相場展望3月10日号 フェイクニュース注意、ウクライナ侵略は進行中 インフレ高進・金融引き締めは変わらず

2022年3月10日 09:58

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)3/07、NYダウ▲797ドル安、32,817ドル(日経新聞より抜粋
  ・下落幅、下落率ともに今年最大で、昨年3月以来の1年ぶりの安値となった。
  ・ロシアへの経済制裁に伴うエネルギー高が、世界景気を冷やすとの懸念が広がる。
  ・NYダウは1/4に付けた過去最高値からの下落率は▲10.8%となり、「調整局面」入りの目安となる▲10%を超えた。
  ・ハイテク株比率が高いナスダック総合指数も3日続落し、過去最高値を付けた昨年11/19からの下落率は▲20.1%に達し、高値から▲20%超下げた場合に当てはまる「弱気相場」入りをした。
  ・ロシアからの原油・天然ガスの供給が滞るとの見方から、米WTI先物4月物は3/6に一時130.50ドルと、14年ぶりの高値を付けた。ガソリン高などを通じ、インフレや消費減退につながるとの警戒感が強い。
  ・ウクライナの3回目の一時停戦が実現しなかったと伝わり、先行き不透明感が株価を押し下げ、石油・電力を除けば、ほぼ全面安の展開となった。

【前回は】相場展望3月7日号 プーチンの9重苦 ロシアの侵攻、世界にインフレ高進・景気後退招く

 2)3/08、NYダウ▲184ドル高、32,632ドル(日経新聞より抜粋
  ・NYダウは4営業日続落し、昨年3月以来、1年ぶりの安値で終えた。
  ・バイデン大統領が3/8、ロシアからの石油や天然ガスの輸入禁止を発表した。エネルギー需給が逼迫し、インフレが米景気を冷やすとの懸念が強まった。
  ・対ロシア経済制裁がらみの悪材料がひとまず出尽くしたとみて、買戻しが入るなど大きく上げる場面もあったが、買い一巡後は再び売りが優勢となり、NYダウは下げに転じて終えるなど、不安定な値動きだった。

 3)3/09、NYダウ+653ドル高、33,286ドル(日経新聞より抜粋
  ・米原油先物相場の大幅下落で、インフレや景気減速への懸念が和らぎ、消費関連など幅広い銘柄が買い直された。
  ・NYダウは前日までの4営業日で▲1,200ドル強下げたため、短期的な戻りを見込む買いも誘った。
  ・米原油先物相場が3/9、一時、103ドル台と前日終値から▲16%下落した。石油輸出国機構(OPEC)加盟国が増産に動くとの思惑が浮上し、欧米の対ロシア経済制裁による原油需給の逼迫が和らぐと期待され、金・銅・小麦など原油以外の商品先物も連れ安し、インフレ懸念がひとまず和らいだ。
  ・業種別では、エネルギーと公益事業以外は、全面高の展開で、押し目買いや売り方の買戻しが相場を押し上げた。前日までインフレが消費を抑えるとの見方で下げていた消費関連の上げが目立つ。長期金利上昇で利ザヤ拡大の観測で、金融が上げた。

●2.米国株:フェイクニュースが溢れており、戻り相場には慎重に

 米国はスタグフレーション入りする可能性が高まってきた
 1)ロシアのウクライナ侵攻と、経済制裁がもたらしたもの
  ・原油高・穀物高
  ・インフレ
   ⇒金利高騰

 2)米国は消費性向が高く、GDPの7割を占めるだけに、インフレ高進は消費を直撃するため、購買力の減退になって表れる。そこにFRBが、インフレ退治のため金融締め付け(金利高、総量規制)とが相俟って米景気の後退が鮮明化する可能性が濃厚となりやすい。

 3)米3/8一時反発 ロシア制裁発動の材料出尽くしの買いを受け、自律反発
  ・3/8、フェイクニュース(ウクライナのNATO加盟断念)を受け、米株式は急伸。ウクライナはEU加盟を申請したが、NATO加盟には言及していない。ウクライナ大統領の発言なしに、勝手に「停戦」という偽情報を持ち出して株高を演出するのに引きずられないように注意したい。

