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相場展望7月12日 決算発表への期待で、米国株・日本株は上昇か
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)7/8、NYダウ▲259ドル安、34,421ドル(日経新聞より抜粋)
・米株式市場でも変異型ウイルスの広がりによる景気減速が意識され、景気敏感株が下げを主導した。
・米長期金利が一時1.25%と2月以来の水準に下げ、金融株が売られた。
・米労働市場の改善も足踏みとなった。
・ただ、米景気回復の勢いが鈍ればFRBの緩和的な金融政策が長期化し、相場を下支えするとの見方が根強い。
【前回は】相場展望7月8日 7月中旬からの4~6月決算シーズン入りに期待 8月後半からは軟調か?
2)7/9、NYダウ+448ドル高、34,870ドル(NHK)
・インドで確認された変異ウイルス「デルタ株」に対応した新たなワクチン開発が、米国とドイツの製薬会社で進んでいると発表したことへの期待が高まり幅広い銘柄に買い注文があった。
・市場の関心は、世界経済の先行きを左右する変異ウイルスの感染拡大を防ぐことができるかどうかに集まっている。
・NYダウは4営業日ぶりに最高値を更新した。
●2.米国株は、余剰マネーに裏打ちされた、強気の投資家心理で「適温相場」が続く
1)先週は景気減速に心理が傾いて米国株は軟調だったが、それは適度のガス抜き効果と見られる。
2)依然として、FRBは市場に毎月1,200億ドル(約13兆円)を供給継続しており、カネ余りが膨らみ続けている限り、株式市場上昇の牽引役となる。
3)4~6月期の好決算ラリーに期待。
●3.FRBは、経済の回復完了まで「強力な支援」継続(ブルームバーグ)
1)金融政策報告で「(1)緩和的な金融・財政政策と(2)ワクチン接種により、経済再開と力強い回復を見せている」としつつ、「雇用はパンデミック前の水準を大きく下回っている」と説明した。
2)パウエルFRB議長は、7/14に下院金融委員会、7/15に上院銀行委員会で議会証言する予定。金融政策報告はそれに先立ちウェブサイトに掲載された。
●4.G20財務相、共同声明草案で「コロナ変異株の成長抑制リスクを警告へ」(ブルームバーグより抜粋)
1)財政刺激策として供給された資金の拙速な市場からの引き上げを回避、と表明へ。
2)米国のインフレ急伸については、直接の言及はしていない。
●5.米FDA長官代行は、アルツハイマー薬の承認過程巡り調査要求(ロイター)
1)米食品医薬品局(FDA)のウッドコック長官代行は、バイオジェンとエーザイが共同開発したアルツハイマー病治療薬の承認過程を巡り、厚生省の監査局による調査を求める意向を明らかにした。
2)この薬の承認を巡って、諮問委員会が反対していたにもかかわらず、FDAが承認に踏み切った経緯があり、決定に抗議し諮問委員会11人の委員のうち3人が辞任した。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)7/8、上海総合▲28安、3,525(亜州リサーチ)
・このところ中国当局は、各分野に対する監視を強化している。国家市場監督管理総局は7/7までに、インタ―ネット、自動車、充電に関する企業の独占行為に関し、独占禁止法に違反する事例22件を列挙した。
・中国証券監督管理委員会が7/5、証券市場管理の厳格化方針を表明した。
・上海総合指数は大型株が下げを主導し、業種別は金融、エネルギー、医薬が安い。
2)7/9、上海総合▲1安、3,524(亜州リサーチ)
・ (1)経済回復ペースの鈍化と、(2)中国当局の監視スタンス強化が、売り材料視された。
・朝公表された6月消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数の上昇率が予想以上に減速し、投資家心理を後退させた。
・業種別では、酒造・自動二輪・家電・食品センターが安く、非鉄金属が高い。
●2.中国人民銀行は、景気見通しの懸念で金融緩和姿勢に転換か(ブルームバーグ)
