川崎重工、収益基盤拡大とプロジェクト管理強化で営業利益1000億円目指す

2019年8月12日 12:04

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 川崎重工業は5日、京都市新山科浄水場において、導水トンネル築造工事向け高水圧対応の岩盤泥水式シールド掘進機1基を受注したと発表した。

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 琵琶湖疎水から京都市山科浄水場までの導水トンネルは、1969年に完成したもので、川崎重工の掘進機は、京都市上下水道局が進めている更新・耐震化工事に投入される。軟弱土質と岩盤など複合土質の長距離掘削と、高水圧や急曲進に対応する高性能な性能を有するものだ。

 川崎重工は、1878年、川崎正蔵が川崎築地造船所を開設したのに始まる。1896年に、将来の発展のため株式会社川崎造船所へ改組し、初代社長として総理大臣を務めた松方正義の三男松方幸次郎を迎えた。松方幸次郎は32年間社長として、鉄道車両、航空機事業、海運業への進出を果たし、一方で私財を投じて国立西洋美術館の基礎となる松方コレクションを収集した。

 車両、航空機、製鉄部門が相次ぎ分離独立を果たした1939年、川崎重工業株式会社へ社名変更した。

 2019年3月期の売上高は1兆5,947億円。構成比は、航空宇宙システム事業が29%、エネルギー・環境プラント事業が16%、精密機械・ロボット事業が14%、船舶海洋事業が5%、車両事業が8%、モーターサイクル&エンジン事業が22%、その他6%と多様な事業を展開する川崎重工の動きを見ていこう。

■前期(2019年3月期)実績と今期見通し

 前期売上高は1兆5,947億円(前年比1%増)、営業利益は前年よりも80億円増の640億円(同14%増)であった。

 営業利益増加の事業別の要因としては、船舶海洋が赤字から改善し49億円、エネルギー・環境プラントの採算改善で39億円、航空宇宙システムの収益改善で17億円の増益に対し、米国鉄道車両の赤字拡大により車両で13億円、資材価格上昇によりモーターサイクル&エンジンで8億円、その他で4億円の減益による。

 今期は売上高1兆7,000億円(同7%増)、営業利益は前期に赤字を計上した車両の改善により720億円(同13%増)を見込んでいる。

■中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)による推進戦略

 2022年3月期営業利益1,000億円(対前期比56%増)を目指して、収益基盤の拡大とプロジェクトリスク管理強化を中心に下記戦略を推進する。

 1.航空宇宙システムは、民間航空機、エンジンなど過去投資の確実な刈取りと保守、修理、稼働などで事業収益基盤を拡大。

 2.エネルギー・環境プラントは、水素サプライチェーンの取り組み強化とアフターサービスを事業収益基盤化。

 3.精密機械・ロボットは、需要増にタイムリーに対応する生産基盤強化と非ショベル油圧、新分野ロボット、手術支援ロボットなどの分野へ収益基盤拡大。

 4.モーターサイクル&エンジンは、プレミアムブランドの追求とB to B基盤拡大。

 5.前期米国などで車両の損失165億円の発生を受けて、全事業でプロジェクトリスク管理強化と品質管理体制を確立する。

 水素チェーン実用化に取り組み、船舶海洋と車両を安定させ、航空宇宙システム、エネルギー・環境プラント、精密機械・ロボットの3分野で成長を目指す川崎重工の動きに注目したい。(記事:市浩只義・記事一覧を見る

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