Gemini 3.5 Pro、7月17日リリースか――DeepSeek V4正式版と同日衝突、開発者は7月24日のAPI移行期限に要警戒

2026年7月9日 18:55

印刷

記事提供元:Tech Times

Google gemini (google.com)

Google gemini (google.com)[写真拡大]

2026年7月、AIモデル界における3つの大きなイベントが同じ週に重なる見通しだ。Google DeepMindが「Gemini 3.5 Pro」の一般提供を7月17日に予定していると報じられる一方、同日にはDeepSeekも「V4」ファミリーの正式版をリリースする計画だという。さらに、DeepSeekのAPIを本番環境で運用している開発者にとっては、旧エイリアスが廃止される7月24日(日本時間7月25日未明)が実質的な最重要期限となる。

■Googleがアーキテクチャを破棄し、ゼロから再構築した理由

Gemini 3.5 Proは当初、2026年6月にリリースされる予定だった。Google I/Oでスンダー・ピチャイCEOが「来月まで待ってほしい」と発言したものの、その約束は果たされなかった。この遅延と同時期に、Alphabetの時価総額を揺るがす研究者の離脱ドミノが発生した。

Geminiの共同リードであり、現在のLLMの基礎となった2017年の論文「Attention Is All You Need」の共同執筆者であるノーム・シャジール氏が6月18日にOpenAIへの移籍を発表。さらに翌日には、AlphaFoldの開発者であるノーベル賞受賞者のジョン・ジャンパー氏がAnthropicへの移籍を発表した。これらの離脱により、Alphabetの株価は5%急落し、約2250億ドル(約36兆6750億円、1ドル=163円換算)の市場価値が失われた。

しかし、より驚くべきは、Google DeepMindが既存のGemini 2.5 Proベースモデルを完全に放棄し、まったく新しい事前学習サイクルをゼロから実行したと報じられたことだ。その理由は、数学的推論、スケーラブル・ベクター・グラフィックス(SVG)のシーン生成、そして全体的な画像品質という3つの性能ギャップを、既存のアーキテクチャでは埋められなかったためとされている。段階的な微調整(ファインチューニング)では限界に達したため、Googleは数億ドル(数百億円)のコストと数ヶ月のGPU時間を要するゼロからの再学習という道を選択した。

再構築されたモデルは、Gemini 2.5 Proの2倍となる200万トークンのコンテキストウィンドウを備え、多段階の論理的思考を行う「Deep Think推論レイヤー」や、複雑なコーディングやツール利用タスクを連携させる自律的ワークフロー機能を搭載していると報じられている。ただし、これらは第三者の報道やリークに基づく情報であり、Googleの公式ドキュメントによるものではない。2026年7月7日時点で、公開されているGemini APIには「gemini-3.5-flash」と「gemini-3.1-pro-preview」のみがリストされており、3.5 Proの公式発表や価格、ベンチマークは公開されていない。

■「200万トークン」の真意と、そこに潜む課題

コンテキストウィンドウとは、1回の推論パスで処理できる入力と出力の合計トークン数である。200万トークンであれば、1回プロンプトを投げるだけで約150万語を処理できる。これは大規模なコードベース全体や、1年分の会議の文字起こし、複数巻に及ぶ研究データセットを一度に処理できることを意味し、競合に対する大きな技術的アドバンテージとなる。

しかし、技術的な複雑さを考慮する必要がある。TransformerのAttention(注意機構)はシーケンス長に対して二次関数的にスケールするため、200万トークンの処理には10万トークン処理時の数倍どころではない膨大な計算量が必要となる。また、スタンフォード大学などの研究では、非常に長いコンテキストの中央50%に位置する情報の検索精度が低下する「Lost in the Middle(中央での消失)」現象が指摘されている。モデルが技術的に200万トークンを受け入れられることと、その全域にわたって正確に情報を抽出・推論できることは別問題であり、独立した評価機関による検証が行われるまでは、この数値はあくまで「理論上の最大値」として捉えるべきである。

■DeepSeek V4:安価で高性能、だが無視できない法的リスク

DeepSeek V4-Proは、OpenAIがGPT-5.5をリリースしたのと同日の2026年4月24日にプレビュー版が公開された。このモデルはMixture-of-Experts(MoE)アーキテクチャを採用しており、総パラメータ数1.6兆のうち、トークンごとに最適な49億パラメータのみをアクティブにすることで、運用コストを劇的に抑えている。さらに軽量なV4-Flashも用意されている。

価格面では、V4-Proの出力トークン100万個あたり0.87ドル(約142円)という設定は、Claude Opus 4.7の約25ドル(約4075円)やGPT-5.5の約30ドル(約4890円)と比較して圧倒的に安価である。しかし、採用にあたっては以下の4つの側面を考慮する必要がある。

第一に、独立したベンチマークでの性能差だ。yage.aiラボが実施した汚染のない独立ベンチマーク「DeepSWE」において、GPT-5.5が70%、Claude Opus 4.7が54%のスコアを記録したのに対し、DeepSeek V4-Proは8%にとどまった。また、V4はテキスト専用であり、マルチモーダル対応(音声・動画・画像)はしていない。

第二に、中国に本社を置く企業が発表するベンチマークスコアは、独立した追試による検証が必要である。独立モデル追跡サービス「BenchLM」の検証済みリーダーボードでは、V4-Proは33モデル中29位にランクされており、同サービスの基準では「フロンティアモデルではない」と明示的に分類されている。

