猫にまつわる英語イディオム (20) 猫とネズミの関係から生まれたことわざ2選

2025年9月15日 09:50

印刷

 猫とネズミの組み合わせは、古今東西さまざま寓話やことわざに登場する。前回の「to bell the cat」に続いて、今回もまた、猫とネズミの関係から生まれた英語イディオムを2つ紹介したい。

【こちらも】「猫の首に鈴をつける」 猫にまつわる英語イディオム (19)

■While the Cat’s Away, the Mice Will Play

 「While the cat’s away, the mice will play」とは、直訳すれば「猫がいない隙にネズミが遊ぶ」となるが、その意味もここから類推されるとおりである。

 天敵である猫が姿を消した途端、ネズミたちは巣穴から出てきて好き放題に振る舞う。ここから転じて、権威や監督役が不在のあいだに、人々が規律を緩めて羽目を外すことを比喩的に表すようになった。

 権力者の目が離れたときの人間の本性を皮肉るこの表現は、英語だけのものではない。歴史的には、中世ラテン語のことわざ「Dum felis dormit, mus gaudet et exsi litantro(猫が眠っているとき、ネズミは穴から出て喜ぶ)」に由来する。

 英語では15世紀ごろから用例が確認され、後にシェイクスピアも『ヘンリー五世』の中で用いた。またスペイン語やドイツ語などにも、同様のことわざが存在る。

 日常で言えば、親が留守中に子供が羽目を外す場面や、職場で上司の不在中に部下がサボるといった場面が、このイディオムにぴったりだろう。

 例文
 ・The kids raided the fridge while their parents were out, proving that while the cat’s away, the mice will play.
 (両親の外出中、子供たちは冷蔵庫をあさった。猫がいない隙にネズミは遊ぶ、というわけだ)

■Keep No More Cats Than Will Catch Mice

 このことわざは、直訳すると「ネズミを捕まえるのに必要以上の猫を飼うな」となる。文の形が少し特殊だが、「than」 以下が「the number of cats that will catch mice」の省略形と考えるとわかりやすいだろう。字義的に訳せば、「ネズミを捕まえる猫の数以上の猫を飼うな」である。

 ある農家でネズミに困っている。だから、猫を飼うことにした。しかし猫を何匹も飼えば、ネズミ退治には役立つかもしれないが、今度は猫の餌代や手間が増えるだけで無駄になる。

 このように、ネズミ退治のために飼う猫の数は必要最小限でよいという経験則から生まれたことわざだ。

 現代でも、企業や組織において過剰な人員や設備を抱えることへの戒めとしてよく用いられている。

 例文
 ・The manager cut unnecessary positions, saying they should keep no more cats than will catch mice.
 (管理職は不要なポストを削り、「ネズミを捕る猫以上は飼うな」と言った)(記事:ムロタニハヤト・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事