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生命は宇宙から来たのか パンスペルミア仮説とは
昨年秋、東京大学は地球最古の生命の痕跡を発見したことを発表した。それは今から39.5億年以上前の地質から発見されたものだが、地球が誕生したのが46億年前で、まだそのころは地表は熱く、生命が誕生できる環境ではなかった。
【こちらも】東工大など、生命誕生に関する新たな仮説を提唱
少なくとも生命が誕生できるようになるためには海の存在が必要で、地球の表面が冷えて、海が誕生したのは、今から44億年前であるとされている。ただし、まだそのころでも地球には頻繁に微惑星が衝突したため、海も出来上がっては微惑星の衝突で干上がり、再び冷えて海が再生するというサイクルが繰り返されたことだろう。
したがって39.5億年前に地球上で生命が誕生したとするならば、それは海の存在が安定的になった直後であると考えるのが常識である。だが、DNAの構造は非常に複雑で、その構造が解明されたのは20世紀になってからのことである。人間がそこまで苦労しなければ解明できなかった複雑な構造の分子が、はたして地球上で海が安定的になった直後に誕生し得たのだろうか?
この疑問は、科学の専門知識がない一般人にも納得がいかない部分がある。DNAのような複雑な構造は、少なくとも何億年もかけて、分子構造の組み合わせの試行錯誤があって誕生したと考えるのが自然であろう。
この疑問を解決するアイデアが、生命の源が宇宙から飛来したと考えるパンスペルミア仮説である。宇宙から生命の源になる分子が飛来してきたのであれば、地球上に海ができ、それが安定的に存在できるようになった直後に生命が誕生したという現実は納得できるものになる。
パンスペルミア仮説とは、1906年にスヴァント・アレニウスによって命名されたものだが、名前だけが独り歩きし、その仮説の信ぴょう性を裏付ける証拠はまだ非常に少ない。だが、現在世界中の科学者たちが必死になって火星本体や木星の衛星イオ、土星の衛星タイタンなどにおける生命の痕跡探しをしているのも、内心パンスペルミア仮説を信じているからではないだろうか。
昨年秋に発表されたManasvi Lingamらの研究によれば、恒星間を航行する天体が地球に衝突する可能性は太陽系のスケールを超え、銀河系のスケールでも生じうることが、数値解析によって明らかにされている。つまり秒速1000kmを超える恒星間航行天体が、銀河系のかなり遠くの宇宙から地球に飛来する可能性を示唆しているのである。
このことは、銀河系のどこかで生命が誕生していれば、それが地球生命の源となった可能性があることを示す証拠にもなる。
また最近の研究で、アミノ酸は宇宙の放射線を浴びると右手型は破壊され、左手型だけになるということも判明している。地球上の生命が持つアミノ酸はすべて左手型である。
これらの事実から間接的にパンスペルミア仮説を支持する科学者の割合が増えている。もしそうだとしたら、地球以外の一体どこの宇宙で生命は誕生したのだろうかという新たな疑問が浮上してくる。宇宙はなかなか人間に正解を教えてくれない意地悪な存在である。(記事:cedar3・記事一覧を見る)
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