中性子星の連星系が織りなす時空の歪み

2020年2月6日 17:30

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 1月末に米サイエンス誌で公表された論文で、中性子星の連星系が周りの時空を引きずり回していることが明らかにされた。私たちが存在している宇宙空間には時空の歪みが存在していることは、今から100年以上前にアインシュタインが一般相対性理論で唱えた説であるが、その正しさを証明する新たな証拠が発見されたことになる。

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 中性子星とは、一定の条件を満たす質量を有する恒星(恒星進化論では太陽質量の8~10倍の質量を持つものが相当するとされている)が、その寿命の最後において超新星爆発を起こした後に残る星だ。超高密度で高速回転をしながら、一定の周期で強力な電波を発生させている。

 おうし座のかに星雲M1の中心星が中性子星として有名であるが、このかに星雲は、藤原定家が残した明月記に記録が残されている、1054年に観察された超新星爆発の残骸である。

 この中性子星が連星系をなし、白色矮星を従えているPSR J1141-6545において、時空を引きずり回している証拠が見出されたのだ。主星である中性子星は、地球の約1,000億倍の密度を持ち、伴星である白色矮星も地球の30万倍の密度を持つ。

 このような質量密度が非常に高い星が連星系をなしている場合、その周りの時空には大きな影響が生じる。その証拠として、伴星の公転半径は1日7ミリの割合で縮小を続けていると言う。

 ここで時空の歪みと言われてもピンとこない読者も多いことだろう。そこで時空の歪みについて少しわかりやすく解説をしておきたい。

 時空の歪みについて我々が最も実感しやすい現象は、重力である。重力が発生するのは時空に歪みが存在しているからだが、そう言われても、専門の物理学者でない限りは簡単にこのことをイメージできない。

 時空とはわかりやすく表現すれば、空間座標の違いで時間の進み方が異なる空間のことである。そして時空の歪みが大きい空間とは、空間座標のわずかな違いで時間の進み方に大きな差が生じている場所を言う。

 アインシュタインは一般相対性理論の中で、大きな質量の物体が存在すると、時空を大きく歪めるという主張をした。これは、大きな質量の物体が存在している付近の空間では、座標の少しの違いで時間の進み方に大きな差が出るという意味だった。

 今回サイエンス誌で公開された論文では、アインシュタインの主張の正当性を直接裏付ける貴重な観測結果がもたらされたわけだが、それが可能になったのも、彼の理論を証明するために格好の超高密度星の連星系がこの宇宙に存在していたからである。その意味では、宇宙は私たち人類の科学力を試しているかのようである。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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