中国海警局、スカボロー礁でフィリピン船に放水 5日間で3度目の妨害

2026年7月27日 12:13

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記事提供元:Tech Times

中国海警局の船は金曜日、スカボロー礁付近でフィリピンの漁業水産資源局の船に高圧放水砲を発射した。同海域でフィリピン側の活動が妨害されたのは過去5日間で3度目となり、地元漁師に燃料補助を届ける任務は中止に追い込まれた。約225キロ離れたマニラでASEAN外相会議が開かれるなか、中国は米比相互防衛条約の発動を避けることを意図したとみられる「グレーゾーン戦術」を展開している。

■ASEAN会議の裏で続く衝突

金曜日、中国海警局の船はスカボロー礁付近でフィリピンの漁業水産資源局の船に高圧放水砲を発射し、過去5日間で3度目となる妨害行動に及んだ。12隻の中国海警局船と3隻の中国海上民兵船が環礁へのあらゆる接近ルートを封鎖するなか、地元漁師に燃料補助を届けるフィリピン側の任務は撤退を余儀なくされた。この事態は、東南アジア各国の外交トップが約140マイル(225キロメートル)離れたマニラで会議を開いている最中に発生した。

今週起きた3つの衝突――月曜日のセカンドトーマス礁でのフィリピン海軍要員に対する警棒での攻撃、木曜日のスカボロー礁での放水、そして金曜日の任務中止――は、マニラで第59回ASEAN外相会議が閉幕するまでの間に発生した。同会議には米国のマルコ・ルビオ国務長官と中国の王毅外相も出席していた。外交官が会議場内で、海上で現実に起きている緊張を管理するための枠組みを議論している最中に、それぞれの衝突が発生したのである。

■中国のグレーゾーン戦術――戦争の閾値を下回るよう設計

金曜日に何が起きたのかを理解するには、中国海警局が使用した各手段の背後にある論理を理解する必要がある。

高圧放水砲は、通常の消防ホースとは異なる。中国海警局の船に搭載されているシステムは最大220psiで作動する。これは一般的なシャワーの5倍以上、消防用の給水本管より約50%高い圧力である。最大毎秒20リットルの流量とこの圧力により、操舵室の窓を粉砕したり、排気筒を通じて機関室を浸水させたり、航法用電子機器を損傷させたりすることができ、至近距離では骨折を引き起こす可能性もある。2014年の石油掘削施設「HYSY-981」をめぐる対立では、中国海警局の船がベトナム船に同様の技術を使用し、こうした被害が記録された。放水砲の射程は最大67メートルに達するため、乗組員は船内にとどまるだけでは身を守れない。

しかし、放水砲は銃弾ではない。その違いこそが重要なのである。

海洋安全保障研究組織のSeaLightは、中国のような方法で他国の公船に放水砲を使用する沿岸警備機関は世界にほかにないと報告している。この手段の選択は意図的なものだ。1951年の米比相互防衛条約は、2023年の二国間防衛指針によって適用範囲が明確化され、南シナ海のどこであっても、フィリピン軍、同国沿岸警備隊の船、または公船に対する「武力攻撃」があれば米国が対応することを定めている。中国は、放水砲、乗組員の視界を一時的に奪うレーザー照射装置、方向感覚を失わせる音響装置を法執行手段として位置付けている。中国政府の計算では、これらの手段を使えば、条約上の「武力攻撃」の閾値を下回りながら、フィリピン側の要員や任務に深刻な損害を与えられる。

「これが、中国海警局がグレーゾーンの手段として放水砲を使用する理由だ」とSeaLightは一連の行動に関する分析で結論付けている。金曜日に中国海警局が用いた個々の手段はすべて、「米比相互防衛条約第4条を発動させることなく何ができるか」という一つの設計上の問いに対する答えだった。

放水砲以外にも、スカボロー礁で使用されたグレーゾーンの手段には、軍用級のレーザー照射装置、音響装置、そして米国防総省が「人民武装力量海上民兵(PAFMM)」と正式に呼ぶ、いわゆる海上民兵が含まれる。PAFMMは中国人民解放軍の直接指揮下で活動する一方、民間漁船を装った船を使用するため、中国政府はその軍事的性格について、もっともらしい否認を行う余地を持つ。米海軍大学校のアンドリュー・エリクソンは、海上民兵を海軍、海警局と並ぶ中国の「第3の海上部隊」と呼び、特に「主権をめぐる争いで中国の立場を推進する直接的な役割を果たしている」と指摘している。