1)中国人民銀行は準備率引下げで、約1兆元(約17兆円)の流動性を市場に供給する
・準備率引下げは7/9に発表、引下げ幅▲0.5%、実施は7/15。
2)第2四半期GDP発表を控えるタイミングであり、経済成長見通しの懸念の強まりを示唆したとの見方がある。
3)今回の引下げ決定は予想以上の幅であり、4~6月国内総生産(GDP)発表を7/15に控える時期に下された。このことから、景気見通しのへの懸念を示唆し、金融政策を引き締め策から緩和策への明白な転換を示唆するものだとの分析がある。
●3.おひとりさま経済に商機、中国で結婚が減り、火鍋も家も独身使用に(朝日新聞より抜粋)
1)中国民政省の調査では、婚姻件数が2013年以降下がり続け、ここ10年間で最低に。独身者は日本人口の約2倍にあたる2.4億人に上る。
婚姻件数 2013年 2020年
1,346万件 813 ▲39.6%減少
2)最近は、都市部を中心に、結婚を急がず、ひとりの生活を楽しむ人が増えている。
3)中国の調査会社が5月にインターネットで独身者3,000人を調べたところ、4割超が3年以上交際相手がいなかった。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)7/8、日経平均▲248円安、28,118円(日経新聞)
・米国で雇用回復の鈍さが指摘される中、東京都が4回目緊急事態宣言が出される見通しとなった。
・国内景気の先行きなどで弱い材料が重なり、売りが優勢だった。
・上場投資信託(ETF)の分配金捻出のための売りも相場を下押しした。
・半導体関連や空運・陸運株に一角も下落した。
2)7/9、日経平均▲177円安、27,940円(日経新聞)
・新型コロナが世界で変異ウイルス株を中心に感染拡大が続く中、景気の先行きに警戒感が広がった。米NYダウを始め主要な海外株式指数が軒並み下げた。
・東京市場にも運用リスクを避ける動きが波及し、海運株や機械株など景気敏感株などに幅広く売りが広がり、一時▲700円近くまで下落した。
・ただ、後場に入り日銀のETF買いが入ったという観測と、米株先物が値を戻す中で急速に下げ幅を縮小した。
●2.日経平均は7/9一時▲700円安も、投資家心理は冷静で下げ幅を大きく縮小⇒今週反発予想
1)日経VIX(恐怖)指数は日経平均下落幅と比べ、僅か。
⇒ 投資家は7/9の下げを気にしていない。
VIX指数 7/8 7/9 差異
18.79 18.75 ▲0.04
2)日銀ETF購入は実施されず、7/9後場大幅戻しの要因「購入のうわさ」は情報操作か?
3)上場投資信託(ETF)の分配金8,000億円捻出のための売りは7/9までと推測。
⇒ 売り圧力の減退予想。
4)空売り比率が高水準と続いたが、正常に戻る可能性がある。
⇒ 買戻しエネルギー蓄積を示していると見える。
空売り指数 7/1 7/2 7/5 7/6 7/7 7/8 7/9
42.1% 41.0 45.2 39.6 47.6 48.2 50.4
5)閑散相場から一転、出来高増加
⇒ 需給好転の兆し
出来高 7/1 7/2 7/5 7/6 7/7 7/8 7/9
8.3億株 9.0 7.7 7.9 10.7 11.4 14.3
6)日本株は今週から反転上昇と予想
(1)4~6月期決算発表の期待の高まりで、買い優勢に転換予想。
(2)ワクチン接種率が上昇し、特に高齢者発症数が顕著に減少。更なる接種率の向上で経済正常化期待が高まると思われる。
(3)米国株は、カネ余りと4~6月期好決算発表で堅調に推移すると推測。米国株の高値圏維持は、日本株にとって力強いサポートとなる。
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・1414 ショーボンド 国土強靭化銘柄として期待。
・6098 リクルート ハイテク企業に変身。
・6104 芝浦機械 堅調な業績。
著者プロフィール
中島義之(なかしま よしゆき)
1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou
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