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米量子政策で関連株はピークから35%下落――「次のエヌビディア」論と2031年暗号移行期限を検証

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ドナルド・トランプ米大統領が2つの大統領令に署名してから3週間後、一時30%以上上昇した量子コンピューター関連株は、その上昇分のおよそ3分の1を失った。セクター最大の売上高を持つIonQの株価は、署名後のピーク時に付けた60ドル超から、7月13日には39ドル前後まで下落。同日には、投機的なテクノロジー株全般にマクロ要因によるリスク回避の売りが広がり、さらに8%下落した。D-Wave、Rigetti、Quantum Computing Inc.もそろって値を下げた。下落につながる個別企業のニュースはなく、市場は連邦政府の投資が実際に何をもたらし、何をもたらさないのかを織り込み直していた。
連邦政府の取り組み自体は現実のものだ。一方、その後にSNSで広がった、量子コンピューティングを「次のエヌビディア」や個人投資家向けの宝の地図のように捉える言説は、政策の実態とは異なる。この違いを理解するうえで重要なのが、2026年6月22日の大統領令の一つに盛り込まれた2031年の暗号移行期限だ。この期限は、数年後ではなく、今から対策を始める必要性を生み出している。
■トランプ大統領が実際に署名した大統領令
2つの大統領令はそれぞれ異なる目的を持つが、相互に補完するよう設計されている。
1つ目の大統領令「量子イノベーションの次なるフロンティアの先導(Ushering in the Next Frontier of Quantum Innovation)」は、「応用開発・発見科学のための量子コンピューター(QC-ADDS)」イニシアチブを創設するものだ。エネルギー省(DOE)、商務省、インテリジェンス・コミュニティが連携し、従来型コンピューターでは実現できない科学計算が可能な量子コンピューターをDOEの施設に配備することを目指す。
ホワイトハウス科学技術政策局(OSTP)のマイケル・クラツィオス局長は、記者団に対し、政権はこれを「2028年までに実現できる」と考えていると述べた。一方、数十年にわたり量子システムを研究してきたイェール大学の量子物理学者スティーブン・ガービン氏は、プログラム発表時にこの日程を「現在、この分野で可能と考えられていることの限界に位置する」と評価した。
2つ目の大統領令「高度な暗号攻撃からの国家防衛(Securing the Nation Against Advanced Cryptographic Attacks)」は、連邦政府機関と政府契約企業に対し、耐量子暗号アルゴリズムへ移行する拘束力のある期限を設定した。大統領令では、重要インフラにおける鍵確立を2030年末までに耐量子標準へ移行し、高影響システムのデジタル署名についても2031年末までに対応することを求めている。
米国立標準技術研究所(NIST)は2024年8月、CRYSTALS-Kyber、CRYSTALS-Dilithium、SPHINCS+をそれぞれベースとする最初の3つのポスト量子暗号標準、FIPS 203、FIPS 204、FIPS 205を正式に策定した。6月22日の大統領令は、連邦政府に対してこれらを実際に導入するよう指示したものだ。
署名式には、Alphabet社長のルース・ポラット氏、IBM CEOのアービンド・クリシュナ氏、ノーベル賞を受賞した量子物理学者ジョン・マルティニス氏、ハワード・ラトニック商務長官、クリス・ライト・エネルギー長官らが出席した。トランプ大統領は署名に際し、量子コンピューティングは「わが国の経済成長、科学研究、サイバーセキュリティにとって極めて重要だ」と述べた。
■暗号化データは今も収集されている
2030年と2031年の期限は、将来の問題に備えるためだけのものではない。現在進行している攻撃への対応でもある。
セキュリティ研究者や情報機関は、この攻撃を「今収集し、後で解読する(Harvest Now, Decrypt Later)」と呼んでいる。敵対勢力が、機密情報、金融記録、健康データ、政府の通信など、現在暗号化されている通信を傍受して保存し、現在の公開鍵暗号を破れる量子コンピューターが利用可能になった時点で解読しようとする手法だ。
