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相場展望6月2日号 米国株: NYダウは4/8大底から上昇も、5/19に天井を打った可能性 日本株: トランプ関税前の高値越え達成、38,000円の壁は厚く高い
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)5/29、NYダウ+117ドル高、42,215ドル
2)5/30、NYダウ+54ドル高、42,270ドル
【こちらも】相場展望5月29日号 米国株: 米国長期金利が上昇し、危険水準⇒米国株を直撃リスク高まる 日本株: 日経平均は38,000円が壁、ボックス圏相場の上限
●2.米国株 : NYダウは4/8大底からの大幅反転上昇したが、5/19に天井を打った可能性
1)NYダウは4/8大底からの大幅反転上昇したが、5/19に天井を打った可能性
・NYダウの推移
3/25 42,587ドル
4/08 37,645 : ▲4,942ドル安
5/19 42,792 : +5,147ドル高
5/23 41,603 : ▲1,189ドル安
5/27 42,343 : +740ドル高
5/28 42,098 : ▲245ドル安
5/30 42,270 : +172ドル高
・5/19にトランプ高関税発表前の高値3/25を超えた。
・小さいながら5/27⇒5/28⇒5/30に三尊天井を形成した。NYダウの上下のブレ幅も小さくなり収束に向かっている。
↓
・この状況から、NYダウの上値の壁が重くなってきていると見る。
・現状、トランプ関税以前のNYダウに戻っている。しかし、トランプ関税は発動されてたままで、一時的な停止措置にある。米国国際貿易裁判所はトランプ関税のうち「相互関税」を違法と判断した。
・つまり、鉄鋼・アルミニウムの25%関税と、自動車・同部品の25%関税以外は違法となった。違法の判断の理由は、「大規模な政策は『議会承認』が必要」との最高裁判決に基づいている。
・トランプ氏相互関税の影響は、今後10年間で1兆4,000億ドル(約201.6兆円)。バイデン前大統領が発動しようとして違憲と判断され撤回した学生ローン免除は4,000億ドル規模であった。相互関税の規模は、バイデン・学生ローン免除額をはるかに超えている。
・トランプ政権は控訴し、「違法判断の一時停止」となった。最終的には、米国最高裁判所の判断を受けることになるだろう。ただ、最高裁判事は9人であるが、トランプ1次政権時に保守派から登用されたため保守派6人・リベラル派が3人の構成となっている。このため、最高裁の最終判断を待つことになるだろう。
・いずれにしても、トランプ関税による負の影響は存在したままである。にもかかわらず、NYダウがトランプ関税前の水準に戻っていることに、高所恐怖症が再発するリスクが発生することを覚えていきたい。
2)FRBが金利引下げをする条件を満たすまでは、「金利据え置き」を予想
・金利引下げする条件
・消費支出が落ち込む
・失業率が急上昇する
3)米国・中国の対立は再び激化へ
・トランプ氏は5/30、「中国は合意を破った」とSNSに投稿。重要鉱物(レアアース)の取引合意についても破ったと、中国航空機向けエンジンなど輸出制限をかけた。中国人留学生のうち中国共産党関係者のビザ取り消しに向けた姿勢も強めた。
・中国は、米国との関税を巡る取引カードとして「レアアース」の輸出再開を保持し続ける意向のようだ。
・レアアースの9割程度は中国の手中にある。レアアースは半導体、ステルス戦闘機・潜水艦などに大量に使われている。ところが、トランプ氏はレアアースの備蓄をせずに中国と対決したため、在庫が乏しくなっている。トランプ氏は関税で中国攻勢をかけたが、レアアース輸出規制を受け守勢に立たされている。足利幕府が楠木正成討伐に多数の軍勢で千早赤坂城を攻めた様相に近いかもしれない。
●3.米国の鉄鋼関税25⇒50%への引上げに、EUが批判「報復の用意」(ロイター)
●4.米国鉄鋼・アルミニウム関税を50%へ引上げ、日鉄は「偉大なパートナー」で最大2兆円投資=トランプ氏(時事通信)
1)鉄鋼・アルミニウムに対する50%関税を6/4に発動する意向を示した。鉄鋼輸入に課す追加関税を現行の2倍となる50%に引上げるのは、米国鉄鋼産業の振興を狙ったもの。
2)日本製鉄の買収の枠組みなど計画の詳細には踏み込まなかった。
3)トランプ氏5/31、USスチール買収計画「最終合意まだ見ていない」と発言(NHK)
●5.米国最高裁、移民53.2万人の在留資格取り消しを容認(AFPBB)
1)米国最高裁の判事は、トランプ1期政権時の任命で保守派が過半数を占め、今回の在留取り消しの判決にはリベラル派は反対したものの少数派だった。
●6.米国政権、ハーバード大学の留学生受け入れ資格剥奪を一時撤回、30日の猶予(ロイター)
●7.米国GDP、1~3月期前期比▲0.2%減のマイナス経済、企業利益大幅減(ロイター)
