窮地の飲食店に力を貸す城南信金のDNA

2021年1月26日 08:54

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 東京新聞webが8日、『テークアウトの200店舗超をサイトで紹介 緊急事態宣言で苦境に陥る飲食店を城南信金がサポート』と題する記事を配信した。第2弾の緊急事態宣言が1都3県を対象に発令されたことで、飲食店の経営難の深刻化が予想されている。多少なりとも活路を開くうえで「テークアウト」に対応する店舗情報を、ウェブサイトで紹介するという内容だ。

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 7日現在で既に、東京都・神奈川県内の200店超を掲載しているという。城南信用金庫(城南信金)の川本恭治理事長は、「昨年末から飲食店を中心に追加融資の依頼が増えている。テークアウトを始めたいという相談も多い。飲食店の売り上げを少しでも支えたい」と意図を語っている。ちなみにサイトへの掲載は無料。スマホでQRコードを読み取りサイトにつなぐと、容易に店舗の一覧が地図とともに表示される仕様だ。

 そんな内容の記事を読んでいて、「城南信金のDNAは、しっかり受け継がれているな」と痛感した。と同時に、久方ぶりに書籍棚で埃を被っていた拙著を引っ張り出した。4半世紀近く前に河出書房新社から上市した、『こんな銀行はやめなさい』である。

 相互銀行や信用金庫の「第2地銀化」が進んでいるタイミングで私は、城南信金の当時の理事長:真壁実理氏(城南信金の中興の祖と称されたが、後にワンマンとも呼ばれた)の名言に接した。「銀行になり下がる気持ちなど、さらさらない。銀行が“銀”なら信金は“金”だ。金がなんでわざわざ銀になり下がる必要がどこにある」。

 拙著を記すに際、真壁氏を取材した。「信金とはどんな存在か」、「金融自由化の時代が言われているが、どう対応するつもりなのか」と問うた。こんな答えが返ってきた。

 「信金はベンチャービジネスや中小零細企業の面倒を見て育てる、企業の小学校だ。いろいろな会社が我が庭から巣立ち立派に成長していく、これが名門信金(しょうがっこう)の誇りだ。ソニーもうちの卒業生だ。信金は地場産業の黒子に徹する」

 「金融機関が適正な競争をし、切磋琢磨し合って、よりよい金融サービスを開発し、それを顧客に提供する。還元する。これが金融自由化の在るべき道だ。金融機関のビジネスチャンスが拡がるとか、金融機関の収益拡大のチャンスが膨らむとか、そういう考え方をする向きがあるが、それは違う」
 真壁氏の先代は、信金業界の「ドン」と称された小原鉄五郎氏。日本の企業の構図を富士山に準え、「2合目辺りまでの冠雪が美しいのは、そこから下に広がる裾野があるからだ。2割の大企業を支えているのは8割の中小企業だ」と語った御仁である。

 今回の報道も、記した様な「信金とは」のDNAが脈々と城南信金に受け継がれているからこそと考える。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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