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相場展望8月4日号 米国株: 決算発表が終了、好材料出尽くし⇒8/1、米国株は総崩れ 日本株: 昨年夏の急落を思い出す流れ、警戒したい
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)7/31、NYダウ▲330ドル安、44,130ドル
2)8/01、NYダウ▲542ドル安、43,588ドル
【前回は】相場展望7月31日号 米国株: 重要イベント (1) 決算発表 (2) トランプ関税合意で、まちまちの動き 日本株: 相場は底堅いものの、投資家の「高所恐怖症」が見受けられる
●2.米国株:4~6月期決算発表が終了、好材料出尽くし⇒8/1、米国株は総崩れ
1)決算発表も終盤、好材料が乏しくなる
・決算発表の内容次第で株価はまちまち
・アマゾン :営業利益予測が市場の期待に届かず。AI支出過剰懸念。
・マイクロソフト:株価+4%上昇。
・ウエスタンデジタル・株価+10.1%上昇、決算が市場予想を上回る。
2)銅価格は乱高下
・銅の価格推移
7/17 551ドル
7/23 581
7/31 435
・トランプ関税50%発言で急騰したが、その後の対象範囲縮小と雇用統計を受けて景気後退観測から急落した。
3)米国株に変調? AIで牽引役のハイテク株に過熱の兆し
・ナスダック総合、ナスダック100、S&P500種株価指数は供に7/28に最高値を付けて以降、反落している。NYダウは7/23の45,010ドルを天井に、8/1に43,588ドルと▲1,422ドル下落。
・8/1、米国主要株価指数はすべて大幅下落した。
NYダウ ▲542ドル安、▲1.23%安
ナスダック総合 ▲472安、 ▲2.23%安
S&P500種株価指数 ▲101安、 ▲1.59%安
・VIX恐怖指数は8/1、20.38と天井圏とみられる20を超え、警戒水準入り示す。
・米国主要株価指数の高値からの推移
直近の最高値 8/1終値 下落幅 下落率
NYダウ 7/23 45,010ドル 43,588 ▲1,422安 ▲3.16%安
ナスダック総合 7/28 21,178 20,650 ▲528安 ▲2.49%安
S&P500 7/28 6,389 6,238 ▲151安 ▲2.36%安
半導体株(SOX) 7/30 5,787 5,527 ▲260安 ▲4.49%安
4)米国経済後退、雇用者は月3.5万人増に低下、インフレ加速、先行き不安が強まる
・米国経済後退を示す要因
・7月ISM製造業景気指数が48.0と、5ヵ月連続で境目の50割れ。市場予想は49.5だった、前月の49.0からも低下。
・工場雇用5年ぶりの低水準。
・先行きを示す新規受注指数は47.1と、6ヵ月連続で50割れ。
・雇用指数は43.4と、前月の45.0から悪化し、2020年7月以来の低水準。短中期の米国経済に不確実性が増し、人員削減が加速している。
・7月雇用統計、雇用者数はわずか7.3万人増で、失業率は4.2%に上昇。予想では7月の雇用者数は11万人増と見込んでいた。ここ3カ月平均の雇用者数は月平均3.5万人増とコロナ禍以来最悪。失業率の予想は4.2%と一致、6月の4.1%からは悪化。
・27週間以上の長期失業者は183万人に増加し、2021年以来の多さになった。
・消費者と企業の支出が減少続く。
・7月雇用統計は、労働市場の急激な悪化を示し、米国連邦準備理事会(FRB)に9月の利下げ再開をうながす可能性が出てきた。
5)カナダへの関税は25⇒35%に引上げ
・米国とカナダは今まで長期にわたり同盟国として足並みをそろえてきた。ところが、トランプ米国大統領となって以来、米国の敵対国のロシア・中国以上に遠い存在に追いやっている。
・関税の25⇒35%への引上げにトランプ氏の姿勢がうかがえる。
・カナダは報復措置発動していないが、その動向に注目が集まっている。米国・カナダ経済は一体化して運営されてきた。自動車・石油・食品などで米国はカナダに依存してきた。それだけに、米国の物価上昇(インフレ)への影響が懸念される。
6)4~6月期決算発表が終了、好材料出尽くし⇒8/1、米国株は総崩れ⇒警戒発動
●3.米国・雇用統計+7.3万人増、市場予想を下回る(Money world)
●4.米国6月個人消費支出(PCE)価格指数は前年比+2.6%上昇、前月+2.4%から加速(ロイター)
1)変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数は前年比+2.8%、前月比+0.2%。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)7/31、上海総合▲42安、3,573
