東大、全く新しい「究極の大規模光量子コンピュータ」を考案したと発表

2017年9月24日 12:27

印刷

量子テレポーテーション装置の全体像。(写真:東京大学発表資料より)

量子テレポーテーション装置の全体像。(写真:東京大学発表資料より)[写真拡大]

 東京大学工学系研究科の古澤明教授と武田俊太郎助教が、新しいコンピュータの方式を考案、「究極の光量子コンピュータ方式を発明した」と発表した。

【こちらも】文科省、量子コンピュータ開発に10年間で300億円投入へ

 光量子コンピュータというのは量子コンピュータの一種である。では量子コンピュータとは何か。

 量子コンピュータは、量子力学の原理を情報処理に応用したコンピュータである。素粒子の世界で見られる「状態の重ね合わせ」を利用、超並列的な計算の実行を可能とする、とされる。理論的には、1980年代に、英国の物理学者デイヴィッド・ドイッチュなどが提唱した。

 従来のコンピュータとは一線を画することになる、未来のコンピュータ技術として様々な研究が進められている。2011年には「量子コンピュータの開発に成功した」と宣言する企業が現れるなど、まだ過渡期的な段階であるとはいえ、その実用化への道のりは端緒にはついているといえる。

 さて、では今回の発表について見てみよう。今回考案された方法のポイントは、ループ構造を持つ光回路を用いることにより、「量子テレポーテーション」回路を構築、これを無制限に繰り返し用いて大規模な計算を行える、ということだ。

 話によれば、構成要素は1ブロックの量子テレポーテーション回路とループ構造だけでよく、光学的部品は最小限しか必要ではないという。

 また理論的には、原子・イオン・超電導素子など他の素子を用いる量子コンピュータでは数十量子ビットが限界であった処理能力が、原理上、100万個以上の量子ビットにより、まさに桁の違う大規模な量子計算が実行可能になる、とのことである。

 今後は、実際の計算精度や各種アルゴリズムの実装方法について解析を進め、この方式に基づく実際の量子コンピュータの開発に取り組んでいくという。

 なお、研究の詳細は、「Physical Review Letters」のオンライン版に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事