原始星を取り巻く2つの独立したガス流 アルマ望遠鏡が恒星誕生の秘密を明らかに

2019年2月28日 12:33

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アルマ望遠鏡で観測した原始星「MMS5/OMC-3」のガス流。オレンジ色が低速ガス、青色が高速ガスを示す。(c) ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Matsushita et al.

アルマ望遠鏡で観測した原始星「MMS5/OMC-3」のガス流。オレンジ色が低速ガス、青色が高速ガスを示す。(c) ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Matsushita et al.[写真拡大]

 アルマ望遠鏡は26日、原始星「MMS5/OMC-3」を観測した結果、高速と低速の2つのガス流が独立に放出されていることを突き止めたと発表した。ガス流は原始星の成長に大きな影響を及ぼすため、恒星の質量を決定するメカニズムを理解するうえで、非常に重要な意味をもつという。

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■2つのガス流が恒星の進化や寿命を決定する

 太陽のような恒星は、宇宙に漂うガス雲がみずからの重力によって収縮することで作られる。収縮するガスの中心には原始星が生まれ、重力によりガスを引きつけることで原始星は成長する。

 原始星には、両極方向に吹き出す「ジェット」と呼ばれる高速で絞られたガス流と、「アウトフロー」という低速で広がりをもつガス流の2種類が噴き出すことが知られている。ところがジェットにより巻き込まれた周辺のガスが、アウトフローとして見えているのか、ジェットとアウトフローとが独立に吹き出しているかについては、従来の観測では判定できなかった。

 恒星の最終的な質量は、原始星が重力で集めてきた物質と、そこからガス流として流れ出した物質とのバランスで決定される。恒星の質量により白色矮星や超新星爆発など進化形態や寿命が異なるため、ガス流が形成される仕組みを明らかにすることは、星の質量の決定メカニズムを理解するうえで、重要なテーマになる。

■九州大大学院生が主導した研究成果

 九州大学大学院生松下祐子氏らから構成される研究グループは、アルマ望遠鏡を使い、オリオン座の方向約1,300光年彼方の「MMS5/OMC-3」を観測した。その結果低速ガス流に比べて、高速ガス流が噴き出す向きが17度傾いていることが判明したという。MMS5/OMC-3の場合、ジェットが非常に若く、その構造から歳差運動の影響を受けたとは考えにくいことから、ジェットとアウトフローはそれぞれ独立に、原始星周辺から噴き出している可能性が高いと、研究グループは結論づけた。

 松下氏によると、ジェットやアウトフローの長さと速度から逆算し、ガス流の発生時期を特定できるという。計算により、ジェットは約500年前、アウトフローは約1,300年前に出始めたことが判明した。

 研究グループは今後、アウトフローとジェットが同時に検出されるほかの天体との比較や、より高解像度での観測等を取り入れて、さらに詳細なガス流の内部構造を明らかにするとしている。

 研究の詳細は、2月1日発行の米天文物理学誌Astrophysical Journalに掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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