米ブラックストーン、AIインフラ投資で運用資産1.35兆ドルの過去最高 プライベートクレジットは減速

2026年7月24日 17:11

印刷

記事提供元:Tech Times

(Blackstone.com)

(Blackstone.com)[写真拡大]

米大手投資ファンドのブラックストーン(Blackstone)は木曜日、2026年第2四半期末の運用資産残高(AUM)が1.35兆ドル(約221.4兆円、1ドル=164円換算)を突破したと発表した。主要な業績指標はいずれも市場予想を上回り、AIインフラに流入する機関投資家資金の主要な受け皿としての位置づけを一段と固めた。一方、AIによるSaaSビジネスへの影響を巡る懸念からプライベートクレジットへの資金流入は減速しており、AIブームが同社の事業にもたらす明暗が鮮明になっている。

■過去最高の1.35兆ドルに達した運用資産と第2四半期決算の概要

Non-GAAPベースの1株当たり利益(EPS)は1.50ドルとなり、アナリストのコンセンサス予想である1.42ドルを上回った。売上高も市場予想の36.3億ドルに対して37.3億ドル(約6,117億円)に達した。GAAPベースの純利益は当四半期に24億ドル(約3,936億円)、年初来では36億ドル(約5,904億円)となった。

第2四半期の純資金流入額は約700億ドルに達し、総AUMを同社史上最高の水準に押し上げた。継続的な管理手数料を生み出す手数料収入対象AUMは前年同期比9%増の9,376億ドル(約153.8兆円)となった。Blackstoneの配当の基礎となる1株当たり分配可能利益は前年同期比26%増の1.52ドルとなり、LSEGがまとめたコンセンサス予想の1.35ドルを上回った。

同社は普通株1株当たり1.29ドルの四半期配当を発表した。また、当四半期には分配可能利益と分配金を合わせ、株主に約17億ドルを還元した。

会長兼CEOのスティーブン・A・シュワルツマン氏は、当四半期について「利益の力強い伸びと約700億ドルの資金流入が際立った」と述べた。さらに、AIイノベーターと大規模で緊密なパートナーシップを築いてきたことが、今後の成長に向けた同社の立ち位置を強化したとの見方を示した。

好調な決算にもかかわらず、発表後のプレマーケット取引でBlackstone株は約2%下落した。好調な主要指標と、投資家が決算数値以上に重く受け止める構造的な逆風が同時に示されるという、同社ではこれまでも見られた反応となった。

■ポートフォリオの核心を占めるAIインフラと活発化する投資回収

Blackstoneによると、保有投資のうち評価額の上昇が大きかった上位10件のうち9件が、現在ではAIセクターに関連している。これは、AIインフラの整備を軸に同社がポートフォリオを大きく組み替えてきたことを示す。その中にはAnthropicへの直接出資のほか、2021年に100億ドルで非公開化したQTSを中心とするデータセンター事業群が含まれる。

第1四半期に減速していた投資回収活動も大幅に加速し、第2四半期の回収総額は318億ドル(約5.2兆円)に達した。主な案件には、バージニア州北部にある全床賃貸済みのハイパースケール対応データセンター3施設の持分をDigital Realtyに78億ドル(約1.28兆円)で売却した取引が含まれる。

このほか、電力インフラ会社Sabre Industriesの過半数持分をTPGの気候投資プラットフォームへ譲渡する、以前に発表済みだった取引も完了した。当四半期には、広告テクノロジー企業Liftoff Mobile、Blackstoneの上場データセンター投資ビークルであるBlackstone Digital Infrastructure Trust(BXDC)、インドのオフィスREITであるBagmaneの3社が公開市場に進出した。

■350億ドルの金融枠組みでAIインフラを投資適格資産に

当四半期における構造面で最も重要な進展は、主要な決算項目として大きく示されたものではなく、BlackstoneがApollo Global ManagementおよびBroadcomとともに参加した350億ドル(約5.74兆円)規模の資金調達枠の詳細に含まれていた。

この取引では、大規模なAI計算用ハードウェアを、この規模では初めて投資適格債券の担保として活用できる構造が採用された。特別目的会社(SPV)がGoogleのカスタムTensor Processing Unit(TPU)を購入し、Anthropicはハードウェアを自ら購入または構築する代わりに、SPVから計算能力を借り受ける。

