NetflixのWBD買収で渦巻く思惑とは?

2025年12月12日 13:55

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●NetflixがWBD買収で合意

 米動画配信大手のNetflixが5日、米メディア大手のワーナー・ブラザーズ・ディスカバリー(WBD)のテレビ・映画スタジオとストリーミング部門を720億ドル(約11兆1160億円)で買収することで合意したと発表した。

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 報道を受けて、WBDの株価は約3%上昇したが、Netflixは約0.2%下落した。

 3億人を超える加入者を持つNetflixと、1億3000万人の加入者を持つWBDの配信事業「HBOストリーミング・ネットワーク」が一つになれば、巨大なプラットフォームとなる。

 Netflixに横槍を入れる動きもあり、今後のWBDを巡る攻防に注目が集まる。

●トランプ政権も参戦!?慌ただしいWBD買収劇

 8日には、米メディア大手のパラマウント・スカイダンスがWBDに対し、1株当たり30ドルの1084億ドル(約11兆6800億円)で敵対的買収を提案した。Netflixの1株当たり28ドルを超えている。

 この30ドルの提案は、トランプ米大統領の娘婿クシュナー氏が経営する投資会社アフィニティパートナーズや複数の中東ファンドからの資金調達も含まれている。

 トランプ氏は、Netflixによる買収に対して、サブスク型ビデオオンデマンド(SVOD)市場の反トラスト法(独占禁止法)に抵触すると懸念を表明し、買収に介入することを示唆している。

 パラマウント・スカイダンスのラリー・エリソン氏は、共和党の最大級の献金者でトランプ氏とも強い繋がりを持つことで知られている。

●結論は2026年に!?Netflixとパラマウント買収の違いは?

 Netflixは1年半以内に取引を完了したいとしているが、具体的な買収による料金プランや統合の形については明言を避けている。

 Netflixからすれば、WBDのマトリックスやバットマン・スーパーマン・ハリーポッターなど、不朽の名作シリーズのコンテンツに加え、強固な製作能力とスタジオが魅力で、自作の制作力を上げられる。

 一方で、劇場公開作品の減少や短期化を懸念する声もあり、ハリウッド内部では収益減少、労働環境の悪化、雇用喪失への不安の声も大きい。

 一方で、会社そのものの買収を目論むパラマウント側にとってはWBD買収により、ケーブル・テレビネットワーク部門なども幅広く取り込み、流通網の拡大・グローバル化の強化を狙う。

 こちらは劇場公開の強化で映画産業への回帰や、ストリーミングサービスに対抗した総合メディア化を目指しており、Netflixの方針とは真逆とも言える。

 どちらが買収するかで、映画産業・ストリーミング業界の運命が大きく変わるかもしれない。(記事:森泰隆・記事一覧を見る

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