札幌と北海道による「国際環境金融都市」構想 その行方は?

2023年6月23日 08:55

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 札幌市と北海道は、金融庁等の政府機関、及び民間のメガバンクや北海道大学とも連携し、今後10年で150兆円の投資を呼び込むプロジェクトをスタートさせる。プロジェクトは「チーム札幌・北海道」の名称で、札幌市を国際環境金融都市として打ち出し、ESG投資を呼び込むものである。

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 中心地が北海道という点が興味深い点である。北海道は、広大な土地が広がることから、風力や太陽光発電等の再生可能エネルギーに関するポテンシャルが高い。環境省が公表する「REPOS(再生可能エネルギー情報提供システム)」においても、北海道は潜在発電力で強い存在感を示している。

 その北海道で、資金だけでなく企業や人材を呼び込むことができれば、成長軌道を描ける可能性があるため、期待される活動と言える。参加主体は、政府から金融庁、経済産業省、環境省、金融機関からはメガバンク3行と日本政策投資銀行、企業からは北海道電力等の21機関となっている。

 政府主導で国内外から投資を呼び込む活動としては、「国際金融都市構想」も存在する。金融分野での先進的な活動の推進や、外資金融機関の誘致等を行い、海外から日本への投資を呼び込む他、国内の投資活動の活発化を図ろうとしている。アジアにおける国際金融センターとなるべく、東京、大阪、福岡が競っている状況だ。

 チーム札幌・北海道の活動は、ESG投資に特化してはいるが、この都市間競争に新たに参加する構図にも見える。投資対象によって明確な線引きをすることは難しいため、資金や人材の取り合いといった無駄なコストが発生することが懸念される。

 再生可能エネルギーについては地球規模の課題であるため、海外の金融センターとの連携も必要になることが予想される。その際に国内の都市間で争っていては取り残されてしまうため、スコープの明確化や協力体制も必要になるだろう。

 国内外から投資、人材等を呼び込むという目的は一致しており、いずれも政府が関与するプロジェクトであることから、政府側で舵取りしつつ、事業機会を発掘していくことで、再生可能エネルギーの利用量拡大と投資の活性化の両面で効果が発揮されるだろう。(記事:Paji・記事一覧を見る

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