新たな排出権取引所開設の動き 課題も

2023年6月12日 16:29

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「Carbon EX」の枠組み(画像: SBIホールディングスの発表資料より)

「Carbon EX」の枠組み(画像: SBIホールディングスの発表資料より)[写真拡大]

 SBIホールディングスは8日、排出権取引所を目指す新会社を、CO2排出量の算出サービスを展開するアスエネと共同で設立した。新会社「Carbon EX」は、今秋から取引を開始する予定という。

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 Carbon EXでは、J-クレジットや非化石証書などのカーボンクレジットを取り扱う排出権取引所を開設するだけでなく、アスエネが既に提供するCO2排出量見える化や削減のソリューションも提供するとしている。

 排出権取引を実施するのは、もちろん地球温暖化防止対策が背景だが、より具体的には企業の掲げる自主的な目標達成や、規制対応を実現するためである。欧州では「Fit for 55」という1990年比でCO2を55%削減する規制が法定化されており、日本でも規制化はされていないが、2050年のカーボンニュートラルが宣言されている。

 企業の目標達成や規制対応のためには、CO2の削減が求められるが、企業の経済活動の中で自社の努力だけで実現することは難しいことが多い。そのため各企業は、温室効果ガスを削減、回収、貯蔵することを行っている企業や団体から、CO2を排出する権利(=カーボンクレジット)を購入し、自社の活動の中で排出するCO2と相殺(=オフセット)することで、CO2総排出量の目標達成を図るのである。

 国際貿易振興機構(JETRO)の調べでは、29の国で排出権取引が既に導入されており、日本も今後新たに加わることになる。

 排出権取引所は、経済産業省と東京証券取引所が2022年9月から129社と試行取引を進めているが、今回のCarbon EXはそれの対抗馬となるものである。それぞれの取扱商品のカバー範囲は異なる可能性があるが、競合する部分と連携する部分を見出すことは双方の課題となるだろう。

 またもう1つ大きな課題と言えるのが、カーボンクレジットの確保である。取扱商品となるカーボンクレジットが集まらなければ、取引の場だけが存在しても意味がない。この点は、詳細な運営ルールの定義を平行して検討しながら、取引の拡大に向けた施策を実施していくことになるだろう。(記事:Paji・記事一覧を見る

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