アメリカの怠慢「混流生産」の遅れ(1) GMは資金効率を理解できないのか?

2018年9月25日 17:09

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シボレー・クルーズ (c) 123rf

シボレー・クルーズ (c) 123rf[写真拡大]

 GMがリストラ対象としたオハイオ州ローズタウンの生産ラインで造られているのはシボレー・クルーズだ。そこは、ミシガン州デトロイトのGM本社から約320kmしか離れていない場所だ。シボレー・クルーズの初代はスズキ・スイフトがベースだが、2代目からがシボレーで、3台目が現行モデルだ。現在、生産はオハイオ州の工場だが、販売不振のためリストラをすると言う。6月末まで最大1500人解雇のはずで、現在何名がリストラとなったのかは情報がない。

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 2018年第一四半期、シボレー・クルーズ販売台数は4万台を割り込んだ。前年同期比26%減ではどうしようもない。

■GMなどグローバル企業の経営体質はファンド
 コンパクトカー「シボレー・クルーズ」は、日本や韓国、オーストラリア、ニュージーランドなどで販売されてきた。世界戦略車の位置づけとならなければならない車種だが、アメリカ車の常で経済が好調の時は、利益率の良い大型車が売れる。経営は順調な時なので、不況に備えて「良い小型車」を作る努力が足りない。

 シボレー・クルーズの歴史をたどれば、小型車作りに関してGMが本腰を入れてきた認識は持てない。日本でも売れていない。引き続きの販売戦略も見えてこない。M&A感覚で車種構成、設計・生産体制を考えているのが分かる。大型車から小型車まで、一貫した区別と共通部品化を図って、生産の「平準化」を進めて、変動に強いコスト体制を築こうとの意図が見えない。M&Aによる寄せ集め体制だ。同じように、M&A・金融政策を基本としてグローバル展開をしているメーカーとしては、今日の日産自動車がある。その車種展開を見ると、若干の問題意識がわく。

 マツダは弱小メーカーだが、「混流生産」を基本として、これまで1つのプラットフォームで全車種を構成しようとしてきた。さらに「スイング生産」などを考えて、世界中の工場の設備投資効率を高め、サプライヤー体制も企画・設計段階から統一するべく努力している。トヨタのTNGAも、狙いは同じだ。こうした自動車メーカーの「生産技術の進歩」の中で、GMがシボレー・クルーズを“専用ライン”の形で、オハイオ州の工場を操業してきたのには驚きを感じる。現在は「混流生産」が常識で、GMのように専用生産ラインでは稼働率が落ちてしまうことは当然となっている。

 金融の専門家集団であるはずの経営陣が、資金効率を考えていない。多分、長期でビジネスモデルを捉えることは、投資家が株主である企業では困難であろう。分かっていても短期的に配当を求めてしまう、アメリカ企業の常識では出来ないことだ。

 次は、アメリカ企業の実際を考えてみる。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

続きは: アメリカの怠慢「混流生産」の遅れ(2) アメリカ自動車産業をダメにしたのは「金融専門家」

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