 4)戻り相場には慎重に対処したい
  ・テクニカル分析では、急落したたことで「売られ過ぎ」とのサインが出ている。また、5営業日連続の下げは少ないため、売り方の買戻しで相場は反発しやすい地合いとなっている。
  ・米インフレ高進基調の中で、米景気は金利高・景気後退のスタグフレーションは避けられないと予想する。
  ・3/15~16に米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ観測されており、3/9のNYダウの上げ相場に踊らされないように慎重さが求められていると思われる。ロシアによるウクライナ侵攻は、進行中であり、まだ終わっていない。3/9のNYダウ、独DAX指数に急騰したが、溢れるフェイクニュースや思惑に動かされることがないようにしたい。

●3.米株3/8急伸:ウクライナがNATO加盟断念との報道で、停戦期待(フィスコ)

 1)ロシア軍、ウクライナ首都キエフまで60キロに接近、圧力増強 

●4.米国のバイデン大統領は3/8、ウクライナの戦争激化に対処するため、対露制裁の一環としてロシア産原油の輸入禁止を発表した(フィスコ)

 1)欧州連合(EU)は、ロシア産天然ガスの輸入を年内に3分の2の削減を行うと公約。

 2)英ジョンソン首相は3/8、ロシアからの原油と石油製品の輸入を段階的に削減し、2022年末までに完全停止すると発表した。(ロイター)

 3)発表を受け、NY原油先物は129.54ドルまで上昇した。

 4)原油価格の上昇が、さらなるインフレ高進につながるとして、金利も上昇した。

●5.ウクライナ巡る企業動向

 1)マクドナルド  ロシアの850店舗を一時閉鎖(フィスコ)

●6.ロシアは「デフォルト(債務不履行)寸前」、ムーディーズは大幅格下げ(時事通信)

●7.ドル建てロシア債のデフォルト確率は80%に上昇(ブルームバーグより抜粋

 1)ロシアのドル建て債発行残高は約330億ドル(約3兆8,000億円)に上る。

 2)ロシアは先週末に、国債の支払いについてろロシアを制裁した投資国と、それ以外を区別する規則を導入した。敵対的な国の投資家には、外貨建て債券であってもルーブルで支払うとした。敵対国は、米国、英国、欧州連合(EU)、日本など。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)3/07、上海総合▲74安、3,372(亜州リサーチより抜粋
  ・世界経済の先行き不安が強まる流れとなった。
  ・米欧がロシア産原油の輸入禁止を検討していると伝わり、時間外取引のWTI原油先物は3/7の朝方、一時、2008年9月以来の1バレル=130米ドル台に高騰した。
  ・インフレ高進による、個人消費の冷え込み、企業収益の悪化が危惧された。
  ・中国経済対策への期待感などで指数は下げ渋る場面があったが、引けにかけて下げ幅を拡大した。
  ・中国の全国人民代表大会(全人代)は先週スタートし、李克強首相が開幕式で読み上げた「政府活動報告」では、経済の安定成長を重視するスタンスを明示。
  ・業種別では、消費関連の下げが目立ち、ITハイテクは安く、医薬品も急落した。

 2)3/08、上海総合▲79安、3,293(亜州リサーチより抜粋
  ・世界経済への混乱が警戒され、5日続落し1年4カ月ぶりの安値圏に落ち込んだ。
  ・米欧の首脳は3/7に電話連絡し、ロシアに対する経済制裁を今後も強めることで一致した。この影響で、資源価格が高騰、個人消費の落ち込みが企業業績の悪化につながると危惧された。
  ・今日の指数は、中盤から下げ幅を加速した。
  ・業種別では、景気動向に敏感な、非鉄・鉄鋼・セメントなど素材の下げが目立つ。海運・港湾・物流・空運が急落し、金融も軒並み鈍化した。反面、半導体はしっかり。

