BIS、AI投資ブームの資金構造に警鐘 負債と循環的資金調達が連鎖リスクを増幅か

2026年7月16日 18:50

印刷

記事提供元:Tech Times

Photo by Wolfgang Hasselmann on Unsplash

Photo by Wolfgang Hasselmann on Unsplash[写真拡大]

国際決済銀行(BIS)は2026年7月15日、現在のAIインフラ投資が、開始から3年という期間でみれば、過去の技術投資ブームを上回る軌道にあるとする研究を公表した。研究は、負債や循環的な資金調達、簿外のリース契約が、市場反転時の影響をプライベートクレジットや保険、国債市場へ波及させる可能性があると指摘している。

同日にはIBM株が1日の下落として過去最大を記録した。企業のIT予算が従来型のソフトウェアやサービスからAIインフラへ振り向けられている状況は、BISが警告する波及経路がすでに現れ始めている可能性を示す。ただし、BIS自身も、AIブームによるマクロ経済・金融安定上のリスクは現時点では「中程度に見える」としている。

■AIインフラ投資は過去の技術ブームを上回る可能性

5大ハイパースケーラーであるAmazon、Alphabet、Microsoft、Meta、Oracleは、2026年に約7250億ドル(約117兆4500億円、1ドル=162円換算)の設備投資を計画しており、その約75%がGPUクラスター、データセンター建設、電力システム、冷却設備などのAI専用インフラに向けられる。

Epoch AIとGoldman Sachsが追跡し、2026年第1四半期の決算で確認したこの金額は、2025年の約4430億ドル(約71兆7700億円)から約64%増加する計算だ。

BISが6月28日に公表した『年次経済報告書(Annual Economic Report)』によると、米国のGDPの約1%に相当する現在のAI関連投資は、2010年代半ばの米国のシェールブームと同程度で、1990年代のドットコムブームにおけるIT投資増加幅の約半分に達している。

ただし、これは現在の投資額に基づく比較である。BIS報告書が引用するアナリスト予測では、データセンター支出だけで今後5年間にGDP比0.8~1.3%へ拡大する可能性がある。その場合、1980年代に日本経済を不安定化させ、完全な調整に10年以上を要した商業用不動産ブームの規模に近づく可能性がある。

BISのエコノミスト、プーリチャイ・ルンチャルーンキットクン(Phurichai Rungcharoenkitkul)氏が執筆した新たな研究は、さらに踏み込んだ分析を示している。ブーム前の底を基準にすると、現在のAIインフラ投資は、開始からわずか3年で、過去のあらゆる技術投資ブームを上回る軌道にあるという。

比較対象には、1830年代の運河投資熱、1840年代の英国鉄道ブーム、1920年代の電化投資、1990年代のドットコムブームが含まれる。

同研究は、コンテスト理論に基づくモデルを使ってこうした現象を説明している。最終的に少数の企業しか市場を支配できない状況では、業界全体が過剰投資していると分かっていても、各社にとっては投資を積み増すことが合理的になり得る。取り残されるコストが、設備を過剰に構築するコストを上回るためだ。

モデルによると、競争圧力によって設備投資が増えるほど、業界全体の純経済余剰は減少し、厳しいシナリオではマイナスに転じる可能性がある。

ルンチャルーンキットクン氏は、「ブームを過剰な設備構築へ導く競争は、そのブームを崩壊へと転じさせる脆弱な資金調達を選び出す要因でもある」と要約している。

■キャッシュフローの伸びを上回る設備投資

現在のAIブームを過去の技術ブームと区別するのは、投資額の大きさだけではない。その背後にある資金調達構造も異なっている。

5大ハイパースケーラーは従来、豊富なフリーキャッシュフローを生み、負債が少なく、外部資金をほとんど必要としない資本負担の軽い事業の典型とされてきた。しかし、この構図は崩れつつある。

Epoch AIが6月16日に公表したSEC提出書類の分析によると、5社の設備投資は年率約70%で増加している一方、営業キャッシュフローの伸びは年率約23%にとどまる。

Epoch AIは6月、5社合計のフリーキャッシュフローが2026年第3四半期までにゼロに達すると予測した。これは、5社が事業活動から得るキャッシュの全額、あるいはそれ以上を設備投資に充てる状態を意味する。

この差を埋めるため、業界は債券市場を利用するようになった。ハイパースケーラーによる債券の総発行額は2025年に1000億ドル(約16兆2000億円)を超え、その大半は償還まで5年以上となっている。