英国の国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)は2023年の年次報告書で、国家主体が「将来の悪用」を目的としたデータ窃取活動を行っていることを確認した。米国家安全保障局(NSA)も2021年に同様の見解を示している。
ここでは攻撃の具体的な仕組みが重要になる。十分に大規模な量子コンピューターでショアのアルゴリズムを実行した場合、暗号化されたデータ本体を直接攻撃するのではない。2者が共通のセッション鍵を合意する際に使うRSAや楕円曲線暗号による非対称鍵交換を破り、傍受した鍵交換の情報から鍵を復元する。
AES-256による対称鍵暗号そのものはショアのアルゴリズムの脅威を受けない。脅かされるのは、AES-256などの利用に必要な鍵を確立するTLSハンドシェイクだ。
したがって、耐量子鍵交換プロトコルへの移行が1日遅れるごとに、十分な資源を持つ敵対勢力がデータを収集できる期間も1日増える。グローバル・リスク・インスティテュートは、暗号解読に利用できる量子コンピューターが登場する可能性の最も高い時期を2033~2037年としている。
2030~2031年という連邦政府の期限が設定されたのは、15年以上にわたり機密性を維持しなければならないデータを保有する政府機関や契約企業が、現在の暗号を量子コンピューターで破れるようになる「Qデー」の到来を待ってから移行を始めることはできないためだ。
■長年にわたり形成されてきた政策基盤
今回の大統領令は、前例のないところから突然生まれたわけではない。米国の量子技術に関する連邦政府の枠組みは、2018年の国家量子イニシアチブ法にさかのぼる。バイデン政権の国家安全保障覚書第10号(NSM-10)は、政府全体のポスト量子暗号移行目標を2035年に設定していた。
6月22日の大統領令はこの基盤を引き継ぎながら、期限を前倒しし、国内量子産業への資金供給で政府が直接果たす役割を広げ、NSM-10にはなかった実効性のある履行要件を加えた。
より大きな政策介入は、その1カ月前に発表されていた。商務省は5月21日、CHIPSおよび科学法に基づく20億1300万ドル(約3261億円、1ドル=162円換算)のインセンティブを量子コンピューティング企業9社に配分し、それぞれの企業について、経営支配権を伴わない少数株式を取得する方針を発表した。
この仕組みは、インテルに初めて適用された、戦略的な製造投資と引き換えに政府が株式を取得する産業政策モデルを、まったく新しい技術分野へ広げるものだ。
中核となる受給候補はIBMだ。同社は、提案されている10億ドル(約1620億円)のCHIPS法インセンティブに10億ドルの自己資金を組み合わせ、ニューヨーク州オールバニに独立子会社「Anderon」を設立する計画だ。IBMはAnderonを、米国初の量子チップ専用ファウンドリと説明している。
Anderonは300mm量子ウェーハ製造施設を運営する予定だ。この製造仕様により、小型ウェーハを使う方式と比べてデバイスの改良サイクルを約30倍高速化できる。従来型半導体産業が数十年前に300mmウェーハへ標準化したことで実現したのと同様のコスト削減経路を、量子チップでも確立する狙いがある。
現在、これに相当する中立的な量子ファウンドリは世界に存在しない。稼働中の量子コンピューターはすべて、自社でハードウェアを設計、製造、運用する垂直統合型企業によって構築されている。
残る配分案では、GlobalFoundriesが自社の量子ファウンドリ機能に3億7500万ドル(約608億円)、D-Wave、Rigetti、Atom Computing、Infleqtion、PsiQuantum、Quantinuumがそれぞれ1億ドル(約162億円)を受け取る予定だ。オーストラリアのシリコンスピン方式のスタートアップDiraqには、3800万ドル(約62億円)が配分される予定である。
ただし、Anderonの案件を含む9件はいずれも意向表明書(LOI)の段階であり、助成額が最終決定されたわけではない。CHIPS法の助成額は、デューデリジェンスの過程で変更された例がある。サムスンへの製造インセンティブは、2024年に提案された64億ドルから、同年末までに最終決定された47億5000万ドルへ減額された。
■「次のエヌビディア」論が見落としたアーキテクチャと時間軸
