イオン、福島県浪江町に7月出店 原発事故からの住民帰還を後押し

2019年6月19日 09:06

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イオン浪江店のイメージ(イオンリテール発表資料より)

イオン浪江店のイメージ(イオンリテール発表資料より)[写真拡大]

 イオンリテールは18日、福島第一原子力発電所の事故で帰宅困難区域を抱える福島県浪江町に7月14日、イオン浪江店をオープンさせることを明らかにした。浪江町は帰宅困難区域を除き、避難指示が2017年3月末に解除されたが、事故以前の人口の20分の1以下しか帰還しておらず、イオン出店で住民の帰還促進が期待されている。

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 イオン浪江店は、町役場前の浪江町幾世橋に建設された。売り場面積881平方メートルで、約50台分の駐車場を備えている。生鮮食品や加工食品、総菜、日用品、医薬品などをそろえるほか、地元産の新鮮な魚介類を店内で調理し、イートインコーナーで食べられるようにする。

 小さな店舗で多くの品ぞろえを実現するため、寝具や収納用品、ベビー用品などの取り寄せ機能を充実させる。店内にない商品は、店頭に置いたタブレットで注文し、商品を希望する場所で受け取れるようにすることで、近隣住民の暮らしをサポートする仕組みだ。

 浪江町は2011年の東日本大震災で沿岸部の請戸地区が壊滅的な津波被害を受けたうえ、隣接する双葉町と大熊町に立地していた福島第一原発の事故で全域に避難指示が出された。全域避難指示は2017年3月に解除され、町役場も福島県二本松市から町内へ戻ってきたものの、帰宅困難区域が町面積の約8割を占めている。

 浪江町役場によると、事故以前の2010年には約2万1,000人の人口があったが、帰還した住民は3月末現在でわずか966人と伸びていない。町が実施した町民意向調査では「既に帰還」と「いずれ帰りたい」と答えた人が約3,000人、「判断がつかない」と回答した人が約1,500人いた。浪江町は放射能への不安だけでなく、働く場所の不足、医療や介護面の不安、生活の不便さが影響し、帰還の足を鈍らせているとみている。

 このため浪江町は、5,000人の人口確保を目指し、町民帰還に向けた環境整備を進めており、イオンリテールと2月、商業環境整備の覚書を交わしていた。(記事:高田泰・記事一覧を見る

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