東急、グループ一体の「街づくり」で沿線・生活価値を向上 成長持続を目指す

2019年11月10日 10:10

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ベトナムでの1号案件として管理受託を開始したオフィスビルの「nanocoビル」。(画像: 東急の発表資料より)

ベトナムでの1号案件として管理受託を開始したオフィスビルの「nanocoビル」。(画像: 東急の発表資料より)[写真拡大]

 東急と東急コミュニティーは10月29日、ベトナムでオフィスビル・マンションの管理業務を本格開始したと発表した。ホーチミン市で2019年9月に21階建て全535戸の分譲マンションの管理受託に次いで、10月に10階建てオフィスビルと27階建て全964戸の分譲マンションの管理受託を始めた。

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 東急電鉄は、渋沢栄一らによって立ち上げられた“理想的な”住宅地「田園都市」の開発を進めるための鉄道「目黒蒲田電鉄」として、1922年に設立され、小林一三の推挙を受けた五島慶太が経営にあたった。

 1929年には大井町線大井町~二子玉川線全線を開通し、1932年には東横線渋谷~桜木町間全線開通、1942年に東京急行電鉄に商号を変更した。

 2019年9月に商号を「東急株式会社」へ変更し、10月に鉄道事業を「東急電鉄株式会社」として分社化した。今後は、交通、不動産、生活サービスの3つの事業を核に、ホテル・リゾート事業など幅広く暮らしに密着した事業を展開していく。

 2019年3月期の営業収益は1兆1,574億円。全社調整を除く構成比は、鉄道・バスなど交通事業が17.5%、渋谷駅周辺開発、オフィス、商業施設の開発・運営、街の活性化などの不動産事業が16.7%、東急百貨店、東急ストア、家庭向け電力・ガス供給、セキュリティ、ICT、広告メディアなど生活サービス事業が57.6%、全国で1万2,055室のホテル、17カ所の会員制リゾート、6カ所のゴルフ場などを運営するホテル・リゾート事業が8.2%と、多彩な事業を展開する東急の動きを見ていこう。

■前期(2019年3月期)実績と今期見通し

 前期営業収益は1兆1,574億円(前年比1.7%増)、営業利益は9億円減の819億円(同1.1%減)であった。

 営業利益減の要因としては、ホテル・リゾートで自然災害や大型改装により20億円、不動産で前年度に高利益物件があった反動で3億円の減益に対し、ICT、メディアの好調で生活サービスで11億円、全社調整で2億円の増益があった。

 今期は営業収益1兆1,989億円(同3.6%増)、営業利益830億円(同1.3%増)を見込んでいる。

■中期経営計画(2019年3月期~2021年3月期)による推進戦略

 2021年3月期の営業利益970億円(対前期比18.4%増)を目指して、次の成長持続戦略を推進する。

●1.「安全」「安心」「快適」の追求による鉄道事業の強靭化

 ・保守点検方法の見直しとIOTの活用により故障リスクの早期発見。
 ・駅のホームドア設置や新型車両導入。
 ・相鉄と東急直通線開業、新空港線推進など鉄道ネットワーク拡大。

●2.世界のSHIBUYAへ魅力ある街づくり

 ・渋谷代官山プロジェクトと渋谷ストリームを2018年秋開業、渋谷スクランブルスクエアを2019年開業。
 ・年末カウントダウン、盆踊り、オリンピックで世界へ情報発信。

●3.グループ事業の総合力発揮により沿線価値、生活価値の向上

 ・渋谷を中心に多摩田園都市、新空港線多摩川流域など5つの重点エリアで魅力的な街づくり。
 ・百貨店、スーパー、専門店、駅ナカなどリテール事業の横串機能強化と鉄道、不動産との連携。
 ・他業種との連携によりセキュリティ、決済などICT、メディアサービスの拡充。

●4.戦略的アライアンスによる事業拡大

 ・インバウンド、沿線の観光資源開発、空港運営事業の拡大、東急ホテルズ拡大などによる交流人口の取り込み。
 ・進出済みのベトナム、タイ、オーストラリア中心に海外展開。

 鉄道、不動産を中心とする街づくり、それを支える生活サービスを一体となって推進する東急の動きを見守りたい。(記事:市浩只義・記事一覧を見る

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