1)企業利益は1~3月期で前期比▲1,181億ドル減少。トランプ政権が掲げる関税によるコスト上昇で引き続き圧迫される可能性がある。
2)FRBが物価の目安として注目する、変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア個人消費支出(PCE)価格指数は+3.4%上昇、予想は+3.5%だった。
●8.米国中古住宅販売成約、2022年9月以来の大幅低下、金利高止まり響く(ブルームバーグ)
1)4月の中古住宅販売成約指数は前月比▲6.3%低下、予想は▲1%低下だった。
●9.米国新規失業保険申請+1.4万件増、3年半ぶり高水準、期間も長期化(ロイター)
1)5月の失業率上昇を示唆している可能性がある。
●10.トランプ政権、中国人留学生のビザ取り消しへ、中国共産党との関係も審査(ブルームバーグ)
1)米国国際教育研究所(IIE)によれば、2023~2024年度に米国が受け入れた留学生110万人余りのうち、インドと中国からの留学生が全体の約半分を占めた。2024年の中国人留学生は約27.7万人と、▲4%減少した。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)5/29、上海総合+23高、3,363
2)5/30、上海総合▲15安、3,347
●2.中国・非製造業PMI、5月は50.3と景気拡大圏を維持(新華社通信)
1)前月より▲0.1ポイント低下したが、好不況の境目50を上回り、景気拡大圏にとどまった。
●3.中国の製造業景況感、5月は49.5と2ヵ月連続で節目割れ、米国と合意でも(産経新聞)
1)運輸が好調の一方、不況が長期化している不動産の低迷が続いている。
●4.「中国の自動車産業は既に「恒大」のような爆弾が既に存在」と長城汽車会長の爆弾発言で、BYD株価が▲8.3%急落の大混乱(kangnamtimes)
1)中国不動産危機の象徴的な不動産開発会社の恒大集団に言及し、業界に衝撃が走った。
2)(1)中国BYDの大幅値引き情報(2)走行距離ゼロの「新古車」の出現で、自動車業界は構造的危機に陥っている。
3)ここ数年で、1台22万元(約440万円)する車両価格が12万元(約240万円)まで下落した。10万元以上に価格が下がると、品質を保証することは不可能と、厳しい見方を示した。
4)BYDは22種を対象に最大▲34%の値引きを行うと発表した。他社も追随値下げを表明した。
5)中国乗用車協会によると、4月時点の自動車在庫は300万台と、2023年12月の120万台を超える高水準の在庫を記録した。
6)中国の電気自動車メーカー50社のうちBYD、理想汽車、セレスを除く企業が赤字を計上。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)5/29、日経平均+710円高、38,432円
2)5/30、日経平均▲467円安、37,965円
●2.日本株:トランプ関税前の高値越え達成、38,000円の壁は厚く高い
1)日経平均・TOPIXともにトランプ関税前の高値越えを達成
・日経平均、TOPIXの推移
日経平均 TOPIX
3/26 38,027円 3/27 2,815
4/07 31,458 4/07 2,288
5/13 38,183 5/13 2,772
5/29 38,432 5/29 2,812
5/30 37,965 5/30 2,801
・日経平均は5/30は5/13よりも下がっている点に着目したい。下落接近を物語っている可能性がある。
2)円売り・ドル買いは続かず⇒円高の可能性
・米国裁判所の関税差し止め命令でも、円売り一巡後に、円高に戻す動きが出ている。
・トヨタなど輸出関連企業の業績にとってマイナス要因となる。
3)騰落レシオ(6日)は急伸し、相場が売られる展開を示唆
・騰落レシオ(6日)の推移
5/20 26.43
5/29 157.28
5/30 192.63
4)日経平均「38,000円」は高い壁
・過去、38,000円攻防で多額の取引高となっており、この壁を乗り越えるには相当な買いエネルギーが必要。
・年金基金は年初から売り基調を継続している、証券会社の自己部門も4月以降は売り越しである。短期外資筋は買い越し。自社株買いは大きく買い越しであるが、相場を下支えしても上げ相場の力にはならない。
・トランプ関税交渉の先行きも見通せない中、日経平均の38,000円の壁は厚くて高い様相となっている。楽観論で上昇してきた分、楽観が剥げる局面入りが想定される。
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・4552 JCRファーマー 黒字転換
・4911 資生堂 黒字転換
・6902 デンソー 業績好調
著者プロフィール
中島義之(なかしま よしゆき)
1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou
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