船の大きさの差そのものも威圧の手段となる。金曜日の衝突現場に向かうCNN取材船を夜通し追尾した中国海警局の巡視船は全長111メートルで、追跡対象となった全長30メートルのフィリピン船の約4倍の長さだった。この非対称性は偶然ではない。中国海警局最大の船である「ジャオトウ(Zhaotou)」級巡視船の排水量は約1万トンに達する。中国側が進路を阻み、放水するフィリピンの船は、準軍事的な船との対峙ではなく、沿岸活動を目的として建造された漁業用公船である。

■今週のスカボロー礁とセカンドトーマス礁での出来事

金曜日の衝突は未明に始まった。フィリピン沿岸警備隊の船に護衛された漁業水産資源局(BFAR)の船が、燃料補助を届けるため、ルソン島から西へ140マイル(225キロメートル)離れたスカボロー礁にいるフィリピン人漁師のもとへ向かおうとした際のことだ。

中国海警局の船は、フィリピン船「BRPダトゥ・パドゥヒノグ」から約7メートルの距離まで接近した。これは大型SUVの全長ほどの距離であり、フィリピン沿岸警備隊は「深刻な衝突の危険」を生じさせたと非難した。継続的な放水が2隻のフィリピン船を直撃した。ほかの2隻も放水を避けるため、衝突の危険を伴う緊急回避行動を余儀なくされた。フィリピン側の任務は完全に阻止され、フィリピン人漁師に燃料補助を届けることはできなかった。

フィリピン沿岸警備隊のジェイ・タリエラ報道官は声明で、「フィリピン沿岸警備隊は、中国海警局の危険かつ非専門的な行動を強く非難する」と述べた。さらに、スカボロー礁はフィリピン人の伝統的な漁場であり、そこでの権利は「いかなる外国勢力によっても合法的に妨げられるものではない」と付け加えた。

中国海警局は、これに対する従来の主張を示した。蒋魯報道官は、フィリピン船が「中国の黄岩島の管轄海域に侵入した」と述べた。黄岩島は中国政府によるスカボロー礁の呼称であり、中国側はフィリピン船を「法に従って」排除したとしている。中国外務省の林剣報道官は、中国側の行動について「正当かつ合法的」であり、「専門的かつ規範的で、非難されるところはない」と主張した。

今週は、これとは明らかに異なる形の実力行使で始まった。7月20日月曜日、スカボロー礁から650キロメートル離れたセカンドトーマス礁で、モーターボートに乗った中国海警局の要員が「BRPシエラマドレ」に接近した。フィリピンは、意図的に座礁させた第二次世界大戦期の艦船である同船に、小規模な軍部隊を駐留させている。フィリピン政府が公開した映像には、双方の要員が木製の警棒やオールで殴り合う様子が映っていた。フィリピン軍人2人が負傷し、医療搬送を必要とした。

木曜日にスカボロー礁で起きた一連の出来事の2回目の衝突は、異なる結果となった。中国船は放水し、至近距離まで接近する操船を行ったが、フィリピン船は補給任務を完了し、負傷者も報告されなかった。

■データが示すスカボロー礁の監視体制

2026年のスカボロー礁付近における中国の活動規模は、個々の事件が激化しているというだけではない。事件の発生を不可避にするような、中国の海洋態勢の構造的変化を示している。

戦略国際問題研究所(CSIS)のアジア海事透明性イニシアチブ(AMTI)は、2026年1月1日から6月30日までの船舶自動識別装置(AIS)による追跡データを分析した。その結果、中国海警局の船がこの6カ月間にスカボロー礁周辺で記録した累計の巡視日数は933艦船日に達し、2025年通年の1,099艦船日に迫ったことが分かった。2025年の数値も、2024年に記録された516艦船日の2倍を超えていた。

月別に見ると、中国海警局の巡視活動は、2025年上半期の月平均90艦船日から、2026年上半期には月平均156艦船日へ増加した。2026年5月だけで216艦船日に達し、ピークを記録した。現在は複数の中国海警局船が連携し、スカボロー礁の礁湖入り口から約30海里(35マイル、56キロメートル)に及ぶ警戒線を維持している。その内側では、6~8隻の中国海上民兵船からなる部隊が、ほぼ途切れることなく活動している。

