京大SIC有人宇宙学研究センター、「月社会の構築を考える」セミナーの動画公開

2022年7月6日 12:42

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 京都大学の研究機関であるSIC有人宇宙学研究センターは6月30日、2022年5月31日に開催したセミナー「月社会の構築を考える」をYoutubeで公開した。なお京大によれば、有人宇宙学とは『「人類が宇宙において持続可能な社会基盤を作る」ため、自然科学分野・人文社会科学分野を幅広く融合した新たな学術領域「有人宇宙学」を創出する』ことを目指す学問である。

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 セミナーでは、月移住を前提にし、必要となるテクノロジーについて、具体的で分かりやすい解説がなされた。月は太陽系の衛星の中でも大きな部類に属し、大きいほうから5番目にランクされる。だが他の上位にランクされる衛星はみな、木星もしくは土星という巨大惑星の周りを周回し、地球という小さな惑星を周回する衛星として、月はアンバランスとも思える大きさだ。

 例えば火星の衛星であるフォボスやダイモスはあまりに小さく、人類が居住するには重力が小さすぎる。低重力の悪影響を取り除いたり、太陽風の影響や放射線を避けるための防御装置も、月に比べればかなり複雑になるため、その意味で人類はラッキーだったといえるかもしれない。

 動画では鹿島建設と共同で開発を進める予定となっている月での人工重力建築「ルナグラス」が紹介され、月に移り住んだ際の住環境がどんなものになるのか、具体的にイメージできる。

 無重力あるいは低重力では、細胞レベルでの老化が促進されるため、いかにこれらの弊害を無くすかは非常に重要な課題だ。ルナグラスでは遠心力を用いて人工重力を発生させる最適形状を模索し、放射線の遮蔽についても考慮した快適な住環境の提供を目指している。

 月に一時的に居住するためではなく、何世代にもわたり移り住むためのテクノロジーが考慮されていることがポイントだ。


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