構造上の重要な革新は、Broadcomがシニア債のトランシェに対してチップの残存価値を保証した点にある。Anthropicが債務不履行に陥り、TPUの売却額が未返済額を下回った場合、BroadcomがA1債およびA2債の保有者に対して不足分を補填する。この保証により、これらのトランシェの信用力はBroadcom自身の投資適格格付けに近い水準まで高まった。

この仕組みが資本市場にとって重要なのは、合わせて数十兆ドル規模の資産を運用する保険会社や年金基金が、運用規定や法的制約によって投資適格の債券商品に投資対象を制限されているためだ。このような仕組みが登場する以前、これらの投資家はAIインフラにアクセスできなかった。SPVと保証を組み合わせた構造によって、その投資機会が開かれた。

最初の導入では、クラウドインフラ企業Fluidstackが運営する施設に、Anthropic専用のAI計算能力1ギガワットを配置することが決まった。Broadcomのホック・タンCEOは、より広い構想を「AI XPV Platform」と呼んでいる。同社はこの枠組みを利用し、OpenAIを含む主要AI研究組織に対して、2028年までに20ギガワットを超える計算能力を提供できるようにする方針だ。

Blackstoneは、手数料収入対象AUMで同社最大の部門であるクレジット&インシュアランス部門を通じて参加した。Apolloは傘下のAtlas SP Partnersを通じ、最初の投資トランシェを主導した。

■QTSモデルの成果と各事業セグメントの動向

Digital Realtyとの取引は、Blackstoneが早期に打ち出したAIインフラ投資戦略の成果を示している。同社が2021年にQTSを100億ドルで買収した当時、データセンターは主として不動産資産と見なされていた。

2026年6月までに、Digital RealtyはQTSのポートフォリオに含まれるバージニア州北部のわずか3施設に78億ドルを支払うことで合意した。3施設のIT容量は合計288メガワットで、ハイパースケール事業者からの需要を背景に、年間3.6%の賃料上昇条項を含む15年間の賃貸契約が結ばれている。顧客の加重平均信用格付けはAA水準であり、取引時点では3施設のうち2施設がまだ安定稼働段階に達していなかった。

今回の取引はQTSそのものの売却ではない。Blackstoneはより広範なQTSのプラットフォームを引き続き保有し、AIデータセンターへの投資を担う主要な事業基盤として開発を続けている。

第2四半期には、Blackstoneの4事業部門がそれぞれ大きな規模で事業を展開した。プライベート・エクイティは手数料収入対象AUMの27%を占め、基本管理手数料の34%を生み出した。不動産・リアルアセットは手数料収入対象AUMの30%、基本管理手数料の33%を占めた。手数料収入対象AUMで最大のクレジット&インシュアランス部門は、同AUMの33%、基本管理手数料の26%を占めた。

個人富裕層向けチャネルも回復を続けた。同社の主力非上場REITであるBREITは当四半期に12億ドルを調達した。これは、金利ショックが最も深刻だった2022~2023年に、月額40億ドルを超える解約請求を処理していた状況からの回復を示す。個人投資家向けプライベート・エクイティ投資ビークルのBXPEは24億ドル、同じ個人向けチャネルのインフラファンドであるBXINFRAは8億6,100万ドルを調達した。

■エージェント型AIへの懸念で減速するプライベートクレジット

Blackstoneの上位10件の投資のうち9件を押し上げたAIというテーマは、同時にプライベートクレジット事業では明確な逆風となった。

Blackstone Private Credit Fund(BCRED)が第2四半期に調達した資金は10億ドル(約1,640億円)で、第1四半期の19億ドルから減少し、前年同期の37億ドルを大幅に下回った。背景は明確だ。BCREDの融資ポートフォリオの約26%はソフトウェア企業向けであり、エージェント型AIがSaaSのビジネスモデルを揺るがすとの懸念から、業界全体で投資家がプライベートクレジット商品から資金を引き揚げた。

BCREDは第2四半期も解約制限を維持し、投資家が引き出せる金額を制限した。純リターンは第1四半期の横ばいから0.4%へ改善したものの、2025年第2四半期の2.2%を大きく下回った。