2)8/01、上海総合▲13安、3,559
●2.中国の製造業活動、予想外の悪化、輸出減速や内需の低迷を示唆(ブルームバーグ)
1)7月製造業購買担当者指数(PMI)は49.3と、6月の49.7から低下した。
2)建設業とサービス業を対象とする非製造業PMIは50.1と、予想50.2を下回った。6月の50.5からも下回った。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)7/31、日経平均+415円高、41,069円
2)8/01、日経平均▲270円安、40,799円
●2.日本株 : 昨年夏の急落を思い出す流れ、警戒したい
1)日本の政権「弱体化」による「日本売り」に注意
・円相場
・株式相場
・債券相場
・海外投資家は、政権の弱体化はリスクとして嫌って投資を引上げる傾向がある。
2)トランプ関税の輸出立国・日本経済打撃への対策を石破政権は打ち出していない
・石破政権は「日本・米国合意が履行されたことは喜ばしい」と寝ぼけたコメントと、「国内の不安を払拭する必要がある」と、他人事のような発信しかしていない。
・現政権の経済無策の状態が続いている。
3)日銀総裁発言で「円安」進行し150円台⇒米国雇用統計で「円高」
・円相場の推移
7/30 日本時間 147.85円
8/01 日本時間 150.60 :日銀総裁の金利据え置き発言で「円安」
米国時間 147.40 :米国雇用統計を受け米経済後退で「円高」
8/1の1日だけで3.20円もの円高が進行した。
4)業績懸念で半導体関連株に売りが目立つ
・前日の米国半導体株の下落も重荷だった。
・東エレクの決算発表で今期業績予想の下方修正で売りが出た。その波及で、値がさの半導体関連株が下落し、日経平均を下押しした。
8/1で主要な半導体関連銘柄の下落率
東京エレク ▲18.0%安
ディスコ ▲ 3.6
アドバンテスト ▲ 1.3
レーザーテク ▲ 5.8
東エレクの1銘柄だけで日経平均下落の寄与額は▲498円。8/1の日経平均▲270円を上回る下落。
・つまり、8/1の日経平均は▲270円安となったが、東京エレクトロンを除くと+228円高だったたことになる。したがって、値上がり銘柄数が1,300、値下がりは291だった。
5)大幅に売られる銘柄が目立つ展開もあり、警戒感強まる
・1日で大幅下落した銘柄 日付 下落率
シマノ (7309) 7/28 ▲23.33%安
東京エレク(8035) 8/01 ▲18.02
日立 (6501) 8/01 ▲8.81
HOYA (7741) 8/01 ▲8.76
デジタルアーツ (2326) 8/01 ▲12.70
FPG (7148) 8/01 ▲9.95
MTG (7806) 8/01 ▲9.55
6)日経平均はNYダウと比べて「割高感」
・NYダウと日経平均の直近の高値からの下落幅
NYダウ 日経平均
7/23 45,010ドル 7/24 41,826円
8/01 43,588 8/01 40,799
差引 ▲1,422ドル安 差引 ▲1,027円安
・日経平均はNYダウと比べて下落幅が小さく、やや「割高感」がある。
・NYダウは主要株価指数(NYダウ、ナスダック総合、S&P500、半導体株指数)がともに一転して下落に転じており、下落の勢いが強まっている。
・株式相場を支える決算発表が一巡し、好材料が乏しくなる。加えて、決算発表にばらつきが出ており、期待以下の決算であった場合、大きく売られるなど売り圧力に強さが見受けられるようになった。
・日経平均は直近、急伸しただけに、反動安に勢いがつく可能性が高い。
7)今後の日経平均のキーは「海外短期投機筋」の動向
・海外短期投資筋は4月以降、一貫して「買い」スタンスで相場を牽引してきた。PERも7/24に「16.6」と警戒水準まで買われている。そのため彼らが「売り」転換した時は、一気に売ってくるリスクがある。
・4月以降の海外投資家の買い総額は+7兆円程度と大きく膨らんでいる。海外短期投機筋の動向に警戒したい。
8)米国雇用統計を受け、円相場は147円台半ばへ上昇
9)米国雇用統計発表で身構える①株式市場②為替市場⇒昨年夏の大幅下落を思い出す
・2024年夏の株価推移
NYダウ 日経平均
7/17 41,198ドル 7/11 42,224円
8/05 38,703 8/05 31,458
▲2,495ドル安 ▲10,766円安
▲6.05%安 ▲25.49%安
・2025年夏の株価推移、どうなる?