中国船とフィリピン船の遭遇頻度は、現場の実態を示している。AMTIは、2026年上半期の112日間に、中国海警局船とフィリピンの法執行機関の船が接触したと記録している。ほぼ2日に1日の頻度である。「スカボロー礁における中国の活動は未知の領域に入った」とAMTIは結論付けた。「2026年に同礁で確認された中国海警局の組織的なプレゼンスは、AMTIが2019年に定期的なAIS追跡を開始して以来、南シナ海で観測した中国海警局の活動として前例のない水準にある」

これに対し、フィリピン沿岸警備隊とBFARの船が同期間に記録した巡視活動は月平均43艦船日だった。これは2025年の水準から43%増加しているが、それでも中国側の3分の1未満である。

■ASEAN会議の背景

金曜日の衝突がマニラでのASEAN外相会議最終日に起きたことを、単なる偶然とみなすのは難しい。

2026年のASEAN議長国を務めるフィリピンのテレサ・ラザロ外相は、第59回ASEAN外相会議を招集し、米国とイランの紛争やミャンマーの内戦と並んで、南シナ海の緊張を主要議題に据えた。ルビオ国務長官と王毅外相も出席した。両氏は水曜日に二国間会談を行い、月曜日に起きた警棒による攻撃について協議した。ルビオ氏はこの行動を「事態をエスカレートさせるもの」と呼び、米国と中国の間の「経済的なものであれ、それ以外であれ、紛争」は深刻な結果をもたらすため、慎重に管理する必要があると述べた。

木曜日の放水事件を受けても、ルビオ氏のメッセージは抑制的ながら明確だった。「われわれには果たすべき役割があり、同盟国を見捨てるつもりはない」と述べた。

中国の圧力が強まるなか、米比相互防衛条約は構造的な重要性を増している。2023年の二国間防衛指針は、「南シナ海のどこであれ」フィリピン沿岸警備隊の船、フィリピン軍の航空機、公船に対する攻撃を明示的に適用対象とし、同条約に残されていた地理的な曖昧さを解消した。米国は地域への戦力の再配置も行っている。米国とイランの紛争勃発後にバーレーンから再配備された米沿岸警備隊の船を、東太平洋へ移動させた。

今週、衝突が相次ぐなかでも、中国とフィリピンの双方は、長年にわたって策定が遅れている南シナ海行動規範を2026年末までに完成させる方向で作業を進めていると表明した。アナリストも、その皮肉を見逃してはいない。中国海警局の船がマニラから140マイル(225キロメートル)離れた場所でフィリピン人漁師を封鎖する一方、フィリピンの首都では、中国とフィリピンの外交官がまさにそのような衝突を防ぐための規則を交渉していたのである。

■国際的に否定された領有権主張を中国はどう正当化しているか

中国は2012年の対立以来、スカボロー礁を実効支配している。当時、中国政府は米国の仲介による、双方の面目を保つための取り決めを利用して、中国海警局の恒久的な駐留を確立し、その後は撤退しなかった。この手法は、その後のグレーゾーンでの権益拡大におけるひな型になったと観測筋は指摘している。

同礁に対する中国の主張は、南シナ海の約90%に対する歴史的主権を包括的に主張する「九段線」に基づいている。しかし、その正確な座標が正式に定義されたことはない。2016年7月、オランダ・ハーグにある常設仲裁裁判所の仲裁廷は、中国による九段線の主張には国連海洋法条約上の法的根拠がなく、スカボロー礁で中国がフィリピン人漁師を継続的に締め出していることも違法だと判断した。

中国政府はこの裁定を拒否し、現在まで受け入れていない。裁定から10年が経過する間に、スカボロー礁における中国海警局の年間巡視活動はほぼ3倍に増えた。従来は年間数百艦船日だったものが、2026年には上半期だけで933艦船日に達しており、法的な敗北が少なくとも現場の活動には影響を及ぼさなかったことを示唆している。

カーネギー国際平和財団アジア・プログラムのアイザック・カードンは米議会で、中国のグレーゾーン活動は「深刻な危機を引き起こすことなく長期にわたり維持できる局地的な優位」を確立するよう設計されていると証言した。SeaLightのディレクター、レイ・パウエルは2025年3月のインタビューで、その累積的な影響をさらに率直に表現し、「海洋占領の性格を帯びるようになった」と述べた。

■今後の展望

金曜日の衝突は、南シナ海外交の核心にある構造的な緊張を浮き彫りにしている。中国の外交官は行動規範の交渉に参加する一方、中国海警局は記録的な水準の威圧的行動を続けている。中国政府の視点では、この2つは矛盾しない。海警局の活動によって海上に既成事実をつくり、将来の行動規範にそれを覆させるのではなく、規則として固定化させることができるからだ。

