社の電力網を破壊し、深刻な被害をもたらした。この時の原因は太陽フレアとされるが、名古屋大学を中心とする国際研究チームは10月31日、宇宙嵐をもたらすのは太陽起源プラズマではなく、地球に起因するプラズマが主要因であることを発見したと発表した。

 研究チームは、日本の衛星「あらせ」に加え、NASAや欧州宇宙機関の計4機の科学衛星データを解析。地球近傍の宇宙空間で、太陽と地球起源のプラズマの組成分離に成功し、宇宙嵐発生時に、地球磁気圏プラズマが太陽起源から地球起源へと変化することを発見したという。これに加え、宇宙嵐発達初期は地球起源の水素イオンが支配的で、その後、地球起源の酸素イオンが主要因となることも同定した。

 従来、宇宙嵐は太陽風プラズマが地球磁気圏に入りこみ、発生・発達すると考えられてきた。だが地球の超高層大気にもプラズマがあり、水素イオンや酸素イオンの宇宙流出も知られており、太陽風起源プラズマと地球起源プラズマを区別することは困難だった。そのため地球起源プラズマが宇宙嵐に及ぼす影響は分からなかったのだ。

 そこで研究チームは、「α粒子(2価ヘリウムイオン)」に着目。これは太陽風プラズマには含まれるが、地球起源プラズマには見られないものだ。太陽風とジオスペースの中で、水素イオンとα粒子の個数(密度)の比を同時計測し、太陽風起源プラズマと地球起源プラズマの区別に成功したという。

 研究の結果、宇宙嵐予測には従来の太陽風予測に加え、その発達プロセスの推定に地球起源プラズマの理解が必要であることが明らかとなった。今回の成果が、今後の宇宙天気予報精度向上に貢献していくことが期待される。

 なお今回の研究成果は、10月30日付でイギリス科学誌「Nature Communications」に掲載されている。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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