AI関連収益が想定された時期までに実現しなくても、複数年にわたる利払い義務は残る。

資産運用会社PIMCOは、2026~2027年には設備投資がハイパースケーラーの営業キャッシュフローの約94%を占めると予測している。株主への還元に回る前に、事業活動から得られるキャッシュのほぼ全額がインフラへ再投資される計算だ。

■外部の基準点を持たない「循環的資金調達」

BISの研究が負債以上に懸念しているのは、過去の技術ブームには前例がないとするAIエコシステム特有の資金調達構造だ。外部の独立した基準点を持たない、閉じた評価ループを生む「循環的資金調達(circular financing)」である。

仕組みは次のようなものだ。ハイパースケーラーがAI開発企業に出資し、そのAI企業が同じハイパースケーラーから複数年にわたって計算資源やチップを購入する契約を結ぶ。

ハイパースケーラーはAI企業による購入を売上高として計上し、AI企業はハイパースケーラーから受けた出資金を、その支払いに充てる。その結果、AI分野で報告される「売上高」の相当部分が、1~2段階の取引をさかのぼると、同じエコシステム内から出た資金に行き着く構造が生じる。

これは関連当事者取引の会計処理だけの問題ではない。相互出資と相互契約によって、ある企業の評価が他の企業の評価にも影響する連鎖が形成されるからだ。

いずれかの参加者に対する市場心理が変化した場合、価格の見直しはその企業だけにとどまらない。ループ内の他の参加者が抱える株式、信用、売上高に関するエクスポージャーへ同時に波及する可能性がある。

2007年に米国の住宅市場が調整局面へ入った際にも、ショックは循環的な構造を通じて広がった。住宅ローンの組成会社がリスクを証券化会社に売り、証券化会社が投資家へ転売し、その投資家が住宅ローン組成会社への資金供給にも関わっていた。

BISの年次経済報告書がAI分野の「民間契約の複雑なネットワーク」と呼ぶ構造は、これと同様の形を持っている。BISは、こうした取引の条件は「通常、開示が不十分であり、同一資産が複数回にわたって担保に差し入れられるリスクがある」としている。

2026年の決算開示は、この仕組みの具体例を示している。Nvidiaは2026年第1四半期にCoreWeave株を20億ドル(約3240億円)追加取得した。一方、CoreWeaveは複数世代のNvidia製GPUを採用する契約を結んだ。

CoreWeaveの受注残高は、ほぼすべてがハイパースケーラー顧客に由来し、2026年3月時点で994億ドル(約16兆1000億円)に達した。ただし同社は同じ時点で約250億ドル(約4兆500億円)の負債を抱えている。この負債は、同じハイパースケーラー顧客向けのデータセンター容量を整備するための借り入れだ。

アンカーとなるハイパースケーラーが支出を減らさない間は、この財務構造に大きな問題は見えにくい。しかし、ハイパースケーラーが支出を減速させれば、受注残高、売上高、データセンターの担保価値が同時に見直されることになる。

■バランスシートに表れにくい6620億ドルの契約

債券発行が目に見えるリスクだとすれば、BISがさらに懸念しているのは、通常の企業開示には十分に表れない資金調達である。

BISの2026年3月の『四半期レビュー』は、これを「シャドーボローイング(shadow borrowing)」と表現している。

典型的な仕組みでは、特別目的会社(SPV)または合弁会社がデータセンター資産を取得・開発し、非公開市場で負債を調達する。ハイパースケーラーは、その施設について長期のオペレーティングリース契約を結ぶ。

この構造では、支払いは損益計算書上の営業費用として扱われ、通常の借入金と同じ形ではバランスシートに表れない。経済的には長期の資金負担を引き受けているが、書類上はデータセンター容量を借りる契約に見える。

Moody’sは、ハイパースケーラーが合計約6620億ドル(約107兆2400億円)の、契約済みだがまだ開始されていないデータセンターリース契約を抱えていると推計した。これは、同じ企業群がバランスシート上で計上している負債の合計を上回る。

BIS Bulletin No.120にまとめられたデータによると、AI関連企業向けプライベートクレジットの新規融資額は2025年だけで400億ドル(約6兆4800億円)を超えた。

AI企業向けプライベートクレジットの残高は、インフラ拡張のペースによっては、2030年までに3000億~6000億ドル(約48兆6000億~97兆2000億円)に達する可能性があるとBISは推計している。

BISが懸念しているのは、負債の存在そのものだけではない。その多くが、銀行と同様の自己資本規制や正式な破綻処理制度を持たないヘッジファンド、プライベートクレジットファンド、保険会社などを通じて供給されている点だ。