 3)3/09、上海総合▲37安、3,256(亜州リサーチより抜粋
  ・世界経済の混乱が不安視する流れ。
  ・ロシアのウクライナ軍事作戦が苛烈さを増す中、欧米は制裁措置を強化している。
  ・バイデン米大統領は3/8、ロシア産原油の輸入を禁止すると発表した。
  ・プーチン露大統領は同日、西側諸国の制裁に対抗するため、一部原材料の輸出入を制限する法令に署名している。ロシアは石油・ガス・希少金属・穀物などの主要輸出国なだけに、商品相場の混乱も危惧された。
  ・足元では、原油のほか非鉄や小麦などの商品市況が記録的な高水準で推移。インフレ高進も経済の下押し要因になると懸念された。
  ・業種別では、金融が下げを牽引、景気動向に敏感な非鉄・鉄鋼などが急落。反面、発電・半導体・産金が買われた。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)3/07、日経平均▲764円安、25,221円(日経新聞より抜粋
  ・ウクライナ情勢を巡り欧米諸国が、ロシアからの原油輸入の禁止を検討していると伝わり、供給逼迫の懸念から原油先物価格は急騰、資源高による世界景気悪化リスクが警戒され世界的な株安となった。
  ・日経平均は2/24に付けた昨年来安値25,970円を大きく下回った。
  ・米WTI原油先物は一時130.50ドルと、2008年7月以来の高値を付けた。先週末は115ドル台だった。資源高により世界経済の成長が鈍化するとの見方からアジアの株式市場は総じて下落、欧米の株式指数先物も大幅安となった。
  ・日経平均の下げ幅は一時▲1,000円に迫ったが、節目の25,000円手前で売り方の買戻しが入り、後場に下げ幅を▲600円まで縮小する場面もあった。
  ・TOPIXが前場で▲2%超下げ、日銀のETF買いが入るとの見方が相場を支えた。
  ・トヨタ、デンソーなど自動車関連が大幅下落、反面、INPEX、住友鉱、海運が上昇。

 2)3/08、日経平均▲430円、24,790円(日経新聞より抜粋
  ・心理的な節目の25,000円を割り込み、2020年11/6の24,325円以来の安値。ウクライナ情勢の不透明感から投資家心理が弱気に傾いた。
  ・ウクライナに侵攻するロシアへの経済制裁を通じ、エネルギーなど資源価格が高騰して、世界景気を冷やすとの見方から、投資家がリスク回避姿勢を強めた。
  ・前日の米国株は今年最大の下げ幅を記録したこともあって、東京市場でも幅広い銘柄に売りが出た。
  ・原油関連銘柄など市況の強さを背景に最近上昇していた銘柄にも、利益確定売りが出て下げ幅を広げた。
  ・日経平均は午前に、年金基金の買いや短期筋の買戻しもあって上昇に転じる場面もあったが、売り一巡後の午後には再び売りに押された。
  ・INPEX・出光興産・ENEOS・日本製鉄が下げ、ダイキン・スリーエムが買われた。

 3)3/09、日経平均▲73円安、24,717円(日経新聞より抜粋
  ・連日で昨年来の安値を更新し、2020年11月以来の1年4カ月ぶりの安値となる。
  ・このところ、下落が目立った銘柄を中心に買い直しが先行したが、大引けにかけて短期筋などの売りが強まり下落に転じた。
  ・自動車・空運・建機・商社が物色された。
  ・ウクライナ情勢を巡る不透明感から積極的に戻りを試す雰囲気は乏しく、午後に入ると上値の重い展開が続いた。
  ・市場では「欧州の投資家がリスク回避に向け持ち高を減らす動きがある」との見方がある。
  ・東電・キッコーマンの下げが目立ち、リコー・リクルートが安かった。

●2.日本株:本日3/10の戻り相場は「日計り」的に見た方が良さそう

 1)本日は、売り方の買戻しもあり上昇を予想する。
  ・前日までの下げ幅が大きかったこと、米国株の上昇で戻り相場になったため、大きく戻すと思われる。

 2)インフレ高進、金利高含めた金融引き締め策は変わらない。

 3)したがって、本日の戻り相場のよる上昇は、『戻りの範囲内』と見た方がよさそう。

●3.企業のロシア関連動向

 1)JCB    ロシアでのカード決済業務停止(NHK)
 2)任天堂   ロシア向け販売サイト停止(NHK)

●4.企業動向

 1)ローソン 約50品目に3/8から2~15%値上げ(共同通信)
 2)7&I   サンドイッチを5~12%値上げ(テレビ朝日)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

・3141 ウエルシア  業績堅調
・6104 芝浦機械   好業績期待

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