幽霊の顔をした奇妙な天体、その正体は銀河の衝突 ハッブル宇宙望遠鏡

2019年11月4日 17:42

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ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた特異銀河「アープ・マドア 2026-424」 (c) NASA, ESA, and J. Dalcanton, B.F. Williams, and M. Durbin (University of Washington)

ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた特異銀河「アープ・マドア 2026-424」 (c) NASA, ESA, and J. Dalcanton, B.F. Williams, and M. Durbin (University of Washington)[写真拡大]

 宇宙空間に浮かぶ幽霊の顔。だが心霊写真ではない。ハッブル宇宙望遠鏡から撮像された紛れもない天体である。その正体は2つの銀河の衝突により生み出された天体だという。

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■銀河の衝突が生む特異銀河

 米航空宇宙局(NASA)が運用するハッブル宇宙望遠鏡が10月28日に公開した写真は、地球から7億400万光年彼方に存在する「アープ・マドア 2026-424」と呼ばれる特異銀河だ。黄色い目に相当する部分は、隣接する2つの銀河である。顔の輪郭は、青色をした若い星からなるリングで、鼻や口といったパーツも同じく若い星の塊から構成されている。

 幽霊の顔のような天体が誕生したのは、2つの銀河が衝突したのが原因だ。両銀河が織りなす黄色の膨らみが、同じ2つの膨らみとして並置されているのは非常に稀だという。ほぼ同じ大きさの銀河同士の衝突により、巻き込まれた部分がほぼ同じだったことが原因だと考えられる。

 銀河同士の衝突は決して珍しいことではない。特に、若い宇宙では星や銀河同士が密集しているため、衝突する確率は高くなる。ただ銀河同士の衝突は通常、大きさの異なる2つによって引き起こされるケースが多いという。

 「アープ・マドア 2026-424」の場合、2つの銀河が衝突したのち、約1億年かけて青色の円環構造が誕生したと推定される。10億年から20億年程度経過すると、この特異銀河は完全に合体するという。

■特異銀河の地図編纂が予定

 今回発見された「アープ・マドア 2026-424」は、奇妙な姿をした特異銀河のひとつである。特異銀河338個を集めた「アープ・アトラス」の編者ホルトン・アープ氏と、南天の特異銀河を調査したバリー・マドア氏にちなんで、これらの特異銀河はアープ・マドアと呼ばれる。

 今回の発見以外にも、多くの特異銀河の観測が計画されている。最終的には、接近した銀河同士を網羅するサンプルの編纂が予定されている。ハッブル宇宙望遠鏡や、NASAが2021年に打ち上げ予定のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を活用することで、銀河同士の合体プロセスへの理解が深まるとしている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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