BISのパブロ・エルナンデス・デ・コス(Pablo Hernández de Cos)総支配人は、この警告には「緊急性」があると述べ、その理由を「現在は負債が高水準にあり、それがノンバンク金融仲介機関を通じて資金調達されている」ためだと説明した。

■AI関連のショックはどのように波及するのか

2026年7月15日のIBM株の下落は、BISが示した波及経路の第一段階に当たる。企業顧客がAIインフラ投資のため、IBMのソフトウェアやサービスに充てる予算を削減した。

これは生産性向上による予算拡大ではなく、ある支出が別の支出を押し出す「クラウディングアウト効果」だ。AI支出は、IT予算全体の拡大を正当化できるだけの効率向上をもたらすより早く、既存の企業IT予算を取り込んでいる。

AI関連収益が現在の企業評価に織り込まれた利益期待に届かなければ、BISの年次経済報告書が示す波及経路は次のようになる。

まず、ハイパースケーラーが積極的な設備投資を減速または停止する。続いて、エンジニアリング・建設請負会社、半導体メーカー、AI開発企業、プライベートクレジットの貸し手など、サプライチェーン全体の企業が同時に売上高の減少に直面する。

BISは、エンジニアリング・建設請負会社のバランスシートは「相対的に弱く」、急激な市場反転に耐える余力が小さいと指摘している。

こうした企業に融資しているプライベートクレジットファンドでは、保有資産の価格見直しが始まる。資金供給の多くがノンバンク経由であるため、価格調整は通常の銀行危機より速く進む可能性がある。

連鎖の末端にいるヘッジファンドや直接融資ファンドには、銀行に対する中央銀行の常設的な流動性供給制度に相当する支援がない。これらのファンドが解約圧力に直面すると、まず換金しやすい資産を売却する。その結果、AI分野で始まったショックが無関係な債券・株式市場へ広がる可能性がある。

BISは価格設定の不整合も指摘している。現在、AI企業に対するプライベートクレジットの融資スプレッドは、同程度の非AI企業向け融資とほぼ同じだ。

このスプレッドが実際のリスクを正確に反映しているなら、貸し手はAI企業向け融資を、平均的なプライベートクレジット融資より危険だとはみていないことになる。一方、同じAI企業の株式評価には、平均を大きく上回る将来収益への期待が織り込まれている。

両方の評価が同時に正しいことはあり得ない。貸し手がリスクを過小評価しているか、株式市場がリターンを過大評価しているかのどちらかだ。

■ホルムズ海峡封鎖との複合リスク

BISの警告は、AI投資だけを対象にしたものではない。BISの年次経済報告書は、2026年初めに発生した別の大きなショックとして、2月下旬のイラン紛争開始後に起きたホルムズ海峡の封鎖を取り上げている。

この封鎖によって、世界の原油供給は日量1000万バレル以上減少した。これは1973年の石油禁輸や1979年のイラン革命を上回る供給途絶である。

原油価格は2週間で67%上昇し、取引時間中の高値で1バレル120ドル(約1万9440円)に達した。紛争開始後、世界の総合インフレ率は0.5ポイント上昇した。

さらに、7月12日の米国による攻撃と新たなホルムズ海峡封鎖宣言により、エネルギー情勢は不安定な状態が続いている。

BISが明示的に懸念しているのは、エネルギーとAI投資という2つのリスクの相互作用である。金融市場は、ホルムズ海峡の混乱は一時的であり、AIブームによって現在の株価評価が今後も正当化されるという2つの前提のもとで、全体として堅調に推移している。

BISの金融経済局長代行フランク・スメッツ(Frank Smets)氏は、過去最高水準の政府債務と、債券市場でレバレッジを利用するヘッジファンドの活動が組み合わさり、「新たなソブリン・金融安定性の結び付き」を生み出したと警告している。

この構造によって、従来の枠組みから想定されるよりも頻繁かつ急激に、国債価格が下落する可能性がある。

■強気派が示す反論

BISの見方に全員が同意しているわけではない。反対意見も具体的に検討する必要がある。

Microsoft、Alphabet、Metaなどの主要ハイパースケーラーは、現在も利益を上げている投資適格企業である。全体としては無謀な借り入れに依存するのではなく、稼いだキャッシュの範囲内で投資しているとの見方もある。

Man Groupなどは、大手投資企業全体でみた設備投資のフリーキャッシュフローに対する比率は、依然として1を下回ると指摘している。これは、借り入れを主な原資とする典型的な信用バブルとは異なる。

