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シャオミ、ロボット向け世界モデル「U0」をオープンソース公開――データ生成を82倍高速化
中国のシャオミ(Xiaomi)は2026年7月15日、ロボット工学向けの380億パラメータを持つ世界基盤モデル「Xiaomi-Robotics-U0」をリリースし、オープンソースとして公開した。このモデルは、インターネット上の画像・動画生成モデルが持つ視覚的知識を活用し、ロボット開発における最大の課題である「学習データの不足」をソフトウェアパイプラインによって解決することを目指している。同時に、同社の自動車工場に導入された人型ロボットが精密組み立て作業で98%の成功率を達成したことも報じられており、実用化に向けた動きが加速している。
■1つのフレームワークで4つの生成タスクを処理
U0の核心となる技術的特徴は、リアルなロボット学習データを生成する「エンボディド生成(embodied generation)」を、独立した専門システムではなく、1つのマルチモーダル自己回帰モデルとして統合した点にある。シャオミの技術論文によると、このモデルは「テキストからの画像生成」「画像編集」「エンボディド環境生成」「エンボディド・トランスファー(動作転移)」「エンボディド動画生成」という関連するタスクを共同で最適化する。
これらロボット特有の機能が連携してデータパイプラインとして機能する。例えば「エンボディド環境生成」は、テキストの説明からデスクトップ、キッチン、倉庫などの初期シーンをマルチビューで作成する。「エンボディド・トランスファー」は、実世界で収集したロボットの動作軌道を、アームのポーズや動きを維持したまま、照明や背景、テーブルの素材、対象オブジェクトを変更した新しい環境へと移植する。これにより、エンジニアはハードウェアを再配置することなく、1つの実世界デモから無数のバリエーションデータを生成できるようになる。
■推論を82.9倍高速化する「FlashAR+」
380億パラメータのモデルで1024×1024解像度の画像を生成する場合、通常は極めて膨大な時間がかかる。シャオミの論文によると、従来は1枚の画像生成に450.77秒を要していた。これでは実用的な学習バッチを揃えるのに数週間かかってしまう。
この課題を解決するため、シャオミは対角並列デコーディングとキャッシュスケジューリングを組み合わせた独自の推論加速技術「FlashAR+」を導入した。自己回帰生成の構造を利用して複数トークンを並列処理し、冗長な計算を削減することで、1024×1024画像の生成時間を450.77秒から5.44秒へと短縮。82.9倍の高速化を実現したという。これにより、これまで約1週間を要していたデータ生成がわずか数時間で完了するようになる。
■外部モデルの性能向上で示された実用性
U0が生成したデータの有用性は、外部のロボット制御ポリシーを用いた検証で示されている。シャオミの論文によると、Physical Intelligence社が一般公開しているロボット制御ポリシー「π0.5」(2025年モデル)の学習にU0生成データを追加したところ、実世界の操作タスクにおける分布外(out-of-distribution)環境での成功率が36.9%から63.2%へと、26ポイント以上向上したという。これは、照明や背景、オブジェクトの質感などが訓練時と異なる、従来のロボットが最も苦手とする状況での適応力が向上したことを意味する。
ただし、留意すべき点もある。検証に用いられた「π0.5」は2世代前のモデルであり、2026年4月にリリースされた最新の「π0.7」などのより強力なベースラインモデルに対して、U0のデータがどの程度効果を発揮するかは独立した検証が行われていない。また、FlashAR+による高速化の数値もシャオミの論文内での自己申告であり、第三者によるベンチマークテストは実施されていない。一方で、グローバルな評価指標である「WorldArena」において、U0が「UNIS」というコードネームで匿名投稿され、126件の応募の中から1位を獲得した実績は外部コンソーシアムによって確認されている。
■シミュレーションと現実のギャップ(Sim-to-Real)を埋める新アプローチ
ロボット工学において、シミュレーション環境で訓練したポリシーを実機に適用する際、微小なモデリング誤差が累積して失敗を招く「Sim-to-Realギャップ」は長年の課題である。従来の対策としては、摩擦や照明などのパラメータをランダムに変更して訓練する「ドメインランダム化」が主流だったが、これはポリシーを保守的にするアプローチだった。
これに対し、U0のような世界基盤モデルは、実世界のデータ分布に極めて近いフォトリアルな合成データを生成することで、ギャップそのものを最小限に抑えるというアプローチをとる。生成された画像が実世界の観察データと区別がつかないレベルであれば、それを用いて訓練されたポリシーは劣化することなく実機に移行できる。π0.5での成功率向上は、このアプローチの有効性を示唆している。
■研究室に留まらない、自動車工場での実証実績