第三に、エコシステム全体のコストだ。DeepSeek V4は米国の輸出規制対象外であるHuawei Ascend 950チップ上で動作している。また、7月の正式リリースに伴い、北京時間の営業時間内(午前9時〜12時、午後2時〜6時)のAPIコールには、基本料金の2倍のピークタイム料金が適用される。

第四に、これが最も重要な法的リスクだが、DeepSeekは中国企業の杭州深言人工智能科技(Hangzhou DeepSeek Artificial Intelligence Co., Ltd.)によって運営されている。中国の国家情報法(2017年)第7条は、いかなる組織や市民も国家の情報活動を「支持し、これに協力し、これと協調しなければならない」と定めており、これに例外や裁判所の命令は不要である。この義務は、サーバーの物理的な場所や企業のプライバシーポリシー、契約内容に関わらず適用される。

セキュリティ企業のFeroot SecurityやNowSecure、Wiz Researchなどの調査により、過去のDeepSeek製品において、ユーザーデータが中国の国家関連企業に送信されていた形跡や、暗号化の不備、データベースの露出などが報告されている。ただし、MITライセンスで提供されているオープンウェイトモデルを自社インフラでセルフホスト(vLLMなどを利用)すれば、プロンプトが中国のサーバーに送信されることはなくなり、データ流出のリスクは回避できる。規制の厳しい業界や機密データを扱う場合は、ホスト型APIではなくセルフホストを選択するのが賢明だ。

■DeepSeek APIの移行:すでに迫っているデッドライン

7月17日に何が発表されるかに関わらず、DeepSeekのホスト型APIを利用しているすべての開発チームは、2026年7月24日15:59 UTC(日本時間7月25日午前0時59分)までにコードを更新する必要がある。この時刻を過ぎると、従来の「deepseek-chat」および「deepseek-reasoner」のエイリアスはエラーを返すようになる。移行期間の延長は発表されていない。

移行自体は、モデルパラメータを「deepseek-v4-pro」または「deepseek-v4-flash」に書き換えるだけの簡単な作業だが、注意点がある。「deepseek-reasoner」は、V4-Proではなく「V4-Flash(思考モード)」にマッピングされる。高度な推論タスクに旧reasonerを使用していた場合、そのまま移行すると性能にミスマッチが生じる可能性があるため、明示的にV4-Proへの移行を検討すべきである。

■Grok 4.5:興味深いアーキテクチャ、ただし第三者による検証は未実施

xAIがSpaceXに統合されて誕生したSpaceXAIは、2026年6月28日、1.5兆パラメータのV9基盤モデルをベースにした「Grok 4.5」がSpaceXおよびTesla内でプライベートベータに入ったことを確認した。7月6日にはGrokのWeb UI上に「Grok 4.5」を示唆する文字列が確認されており、一般公開が近いとみられている。

イーロン・マスク氏は同モデルの内部性能について「Claude Opusに近い、あるいはそれを超える」と主張しているが、これは身内のエンジニアによる自己評価にすぎない。SWE-benchやLMArenaなどの主要な独立ベンチマークにおいて、Grok 4.5の公開スコアはまだ存在しておらず、その実力には不確実性が残る。

■この激突が示唆する、AI競争の現状

同じ週に3つの主要なAIイベントが重なることは偶然ではない。これはAI開発のスピードが極めて加速していることを示している。Googleが数億ドルを投じた事前学習を破棄してゼロから再構築するという賭けに出たのも、競合モデルが設定した高いハードルを意識してのことだろう。2026年後半にAI技術スタックを選択またはアップグレードする開発者にとって、意思決定の猶予は数四半期単位ではなく、数日単位にまで圧縮されている。

■注目ポイントQ&A

●Gemini 3.5 Proはいつリリースされますか?

複数の海外メディア(Business InsiderやGeeky Gadgetsなど)は、2026年7月17日をターゲット日程として報じています。ただし、Googleからの公式な発表やAPIドキュメントの更新は現時点で行われておらず、確定した日程ではありません。

●DeepSeek APIの移行期限はいつですか?

2026年7月24日15:59 UTC(日本時間7月25日午前0時59分)です。この時刻を過ぎると、従来の「deepseek-chat」および「deepseek-reasoner」のエイリアスはエラーを返すようになります。延長の予定はないため、それまでに「deepseek-v4-pro」または「deepseek-v4-flash」への移行コード書き換えが必要です。

●DeepSeek V4は企業利用において安全ですか?

ホスト型のクラウドAPIを利用する場合、データが中国のサーバーを経由するため、中国の国家情報法に基づく政府へのデータ開示リスクが存在します。機密データや規制の厳しい業界で利用する場合は、MITライセンスで提供されているオープンウェイト版をダウンロードし、自社のセキュアなインフラでセルフホスト(ローカル運用)することを推奨します。

●200万トークンのコンテキストウィンドウとはどのようなものですか?

約150万語に相当し、大規模なソースコード全体や1年分の会議録を一度にプロンプトに入力できます。ただし、コンテキストが長くなるほど、中央付近の情報に対するモデルの検索・推論精度が低下する現象(Lost in the Middle)が指摘されているため、実際の業務でどの程度信頼して使えるかは独立した検証を待つ必要があります。

元記事: Gemini 3.5 Pro Targets July 17 as DeepSeek’s July 24 Deadline Hits Developers Now

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

関連キーワード

関連記事