新たな資金調達・運用法の光と影 (上)

2019年1月21日 09:25

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 実現させたい思いに対する資金調達法として、クラウドファンディングが活発化しているという。私が「ホッー、いい方法が出てきたものだ」と初めて感じ、クラウドファンディングを知ったのはこんな報道に接した時だった。2015年3月。「沖縄県の離島の緊急医療と取り組んでいたNPO法人:メッシュ・サポートが、(仲介業者が運営するサイトを介して)急患を搬送するための飛行機を購入するための資金調達にクラウドファンディングを開始した」というニュースだった。調達目標は3500万円。1口3000円からの「寄付」を募った。100万円を超える支援(寄付)もあり、3か月後には目標額を達成した。寄付額1万円以上の人については機体に名前が刻まれたという。「銀行借り入れ」「投資会社からの融資」という従来とは異なる資金調達法に感じ入ったものである。

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 クラウドファンディング発祥の地は米国。例えば09年4月に仲介事業に進出したキックスターではこの間、5900を超える案件を仲介し日本円にして約1020億円の寄付を調達している。オファーのあった全ての案件で成功しているわけではない。成功率は約44%。キックスターの収益(成功手数料)は調達目標に達したケースの総額の5%。

 国内最大規模のクラウドファンディング仲介業者は、11年6月に着手したキャンプファイヤー。1300を超える案件に対し約6万5000人から約6億円の寄付を集めている。成功報酬手数料は5%。成功率に関しては公表していないが、事情に通じた向きからは50%-80%と指摘している。

 広範な人々の寄付で「思いを実現させたい」というからには、寄付者の共鳴を得なくてはならない。言葉は適切でないかもしれないが仲介事業者に申し入れる際には、視界に詳しい筋の言葉を借りれば「政治屋の選挙に際しての美辞麗句を並べるようなものでは、簡単に見抜かれ門前払いがオチ」。案件の概要や目標金額、リターンなどはもとより例えばサムネイル画像の表示(ネット上で案件の内容を詳細に読まなくても分かる縮小パンフレット)なども求められる。

 昨年大ヒットしたゾンビ映画「カメラを止めるな」も、モーションギャラリーという仲介業者のサイトを通じた資金調達で実現している。

 だがクラウドファンディングには、落とし穴もある。(下に続く)(記事:千葉明・記事一覧を見る

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