シュワルツマン氏は第1四半期の決算説明会で、プライベートクレジットに対する批判を、基礎的な事業実態と整合しない「極めてネガティブなキャンペーン」と表現した。BCREDも投資家向け開示で、ソフトウェア分野の融資先は、LTVが低く、利払い余力が大きい、規模の大きな既存企業に集中していると説明した。

こうした懸念は木曜日の決算発表以前からBlackstoneの株価に反映されていた。水曜日の終値までの年初来下落率は約20%だったが、決算発表に伴っていったん持ち直した。

■2,133億ドルの待機資金がAIインフラ整備を左右

Blackstoneが今後の投資に利用できる待機資金として示した2,133億ドルは、同社株を保有していない人にとっても今回の決算が重要であることを最も直接的に示す数字だ。この資金は、AI企業の運営に必要なデータセンター、電力インフラ、半導体の供給能力に投じられる。2026年後半に資金がどこへ流れるかによって、どのAIインフラ計画が建設され、どの計画が実現しないかが左右される。

Blackstone株やオルタナティブ資産運用業界を評価する投資家にとって、今回の決算は、機関投資家の資金で物理的な計算基盤を整備するAIインフラ投資が減速していないことを示した。同時に、同じAIの波がBlackstoneの事業内に二極化を生んでいることも確認された。AIインフラとAI関連株式への投資は加速する一方、AIによる影響が懸念されるソフトウェア企業へのプライベートクレジット投資は減速している。この分断は一時的に解消されるのではなく、現在の投資サイクルを通じて続く可能性が高い。

■注目ポイントQ&A

●Blackstoneの350億ドル規模のAnthropic関連取引は、通常のプライベート・エクイティ投資と何が異なりますか?

350億ドルの取引は株式投資ではなく、Google製のTPUを購入してAnthropicに貸し出すSPVを通じて組成された債務による資金調達です。重要な点は、Broadcomがシニア債のトランシェに対してチップの残存価値を保証し、その信用力を投資適格に近い水準まで高めたことです。この構造により、運用規定上、投資適格債券を保有しなければならない年金基金や保険会社が、大規模なAIインフラ金融に参加できるようになりました。AI企業に直接出資する場合とは異なる仕組みです。

●主要な業績予想を上回った日に、なぜBlackstoneの株価は下落したのですか?

市場予想を上回ることは株価反応を決める要素の一つにすぎず、市場は既に織り込まれた情報と今後の見通しも同時に評価します。Blackstone株は第2四半期決算の発表前までに年初来で約20%下落しており、投資家はBCREDへの資金流入減少という逆風を既に意識していました。好決算後のプレマーケット取引で約2.1%下落したことは、市場がBCREDの資金流入減少を、一度の好調な決算では解消されない構造的な懸念と受け止めたことを示唆します。

●Non-GAAP EPSと分配可能利益の違いは何ですか?

Non-GAAP EPSは、より広範な収益性を示す指標です。第2四半期は1.50ドルとなり、市場予想の1.42ドルを上回りました。一方、1株当たり分配可能利益は、事業が実際に生み出し、株主への分配に利用できる現金を示します。四半期ごとにGAAP純利益を大きく変動させる可能性がある未実現損益は除かれます。第2四半期の分配可能利益は前年同期比26%増の1.52ドルでした。Blackstoneでは分配可能利益が配当を左右するため、配当を重視する投資家やオルタナティブ資産運用会社の評価にとって特に重要な指標です。

●AIによるソフトウェア企業への影響で、Blackstoneのプライベートクレジットは実際に危険になっていますか?

Blackstoneの開示によると、BCREDのソフトウェア分野への融資は、LTVが低く、利払い余力が約2倍ある大手の既存企業に集中しています。このため、個々の融資先のデフォルトリスクは抑えられていると同社は説明しています。

より直接的な構造上の懸念は、個人投資家や富裕層の投資家がBCREDに解約を請求できることです。多数の投資家が同時に解約を求めた場合、ファンドは解約を制限するため、流動性を必要とする投資家が希望どおりに資金を引き出せなくなります。2026年上半期にBCREDへの資金流入が大きく減少した背景にある短期的なリスクは、基礎となる融資の損失そのものではなく、この解約制限の仕組みです。

元記事: Blackstone Beats Q2 Estimates as AI Infrastructure Bets Drive Record $1.35T AUM

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

関連キーワード

関連記事