6月22日の署名後に広がった「次のエヌビディア」という見方には、たとえとしての明確な問題がある。エヌビディアがAIコンピューティングで築いた優位性は、ゲーム用GPU、プロフェッショナル向けビジュアライゼーション、ハイパフォーマンス・コンピューティングへと続く、20年にわたる実際の売上高を基盤としていた。
同社はAI需要が到来する前に、定着までに長い年月を要したCUDAのソフトウェアエコシステムも構築していた。AIを巡る大規模な需要拡大が始まる前から、製造基盤と開発者基盤を持っていたのである。
量子コンピューティング専業企業の多くは、現時点でこのどちらも持っていない。その理由を理解するには、量子ハードウェアが実際にどの段階にあるかを把握する必要がある。
商用利用できる量子コンピューターは、研究者がNISQ(Noisy Intermediate-Scale Quantum、ノイズのある中規模量子)時代と呼ぶ段階にある。現在の主要システムは数百から数千の物理量子ビットを搭載しているが、ゲート当たりのエラー率が依然として高い。そのため、汎用的でフォールトトレラントな量子計算に必要な誤り訂正符号を実装することは、まだ現実的ではない。
商用活動の大部分を占める主要なハードウェア方式は3つあり、それぞれが根本的な技術上のトレードオフを抱えている。
IBMとGoogleは超伝導量子ビットを利用している。ジョセフソン接合が量子的な振る舞いを示すよう、回路を宇宙空間より低温となる約15ミリケルビンまで冷却する方式だ。ゲート速度は数十~数百ナノ秒と高速で、半導体の微細加工技術を使って拡張できる。
一方、超伝導量子ビットのコヒーレンス時間には課題がある。環境ノイズによって量子状態が失われるまでの時間は、マイクロ秒単位にとどまる。120の物理量子ビットを備えるIBMのプロセッサ「Nighthawk」は、2026年6月、素粒子物理学シミュレーションとネットワーク最適化で独立した検証を通過した。IBMの「Starling」ロードマップは、2029年までに約200の誤り訂正済み論理量子ビットを実現することを目標としている。
IonQはイオントラップ量子ビットを利用している。電磁場で浮遊させた個々の帯電原子を、高精度のレーザーパルスで制御する方式だ。コヒーレンス時間はマイクロ秒ではなく分単位で測定され、システム内の任意の量子ビット同士を直接相互作用させられる。多数の量子ビットのもつれを必要とする複雑な量子アルゴリズムにおいて、アーキテクチャ上の利点となる。
その代わり、速度には課題がある。イオントラップ方式のゲート操作には1~10マイクロ秒を要し、超伝導方式と比べて約100倍遅い。レーザーや真空設備を必要とするイオントラップ方式を、多数の量子ビットへ拡張することも、解決途上の技術課題だ。
Microsoftや新規参入企業は、光量子方式やトポロジカル方式も研究している。光量子方式は光子を量子ビットとして利用し、常温で動作して光速で情報を伝送できる一方、ゲート忠実度は低い。
MicrosoftとQuantinuumのトポロジカル方式は、量子誤り訂正率を800倍改善する成果を示し、2026年6月に査読付き学術誌『Nature』の論文で検証された。これは実際の技術進歩を示す重要な結果だが、フォールトトレラント量子コンピューティングの短期的な実現時期を変えるものではない。
現在の企業評価額を正当化できる用途に必要な規模で、フォールトトレラント動作を達成した方式はまだない。いずれかの方式がその水準へ到達する時期については、2029年から2030年代半ばまで、専門家の見方に幅がある。
エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは、実用的な量子優位性の実現には20年かかる可能性があると公に主張している。QC-ADDSプログラムが掲げる2028年という目標は、真剣な科学的見解の幅の中でも楽観的な側に位置する。
■市場で実際に起きたことと各社の財務状況
6月22日、量子コンピューティング関連株は上昇した。ただし、短編動画が伝えたほどの熱狂的な動きではなかった。RigettiとD-Waveが値上がりし、IonQは約3%上昇した。
これらの上昇幅は、5月21日にCHIPS法による支援案が発表された際の動きより明らかに小さかった。5月21日にはD-Waveが30%以上急騰し、Rigettiも同程度上昇、Infleqtionも約31%値上がりした。
最初の発表当日、この3社の時価総額は、提案額3億ドルに対して合計約50億ドル増加した。この比率は、基礎的な財務状況にかかわらず、連邦政府から評価されたというシグナルに対し、市場がどれほど大きな投機的プレミアムを付けていたかを示している。