フィリピンが採用する透明性重視の戦略――映像の公開、記者の同行、同盟国による非難の活用――は、個々の事件を国際的に知らしめる効果を上げたが、一連の動きを止めるには至っていない。AMTIのデータは、繰り返される外交的抗議にもかかわらず、中国の巡視活動が増加していることを示している。2023年の相互防衛条約に関する明確化は、正式な抑止の上限を引き上げた。だが中国の行動は、グレーゾーンで威圧を行うコストは、米国の実際の対応を招く閾値よりも低いままだと中国政府が計算していることを示唆する。

米国はフィリピン政府の立場を明確かつ繰り返し支持してきた。しかし、海上における中国側の損得計算を変えるような措置は、まだ講じていない。

■注目ポイントQ&A

●なぜ中国はフィリピン船に対して通常兵器ではなく放水砲を使用するのですか?

その選択は意図的であり、法的な閾値を計算したものです。1951年の米比相互防衛条約は、2023年の二国間防衛指針によって適用範囲が明確化され、南シナ海のどこであっても、フィリピン軍や公船に対する「武力攻撃」があれば米国が対応することを定めています。中国は放水砲、レーザー照射装置、音響装置を戦争用の兵器ではなく、法執行手段として位置付けています。「武力攻撃」の閾値をわずかに下回る形で行動することにより、米軍の直接関与を招く条約の発動を避けながら、機器の破損、乗組員の負傷、補給の阻止といった実害をフィリピン側の要員や任務に与えられると中国政府は計算しています。安全保障研究者によると、他国の政府船に対してこのような方法で放水砲を使用する沿岸警備機関は世界にほかになく、放水砲はこの目的に合わせて選ばれたグレーゾーンの手段です。

●南シナ海で中国が攻撃を行った場合、米国はフィリピンを防衛する義務がありますか?

1951年の米比相互防衛条約と2023年の二国間防衛指針に基づけば、「武力攻撃」が発生した場合には対応義務があります。2023年の指針は、南シナ海のどこであっても、フィリピン沿岸警備隊の船やフィリピン軍を適用対象に含めることを明示し、それまでの地理的な曖昧さを解消しました。争点となるのは、何が「武力攻撃」に該当するかです。放水、警棒による攻撃、至近距離での進路妨害は、これまで米国から「危険かつ攻撃的」な行為と表現されてきましたが、条約に基づく対応を必要とする武力攻撃とは位置付けられていません。ルビオ国務長官は今週、中国の行動を「事態をエスカレートさせるもの」と呼び、同盟国を見捨てないと表明しましたが、第4条に基づく義務には言及しませんでした。

●月曜日にセカンドトーマス礁で何が起きたのですか?スカボロー礁での出来事とはどう違うのですか?

スカボロー礁から650キロメートル離れたセカンドトーマス礁では、フィリピンが意図的に座礁させた第二次世界大戦期の艦船「BRPシエラマドレ」に、小規模な軍部隊を駐留させています。7月20日月曜日、モーターボートに乗った中国海警局の要員がシエラマドレに接近しました。映像にも裏付けられたフィリピン軍の説明によると、中国側要員は木製の警棒やオールでフィリピン軍人を殴り、2人が負傷して医療搬送されました。船に放水するのではなく、要員が要員を直接殴るという物理的暴力だったため、過去の事件以上に「武力攻撃」の閾値をめぐる問題を突き付けました。米当局者はこれを「危険かつ攻撃的」だと非難しましたが、相互防衛条約上の義務は発動しませんでした。

●南シナ海行動規範とは何ですか?それが今週のような事件を防ぐことになりますか?

ASEANと中国は約20年にわたり、南シナ海行動規範について交渉してきました。2026年のASEAN議長国であるフィリピンは、2026年12月31日を完成の目標期限に設定しています。提案されている合意は、領有権をめぐる争いが武力紛争に発展するのを防ぐための規則を定めるものです。ただし批判的な立場の人々は、中国がASEAN加盟国による域外大国との合同軍事演習を禁止する条項を提案していると指摘しています。これは米比協力を直接制約する可能性があります。また、中国がスカボロー礁で海警局のプレゼンスを拡大させながら署名する合意は、海上で既成事実を確立しつつ、交渉によって時間を稼ぐという2012年の対立時と同じ論理を反映する可能性があるとも指摘されています。

元記事: China Hits Philippine Fishers With Water Cannons Three Times in Five Days at Scarborough Shoal

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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