7/23 45,010ドル 7/24 41,826円
8/01 43,588 8/01 40,799
▲1,422ドル安 ▲1,027円安
8/X ? 8/X ?
・米国雇用統計悪化による景気後退懸念を受け、(1)株安(2)金利低下(3)ドル安・円高(4)原油先物安(5)金高となった。
・原油価格の推移(WTI原油先物)
7/31 69.26ドル
8/01 67.27
雇用統計から経済後退を意識し▲1.99ドルと急落
10)トランプ関税のうち、自動車への25%関税を巡って、従来の2.5%と合わせた15%に引下げることで合意しているが、引下げ時期は明らかにされていない。
・今後、医薬品や半導体などの分野別の関税が発動される見通し。米国含む世界経済に及ぼす懸念が高まっている。
●3.JR東日本、運賃を平均+7.1%値上げ、来年3月実施、国土交通省が認可(共同通信)
1)値上げ率は、普通運賃+7.8%、通勤定期+12.0%、通学定期+4.9%。
●4.6月完全失業率は2.5%で横ばい、有効求人倍率1.22倍で前月から低下(ロイター)
●5.トランプ氏、関税措置の大統領令に7/31署名、日本は15%で7日後に発動(NHK)
1)自動車関税25%を15%にするのは不明。
2)トランプ政権は、今年4月、すべての国や地域を対象に一律10%の関税を課した。一方、貿易赤字が大きい国・地域などを対象とした「相互関税」は金融市場の混乱などを背景に発動したその日のうちに7/9までの90日間、一時停止した。その後、一時停止の期限を8/1まで延長していた。
3)メキシコに対する25%関税引上げを90日間延期
4)米国では一段とインフレの懸念が高まる。各国にとっても、世界最大の市場である米国で関税によるコストがさらに増加して経済への打撃が広がることが懸念される。
●6.8月に値上げの食品1,000品目超「調味料」や「乳製品」など(TBS)
1)1年前と比べるとおよそ1.5倍に増えていて、平均の値上げ率は11%となっている。
●7.みずほFG、年間最終利益で初めて1兆円超える見通し(NHK)
●8.東京エレクトロン、2026年3月期営業利益7,270⇒5,700億円に下方修正(ロイター)
1)市場予想7,149億円を大きく下回った。年間配当も1株618⇒485円に引下げた。
2)4~6月期営業利益は前年同期比▲12.7%減の1,446億円だった。
●9.住友電工、2026年3月期営業利益予想を前年比▲8.0%減の2,950億円に上方修正
1)自動車や情報通信事業の需要堅調、米国関税の影響が想定下回る。 (ロイター)
●10.三菱電、4~6月期営業利益が前年同期比+90.9%増の+1,119億円、過去最高(ロイター)
1)2026年3月期営業利益予想は+4,300億円のまま据え置いた。
●11.フジ・メディア、2026年3月期営業損益予想+25⇒▲120億円一転赤字に修正(ロイター)
1)2025年3月期通期の純損益は▲201億円の赤字に転落していた。
●12.日本製鉄、4~6月期純損益▲1,958億円の赤字、USスチール買収に伴う欧州鉄鋼大手との合弁事業解消が影響(FNN)
1)USスチールの買収に伴い、欧州鉄鋼大手アルセロール・ミッタルとの合弁事業を解消したことが影響した。
2)2025年度通期の業績予想は、最終損益がこれまでの+2,000億円の黒字から一転、▲400億円の赤字に下方修正した。
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・3865 北越 業績好調
・6101 ツガミ 業績回復基調
・7731 ニコン 業績好調
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