Nvidiaの直近の四半期売上高は460億ドル(約7兆4500億円)を超え、粗利益率も70%超だった。これは、金融工学ではなく、実際の需要が存在することを示唆する。

GPUのスポットレンタル価格は、2世代前の製品でも上昇している。これは、純粋な投機だけでは生じない物理的な供給不足のシグナルだ。

Nvidiaのジェンスン・フアン(Jensen Huang)CEOは、AIインフラ投資をバブルと表現するのは、自身が「人類史上最大のインフラ構築」と呼ぶ動きを見誤るものだと主張している。

また、運河投資熱との比較は、需要のない商品を運ぶためのインフラと、すでに存在し拡大しているAI需要に対応するインフラの違いを無視しているという。

Bloomberg Intelligenceも、借り手ごとに無視できない違いがあると指摘している。最大手のハイパースケーラーと、CoreWeaveのような規模が小さく高利回り債務を抱える企業では、リスク特性が根本的に異なる。

両者を同一のリスクカテゴリーとして扱えば、実際にレバレッジが集中している場所が見えにくくなる。

BISの報告書自体も不確実性を認めている。

「AIブームによるマクロ経済および金融安定上のリスクは中程度に見えるものの、ブームの持続可能性は、AI企業が高い利益期待を満たせるかにかかっている」

■IBM株の急落が示す予算の「押し出し」

2026年7月15日のIBM株の動きは、過去6カ月に報告書を執筆したBISの分析担当者が利用できなかった新たなデータである。

半導体業界では、従来型メモリよりもウェハー当たり売上高が3~5倍になるとされる広帯域メモリなど、AIアクセラレーター向けメモリへの生産シフトが進んでいる。

IBM株の急落は、こうしたシフトが企業のIT予算を、従来型の業務ソフトウェアやサービスからAI関連支出へ振り替えさせていることを示す、初の大規模かつ定量的な証拠となった。

IBMのアービンド・クリシュナ(Arvind Krishna)CEOは、第2四半期の業績について次のように述べた。

「当社は十分な速度で適応し、行動することができなかった。多数の大型案件が、当社の想定した時期までに成約しなかった」

案件が成約しなかったのは、企業顧客が支出自体をやめたためではない。顧客が予算を別の用途へ振り向けたためだ。

これは、BISが主要リスクとして示す「生産性ギャップ」の第一段階である。AIインフラに向かう資金は、既存の予算のどこかから振り替えられている。

その資金源が既存の企業向けテクノロジーベンダーへの支出だとすれば、現時点のAI投資は、他の生産的なIT投資を補完するのではなく、代替していることになる。

■今後を左右する4つの変数

BISの警告が将来を正確に捉えたものになるか、時期尚早なものになるかは、4つの変数によって決まる。

1つ目は、AI関連売上高が十分な速度で拡大するかだ。

BISの推計によると、現在のインフラコストを持続的に賄うには、業界全体で年間約6000億ドル(約97兆2000億円)以上の実需に基づくエンドユーザー売上高を生み出す必要がある。

個々の作業を対象にした調査では、特定用途で通常20~50%の時間短縮が報告されている。こうした効果が、経済全体で測定できる企業利益の増加につながる必要がある。

2つ目は、減価償却負担が本格化した際の影響だ。

2025~2026年にハイパースケーラーのバランスシートへ計上された資産は、2027~2028年にかけて多額の減価償却費を発生させ始める。

投資家のマイケル・バーリ(Michael Burry)氏らは、実際の経済的耐用年数が2~3年程度のハードウェアに対して、ハイパースケーラーは5~6年の減価償却期間を用いていると主張している。

同氏の分析では、これにより2026~2028年の実質的な減価償却費が合計1760億ドル(約28兆5100億円)少なく見積もられる可能性がある。

この分析が正しければ、投資家が投下資本利益率を評価するために正確な情報を最も必要とする時期に、報告利益が実態より良く見えていることになる。

3つ目は、簿外取引の不透明性に対する規制当局の対応だ。

BISの年次経済報告書は、政策当局に対し、厳格な健全性規制をノンバンク金融仲介機関にも広げるとともに、プライベートクレジットとAI分野の資金調達に関するデータ不足へ対処するよう求めている。

こうした対応が金融ストレスの発生前に行われるか、発生後になるかによって、ショックが増幅される度合いが変わる。

4つ目はエネルギーインフラだ。

BISは、電力供給、半導体不足、送電網への接続の遅れを、金融面の分析だけでは解決できない供給側の制約と位置付けている。

Goldman Sachsは、2030年までにデータセンターが米国の電力需要増加分のほぼ半分を占めると予測している。AIデータセンターはすでに電力価格と投入コストを押し上げており、ホルムズ海峡をめぐる混乱は、商品価格を通じてその圧力をさらに強めている。