そのプレミアムはその後、大きく縮小した。ホルムズ海峡を巡る緊張とAIセクター全体の調整を受け、マクロ要因によるリスク回避の売りが広がった7月13日、IonQは8%下落して約39ドルとなった。1カ月間の高値からの下落率は約35%に達した。D-Wave、Rigetti、Quantum Computing Inc.もそれぞれ6%下落した。
複数のアナリストによると、この値動きにつながる個別企業のニュースはなかった。
各社の基礎的な事業指標は、すべてを単なる投機として片付けることを難しくしている。IonQの2026年第1四半期(Q1)売上高は、前年同期比755%増の6470万ドル(約105億円)だった。通期売上高見通しは2億6000万~2億7000万ドルへ引き上げられ、Q2売上高は6500万~6800万ドルと予想している。
契約済みだが売上高として未認識の金額を示す残存履行義務(RPO)は、前年同期比554%増の4億7000万ドル(約761億円)だった。Q1売上高の約60%は政府以外の民間顧客、約35%は海外市場から得ている。
D-Waveの四半期受注額は、Fortune 100企業や学術機関との契約を背景に前年同期比1994%増の3340万ドル(約54億円)となった。同社の量子アニーリングシステムは、企業の最適化業務ですでに実稼働している。Rigettiは、最大1億ドルの支援案に関する意向表明書を商務省と締結した。
一方、売上高の数値だけでは見えない問題もある。IonQは2026年Q1に2億7150万ドル(約440億円)の営業損失を計上した。研究支出の加速に伴い、通期の調整後EBITDA損失は3億1000万~3億3000万ドルと予想されている。2025年の損失は1億8675万ドルだった。
Q1の株式報酬費用は1億2850万ドルに達し、同四半期の売上高の約2倍に迫った。同社の予想株価売上高倍率は約66倍で、業界中央値の4.36倍を大きく上回る。D-WaveとRigettiにも、高い評価額、少ない売上高、短期的な黒字化への道筋が見えないという、同様の構造がある。
D-Waveは7月14日、上場市場をNasdaqへ移すと発表した。同じ週には、IDC MarketScapeの「Worldwide Quantum Computing 2026 Vendor Assessment」で、「Leaders」カテゴリーに入った2社のうちの1社に選ばれた。
この評価は、ゲート型量子コンピューティングではなく、最適化処理における同社の商用実績を反映したものだ。同社のアニーリング方式は、特定の組合せ最適化問題を対象としている。汎用量子コンピューターではないため、量子ビット数だけでIBMやIonQと比較すべきではない。
■中国、輸出規制、双方が負けられない競争
米政権は一連の大統領令を米中間の量子技術競争の一部と明確に位置付けている。この地政学的背景は、単なるレトリックではない。
2026~2030年を対象とする中国の第15次5カ年計画は、指定された7つの未来産業の筆頭に量子技術を掲げている。中国の研究者は、中国電信の量子子会社を通じて504量子ビットの超伝導システムを配備した。中性原子方式の「Hanyuan-1」は500万ドルを超える受注を獲得し、パキスタンにも輸出された。
中国の科学者は、超伝導量子コンピューターに必要な極低温冷却装置である希釈冷凍機に対する米国の輸出規制を回避するため、希釈冷凍機に依存しない量子アーキテクチャも開発している。
バイデン政権下の2024年末、中国の組織を対象とする量子コンピューティング用ハードウェア、誤り訂正ソフトウェア、クラウドサービスの輸出規制が発効した。トランプ政権はこれらの規制を延長し、中国企業を輸出規制リストに追加した。
こうした措置は、中国の量子技術開発を遅らせるのではなく、国内開発を加速させるという記録された影響を生んでいる。これは、半導体の輸出規制で見られたパターンと共通する。
PQC移行期限の緊急性は、この競争と直接つながっている。外国政府が2033年または2035年にフォールトトレラント量子コンピューターを保有すれば、それ以前の10年間に収集、保存した政府通信を解読できる可能性が生じる。
「今収集し、後で解読する」という攻撃モデルは、単なる思考実験ではない。現在の状況を前提にすれば、敵対勢力にとって合理的な戦略である。2030~2031年の期限が設定され、交渉の余地がないとされるのはこのためだ。
■投資家と企業が注目すべき5つの指標
