スバル、2度のリコールに組織風土改革を目指す

2018年12月30日 21:17

印刷

 SUBARU(スバル)は12月20日、レガシイ、インプレッサなど米国仕様車7車種が米国の道路安全保険協会によって行われた2019年安全性評価において、「トップセイフティピックプラス(TSP+)」を獲得したと発表した。

【こちらも】スズキ、安全・安心で小さなクルマ戦略により営業利益率大幅改善

 要求される全ての耐衝撃性能試験において最高評価の「Good」、前面衝突予防性能試験においても最高評価「Superior」を獲得したことによるものである。

 SUBARUは1917年、飛行機研究所として中島知久平によって創業され、戦前は中島飛行機として戦闘機などの航空機を製造していたため、終戦後GHQによって財閥解体された。

 富士産業としてスクーターやバスなどの非軍需産業へ転換し、1953年に旧中島系の主要企業が合同して富士重工業となり、2017年広く浸透していた自動車ブランド名からSUBARUへ社名変更した。

 売上高は3兆4,000億円を超え、売上構成比は自動車が95%、航空宇宙関連4%、産業機器その他1%と大きく成長したSUBARUの動きを見ていこう。

■前期(2018年3月期)実績と今期見通し

 前期売上高は3兆4,052億円(前年比2%増)、営業利益は314億円減の3,794億円(同8%減)であった。

 営業利益減の要因としては、販売管理費、製造固定費など諸経費増442億円、製造原価上昇や売上構成差による減益130億円、試験研究費の増加69億円など減益要因641億円に対し、海外比率80%の中前年に比較して円安(1ドル108円->111円)による327億円の為替差益によるものである。

 今期第2四半期売上高1兆4,868億円(同8%減)、営業利益は検査不正による大規模なリコール費用発生などにより550億円(同74%減)という実績を受けて、今期見通しは売上高が当初計画よりも400億円下方修正の3兆2,100億円(同6%減)、営業利益は800億円下方修正の2,200億円(同42%減)を見込んでいる。

■新中期ビジョンによる推進戦略

 2017年10月、無資格者による検査などで約39万5千台のリコールを受けて、信頼回復を目指して組織風土改革を中心とする下記の戦略を2018年7月に発表した。ところが、その後国土交通省の立入検査でさらに完成車の出荷前検査不正が発覚し、11月に約10万台の追加リコールを行う事になった。

 1.品質向上への取り組み
 ・品質保証本部を中心に商品企画から生産に至る品質造りこみの全プロセスの見直し。
 ・サービス基盤を整備し、顧客との接点の質向上。
 ・品質向上に向け5年間で1,500億円投資。

 2.ブランド強化の取り組み
 ・つながる技術やデータを活用し、外部パートナーと協力し、個々の顧客価値の創造。
 ・電動車ラインアップの拡充と既存エンジン車の燃費改善推進。

 3.トヨタ自動車とのアライアンス強化
 ・EV基盤技術の共同開発。
 ・コネクティッド、セキュリティ等の新世代技術領域での連携強化。

 4.イノベーションの創出に向けた取り組み
 ・スタートアップ企業向けに5年間で100億円の投資ファンドを設立し、先進外部技術、ビジネスモデルの取り込み推進。

 5.航空宇宙事業戦略
 ・中央翼の開発、製造と主要格納部との統合を担当するボーイング社との提携強化。
 ・無人機研究システム、自衛隊練習機など防衛省への開発、納入の技術実証の推進。

 前期車販売台数107万台の内、国内比率15%、米国比率63%の一方、生産の方は国内比率66%、米国比率34%という状況であり、今後の日米貿易協議、為替動向などが大きく影響してくる。

 SUBARUが、今後組織風土改革、経営環境変化へどのように取り組むか見守りたい。(記事:市浩只義・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事