投資家、企業のテクノロジー調達担当者、政策立案者がAIへのエクスポージャーを判断するには、BISがAI投資の持続可能性を、根強いインフレ、財政状況の悪化、世界的な金融の脆弱性と並ぶリスクとして扱っていることを理解する必要がある。

これはウォール街の一意見ではない。世界の中央銀行間の協力を促進するBISが示した、金融システム全体に関わる警告である。

AI資金調達の構造的な脆弱性が試される前に、AI関連売上高が十分な規模へ達するかどうか。それが今後3年間を左右する重要な経済問題になる。

■注目ポイントQ&A

●AIにおける循環的資金調達とは何ですか。なぜBISは懸念しているのですか?

循環的資金調達とは、ハイパースケーラーがAI開発企業に出資し、そのAI企業が同じハイパースケーラーから計算資源を購入する契約を結ぶ仕組みです。

その結果、AI分野で計上される売上高の一部をたどると、同じエコシステム内から出た資金に行き着きます。完全に独立した外部顧客から新たな資金が流入していなくても、取引当事者が売上高を計上できる構造になります。

BISの懸念は金額だけでなく、構造そのものにあります。閉じた評価ループの一部で市場心理が悪化すると、段階的な調整ではなく、複数の参加者の評価が同時に見直される可能性があるためです。価格調整を止める独立した外部の基準点がありません。

●AI関連の負債は、テクノロジー分野以外へどのように波及しますか?

BISは3つの経路を示しています。

第1は、銀行と同様の自己資本規制を持たないプライベートクレジットファンドや直接融資ファンドです。これらのファンドが抱えるAI関連の融資残高は約2000億ドル(約32兆4000億円)に増加しており、投資家からの解約を招かずに損失を吸収できる余力が限られています。

第2は、こうしたファンドへ融資枠を提供している銀行です。銀行のバランスシート上にAI企業への直接融資が少なくても、ファンドへの資金供給を通じて間接的なエクスポージャーが生じます。

第3は、ハイパースケーラーのサプライチェーンに属するエンジニアリング・建設請負会社です。これらの企業は財務基盤が弱く、自社の負債を返済するため、ハイパースケーラーによる継続的な設備投資に大きく依存しています。

サプライチェーン上流で設備投資が縮小すると、3つの経路すべてで同時に借り換え圧力が生じる可能性があります。

●AIブームが持続可能であるためには何が必要ですか?

BISの推計では、現在のインフラコストを持続的に賄うため、AI業界は年間約6000億ドル(約97兆2000億円)以上の実需に基づくエンドユーザー売上高を生み出す必要があります。これは、現在のAI専用製品・サービスによる売上高を大幅に上回る数字です。

個々の作業を対象とした研究では、特定用途で20~50%の生産性向上が報告されています。一方、こうした効果は、経済全体で測定可能なGDPや生産性の改善にはまだ十分に結び付いていません。

2027~2028年に導入済み資産の減価償却負担が利益を圧迫する前に、効率向上が企業の収益性へ反映され、継続的な設備投資を正当化する必要があります。

●主要なAIクラウドサービスに依存している企業は、何を確認すべきですか?

BISの警告は、AI市場の差し迫った崩壊を予測するものではありません。主要ハイパースケーラーは現在も利益を上げている投資適格企業です。

一方、BISはAIインフラの資金調達を金融安定上の重要な監視対象に位置付けています。

企業の調達担当者は、重要なワークロードが単一のAIクラウド事業者に集中していないか確認する必要があります。また、事業者の価格やサービス提供能力が大きく変化した場合に、契約上どのような保護があるかを把握しておくことも重要です。

主要なAIインフラ事業者の四半期決算を確認することも有効です。IBMの事例が示すように、AI設備投資による既存IT予算のクラウディングアウトは、急速かつ大規模に表面化する可能性があるためです。

BISがAIインフラ金融を金融安定上の監視対象に加えたことで、規制当局はこれらの動きを、住宅ローン市場のレバレッジや政府債務の脆弱性と同様の観点から注視するようになります。

これは新しく、重要な変化です。AIブームが最終的に期待された生産性向上を実現するかどうかにかかわらず、企業が考慮すべきリスクの構図はすでに変わっています。

元記事: AI Boom Outgrows Every Tech Bubble in History, BIS Systemic Risk Study Finds

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

関連キーワード

関連記事