すばる望遠鏡が「はやぶさ2」の次の目標天体を撮影 国立天文台

2020年12月21日 08:39

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すばる望遠鏡が撮影した小惑星「1998 KY26」 (c) 国立天文台

すばる望遠鏡が撮影した小惑星「1998 KY26」 (c) 国立天文台[写真拡大]

 小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星「リュウグウ(Ryugu)」からサンプルを採取して、6日(日本時間)に地球へとカプセルを帰還させた。はやぶさ2は再び地球を離れ、拡張ミッションへと移行する。国立天文台は18日、はやぶさ2の拡張ミッションの目標天体である微小小惑星「1998KY26」を、すばる望遠鏡が撮影に成功したと発表した。

【こちらも】はやぶさ2の回収カプセルから小惑星Ryuguのサンプル採取に成功

■化学推進の約10分の1の消費で済む「イオンエンジン」

 はやぶさ2には軌道変更に使用される「イオンエンジン」が搭載されている。通常のロケットは、「化学推進」と呼ばれ、水素や酸素など化学反応を熱源にして推進する。

 一方、「イオンエンジン」は電気の力によってロケットを推進させる「電気推進」に分類され、とくに燃費がいいイオンエンジンは従来の化学推進の約10分の1という少ない推進剤の消費で済む。ロケットの重量の約9割が推進剤であることから、推進剤の高性能化は長距離の移動を要する宇宙探査では不可欠だ。

■半分残る推進剤の活用から拡張ミッションを検討

 はやぶさ2は地球に帰還した段階で、イオンエンジンの推進剤であるキセノンガスの約半分が残ることが予想されていた。運営する宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所は、はやぶさ2が地球に帰還した後の拡張ミッションを検討していた。

 はやぶさ2が到達可能な354個の天体から、大きさや自転速度、タイプなどの理学的興味と探査機を運用できるかなど工学的な視点をあわせて、最終的に目標天体と定めたのが「1998KY26」だ。

 「1998KY26」は直径が約30メートルの微小小惑星だ。自転周期が10分と非常に早いため、人類がこれまで到達したことがないタイプの天体だという。リュウグウと比較することで、取得された科学的知見が深まることが期待される。

■約25.4等級の光の点として撮影される

 「1998KY26」は12月中旬から下旬にかけて地球から約7,000万キロメートルまで近づき、約3年半に1度という観測のチャンスが訪れた。JAXA宇宙科学研究所の依頼により、米国ハワイ・マウナケア山頂にあるすばる望遠鏡で「1998KY26」の観測を実施。10日(ハワイ現地時)に、ふたご座の方向に約25.4等級の光の点として観測に成功した。

 研究の詳細は、国際天文学会連合小惑星センターが発行する「小惑星電子回報」に15日付で掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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