【マツダ:ロータリーエンジンEV(下)】ロータリースポーツ復活か? 燃費が問題

2017年11月10日 06:23

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 詳しい情報がないので、ロータリーエンジンについてこれまでの知られている特徴を挙げておこう。コスモ、カペラなどロータリーエンジンは小排気量で「高出力」との特徴がある。1000ccロータリーエンジンはレシプロエンジン2000ccに匹敵する出力を発揮する。そのため、RX-8までのスポーツカーはフロントミッドシップを可能としてきた。補器類がレシプロエンジンと同じようなので、排気量が1/2でも、エンジン全体では半分とはならないが2/3程度の体積で収まるなど、現在「熱効率」でも注目される存在だ。

【前回は】【マツダ:ロータリーエンジンEV(上)】ロータリーエンジンが発電用・・!?

 では、なぜ「燃費性能」でロータリーエンジンが世の中から消え去ったかと言えば、ピストンリングに相当する部品での「シールドの難しさ」だった。マツダのロータリーエンジンエンジンは、基本特許はヴァインケルンエンジンのものだ。本家本元のヴァインケルンが開発できなかった理由は、レシプロエンジンのようにピストンの上下運動ではなく、回転運動のピストンを持つため、排気ガスを遮断するシールドがもたなかったからだ。シールドが激しく消耗するため、それに耐える材質がなく、マツダもたくさんの材質を試して「カーボン」を元としたシールド部品を開発して実用エンジンにたどり着いた。

 しかし、所詮はロータリーピストンの特性で、レシプロエンジンのピストンリングに相当する部品に限界があり、いわゆる「ガス漏れ」で燃費が悪く、市場からは消えていった。その後もマツダは開発は続けているようで、ロータリー方式の本来の特徴である熱効率の良さなどを発揮できるエンジンに仕上げることが出来ているのかが注目だ。

 今回、発電用の小型ロータリーエンジンと言えども、この燃費の悪さを克服しなければ採用できない問題だろう。もしも技術的に解決できているとすれば、「ロータリースポーツ」の再登場が期待できるのだ。

 ロータリーエンジンも開発当時は「夢のエンジン」といわれ、「自動車はマツダが支配する」とまで言われたのだが、石油ショックがあって情勢は一転してしまった。水素燃料電池も「究極のエコカー」と言われたが、現在は普及に苦労している。EVも「究極のエコカー」と言われているが、実はマツダの言う「油田から車輪へ(Well to Wheel)」では必ずしもエコではない。発電次第である。

 ドローンも「宅配便」などの夢が広がっているが、実際には街中を飛び回るには不確実極まりない機械で、危険が多く伴い、実用化には程遠い。最近、新技術が開発されると「夢」を声高にかたり、「だまし」に近い内容で人々を惑わす開発者たちが目立つ。「開発費調達や技術の買取」など金銭目的が強すぎる。新技術は安全などの実用化を取り巻く技術、法律、保険などのシステムが整わないと実現できない。

 これらの金銭目的の、先走った夢を語る人々に惑わされることなく、事実をよく見ていこう。ロータリーエンジンの将来を繋げるためにも、正しく理解することに努めたい。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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