短編動画の投稿ではなく、実際の競争環境を見極めるには、各社が連邦政府の政策による追い風を持続的な価値へ転換できるかを示す具体的な指標に注目する必要がある。
1. 2028年にDOE施設へ導入されるハードウェア:QC-ADDSプログラムは、実質的に政府が運営する量子ビット方式の比較選定となる。選定仕様は2026年9月末までに公表される見通しで、ハードウェア開発企業に明確な技術目標を与える。
IonQのイオントラップ方式、Anderonを通じたIBMの超伝導方式、QuEraやAtom Computingのような中性原子方式のいずれが選ばれるにしても、選定企業はその後の契約において大きな政府調達上の信用を得ることになる。
2. IonQの2026年Q2決算:経営陣はQ2売上高を6500万~6800万ドルと予想している。この範囲内またはそれを上回り、民間顧客からの売上比率が60%以上を維持し、RPOも増加を続ければ、売上モデルが成長を続けていることや、7月の下落が基礎的な事業状況ではなく市場心理によって生じたとの見方を裏付ける材料になる。
予想を下回る場合や業績見通しが引き下げられた場合は、評価の切り下げが加速する可能性がある。
3. PQC移行契約の規模:2030~2031年の拘束力ある期限は、サイバーセキュリティ企業やポスト量子暗号コンサルタントに現実の短期需要を生み出す。量子ハードウェア専業株ほど注目を集めなくても、より持続性のある投資テーマになる可能性がある。
ポスト量子暗号への移行支援、NIST準拠ライブラリの統合、従来暗号と耐量子暗号を組み合わせたハイブリッド導入方式を専門とする企業は、期限が定められた義務的需要に直面している。
4. Anderonの進捗:IBMのアービンド・クリシュナCEOは、Anderonの可能性を「10年前のAIチップ」にたとえ、2030年代半ばまでに高い利益率で年間数十億ドルの売上高を生み出す可能性があるとの見方を示した。
ただし、この予測が実現するには、現在は意向表明書の段階にある取引が正式に成立し、300mm量子ファブが製造投資に見合う顧客基盤を獲得する必要がある。IBMの量子プログラム全体では、Starlingロードマップに基づき、2029年までに約200の論理量子ビットを実現することを目標としている。
5. 人材:IBMは6月22日の署名に合わせて公表した声明で、量子技術は「製造、創薬、エネルギー、農業などに変革をもたらす能力」を持つと説明した。
しかし、十分な人数の訓練された人材がいなければ、こうした用途を大規模に実現することはできない。大学、国立研究所、人材育成へ投資する企業は、最終的に、特定のハードウェア上の進歩と同じほど量子分野の実現時期を左右する可能性がある。
■「触媒」と「地図」の違い
米連邦政府は、量子コンピューティングに対する方針を明確にし、資金と期限を設定した。20億1300万ドルのCHIPS法による投資案、QC-ADDSプログラム、拘束力のある2030~2031年のPQC移行期限は、米国史上最大かつ最も体系化された量子技術への連邦政府の取り組みを構成する。
2028年までに国の量子コンピューターを導入するという目標は野心的で、専門家からも実現可能性を疑問視されている。一方、その背後にある政策の枠組みは現実に存在する。
短編動画の投稿が見落としていたのは、政府の義務付けや投資日程は、技術が発展する条件を整えるものであって、どの民間企業が、いつ、どのような評価倍率で価値を獲得するかを保証するものではないという点だ。
エヌビディアがAI需要の大幅な拡大を迎えるまでには、25年にわたる地道な技術開発と、複数の市場サイクルを通じて売上高を築く過程があった。米政府が構築を約束したインフラは、次のコンピューティング時代を生み出す可能性がある。
しかし、年間数億ドル規模の損失を計上している企業に対して予想売上高の66倍を支払う個人投資家は、政府を含めて誰も保証できない特定の時間軸に賭けていることになる。
暗号移行義務の緊急性は、推測に基づくものではなく、2028年の量子コンピューターが予定どおり完成するかどうかにも左右されない。脅威につながるデータ収集は今も進んでいる。
連邦政府機関と政府契約企業にとって、ポスト量子暗号への移行は、この一連の動きの中で最も時間的制約の厳しい課題であり、同時にSNSの短編動画では最も取り上げられにくい課題でもある。
■注目ポイントQ&A
●トランプ大統領の量子関連大統領令は、誰に何を求めていますか?