シャオミの取り組みが単なる研究発表と異なるのは、同社が実際に稼働する生産工場を持ち、そこでロボットの改良を進めている点にある。TechNodeの報道によると、U0の発表前日である2026年7月15日、シャオミの人型ロボットが自動車工場内のセルフタッピングナット装着ステーションにおいて、98%の成功率を達成したことが明らかになった。これは4ヶ月前の試験開始時の90.2%から向上しており、人間の作業員の適格基準まであと1ポイントに迫る数値である。
同社はさらに、センターコンソールのサイドパネル仕分けや、部品箱の折りたたみ・リサイクルといった新たな工場タスクも導入し、それぞれ90%の成功率に達している。仕分けタスクは、自動車製造において人型ロボットが柔軟なワークピースに対して長時間連続操業を行った初の確認事例とされている。
■競争環境と地政学的・セキュリティ上のリスク
物理AIおよびロボット基盤モデルの分野は急速に進化している。2026年4月にリリースされたPhysical Intelligenceの「π0.7」や、Googleの「Gemini Robotics」、NVIDIAがCES 2026で発表した「Isaac GR00T N1.6」などが競合として存在する。ただし、U0はロボットの直接的な制御ポリシーではなく「データ生成モデル」であるため、これらと直接競合するわけではない。むしろ、あらゆるポリシーモデルの訓練を効率化するインフラ層に位置づけられる。
シャオミはU0のコードとモデルウェイトを完全にオープンソースとして公開している。開発者がU0のウェイトをダウンロードし、自社(米国や欧州など)のインフラ上でローカル実行(セルフホスト)する場合、データがシャオミのサーバーを経由することはないため、API経由のデータ流出リスクは回避できる。
しかし、シャオミは北京に本社を置く企業であり、中国の国家情報法(2017年制定)やデータ安全法(2021年制定)の適用を受ける。これらの法律は、中国企業に対して政府のインテリジェンス活動への協力を義務付けている。そのため、U0のウェイト自体に脆弱性やバックドアがないかなど、サプライチェーン上のリスクは残る。米国では2026年3月に、中国企業製の地上ロボットの政府調達を禁止する「米国セキュリティロボット法案」が提出されるなど、規制の動きも強まっている。機密データを扱う環境や重要インフラ分野のインテグレーターは、U0の導入にあたって他の中国製技術と同様の厳格なセキュリティレビューを行うことが推奨される。
■注目ポイントQ&A
●U0は従来のドメインランダム化と何が違うのですか?
従来のドメインランダム化は、シミュレーション内の摩擦や照明などのパラメータをランダムに変更することで、ロボットの制御ポリシーを頑健(ロバスト)にする手法でした。これに対し、U0は実世界のロボットの動作軌道をベースに、アームの動きや物体との接触関係を維持したまま、背景や照明、素材などをフォトリアルに変化させた合成データを生成します。これにより、実世界の視覚分布に極めて近い高品質な学習データを大量に用意することが可能になります。
●FlashAR+とはどのような技術ですか?
FlashAR+は、シャオミが開発した自己回帰型画像生成のための推論加速技術です。「対角並列デコーディング」によって複数のトークンを同時に生成し、さらに「キャッシュスケジューリング」によって重複する計算を削減します。これにより、1024×1024ピクセルの画像生成時間を450.77秒から5.44秒へと短縮し、約82.9倍の高速化を実現しました。データ生成のボトルネックを解消し、開発サイクルを大幅に短縮します。
●オープンソース化されたU0を使用する場合でも、中国のデータ関連法の影響を受けますか?
利用方法によって異なります。U0のモデルウェイトをダウンロードし、自社が管理する米国や欧州などのインフラでセルフホスト(ローカル実行)する場合、データは自社サーバー内で処理されるため、API経由で中国側にデータが送信されるリスクは回避できます。ただし、モデルの開発元であるシャオミは中国の国家情報法などの適用を受けるため、モデルのウェイト自体に対する独立したセキュリティ監査が行われていないというサプライチェーン上のリスクは残ります。機密性の高い環境での利用には注意が必要です。
●工場での成功率98%は、人型ロボットが実用段階に達したことを意味しますか?
この98%という数値は、自動車工場内の「セルフタッピングナット装着」という特定の1つのステーションにおいて、4ヶ月間の調整を経て達成されたものです。特定の制御された環境下での優れた成果ですが、あらゆる工場タスクに即座に対応できるわけではありません。新規に導入された他のタスク(仕分けなど)の成功率は90%に留まっており、業界アナリストは人型ロボット分野全体がまだ「GPT-2.5の段階(実用的な能力はあるが、完全な普及に必要な99%以上の信頼性には達していない段階)」にあると評価しています。
元記事: Xiaomi Open-Sources Robotics World Model Behind an 82× Data Generation Speedup
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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