6月22日の大統領令は、並行する2つの義務を設けています。1つ目は、エネルギー省、商務省、インテリジェンス・コミュニティに対し、2028年までに研究用量子コンピューターをDOE施設へ配備し、2026年9月までに高度な量子センサーを実用配備するよう求めるものです。
2つ目は、連邦政府機関とすべての政府契約企業に対し、機密性の高いシステムを保護するRSAや楕円曲線暗号を、NISTが承認した耐量子暗号アルゴリズムへ置き換える期限を設定するものです。鍵確立は2030年末まで、デジタル署名は2031年末までに対応する必要があります。政府契約を持つ組織や政府データを処理する組織が対象となります。
●「今収集し、後で解読する」とは何ですか?量子コンピューターが存在しない今、なぜ緊急なのでしょうか?
ショアのアルゴリズムを実行できる十分に強力な量子コンピューターは、現在の標準的なインターネット暗号通信で使われる秘密鍵を復元できる可能性があります。具体的には、2者が共有セッション鍵を合意するために利用するRSAや楕円曲線暗号の仕組みが対象です。
敵対勢力は、量子コンピューターが実用化された後に解読することを見込み、暗号化されたデータを現在から収集しています。NSAは2021年、英国のNCSCは2023年に、このようなデータ収集が行われているとの見解を示しました。
したがって、10年以上にわたり機密性を維持する必要があるデータを扱う組織にとっては、仮定上の将来リスクではなく、現在のデータに関する問題です。NISTのポスト量子暗号標準へ移行することで、この危険にさらされる期間を短縮できます。
●政府が量子分野へ巨額の支援を打ち出したのに、IonQの株価が35%下落したのはなぜですか?
主な理由は2つあります。1つ目は評価額です。IonQは6月の上昇局面で、予想株価売上高倍率が100倍を超える水準で取引されていました。同社は2026年Q1に9680万ドルの調整後EBITDA損失を計上し、通期の調整後EBITDA損失を3億1000万~3億3000万ドルと予想しています。
連邦政府の投資は技術開発のための市場環境を整えますが、特定の企業が現在の評価倍率を正当化できる時期に、その価値を獲得できるとは限りません。
2つ目はマクロ環境です。7月13日の下落は、ホルムズ海峡を巡る緊張や、AI関連のテクノロジー株全体の調整に伴うリスク回避の売りによって生じました。IonQのベータ値は約3.2で、このような局面では市場全体のおよそ3倍の幅で動く傾向があります。
一方、力強い売上成長と31億ドルの現金保有額は、同社に事業基盤があることを示しています。ただし、現在の評価額を正当化するには、長年にわたって計画を実行し続ける必要があります。
●IonQとIBMの量子コンピューティング方式は何が違い、2028年の期限にどう影響しますか?
IonQは、電磁場で浮遊させた帯電原子を高精度レーザーで制御するイオントラップ量子ビットを利用しています。この方式では、量子状態を維持できるコヒーレンス時間がマイクロ秒ではなく分単位となり、任意の量子ビット同士を直接相互作用させられます。
一方、ゲート操作にはマイクロ秒単位の時間がかかり、ナノ秒単位で動作する超伝導方式より低速です。
IBMは、絶対零度に近い温度まで冷却した回路を使う超伝導量子ビットを利用しています。ゲート操作は非常に高速ですが、量子状態が短時間で失われやすく、高価な希釈冷凍機も必要です。
両方式は異なる処理に適しています。2026年9月までに公表される見通しのQC-ADDS選定仕様によって、2028年の政府調達で評価される具体的な技術指標が定められます。そこで選ばれた企業は、その後の政府契約における重要な売上基盤と、企業向け契約にもつながる信用を得ることになります。
元記事: Quantum Computing Stocks Drop 35% as Federal Mandate Reshapes Investment Case
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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