人類の進化に大きな影響を与えた超新星爆発 米大学の研究

2019年5月31日 08:52

印刷

超新星爆発のイメージ。

超新星爆発のイメージ。[写真拡大]

 現在、地球上に存在する元素の起源を知っているだろうか?最初から地球のもとになった微惑星の中に存在していたという主張は、不正解である。宇宙の始まりの時間まで歴史をさかのぼれば、この宇宙に元素は水素しか存在しなかった。

【こちらも】隕石から明らかになる超新星爆発の秘密

 地球上の多くの元素は、恒星内部の核融合反応によって作り出された。ただし恒星の核融合で生成可能なのは、鉄よりも軽い元素だけである。それよりも重い元素は、超新星爆発によってしか作り出せない。つまり地球は、恒星内部の核融合と超新星爆発が起きなければ、ほとんどの元素は存在しえなかったのである。

 どんな恒星も超新星爆発を起こすわけではなく、太陽の8倍以上の質量を持つ恒星に限られる。実は太陽が誕生する前に、そこには超新星爆発を起こした恒星が存在していたのである。

 太陽や地球にとって共通の母となる巨大恒星の超新星爆発が、人類誕生の遠い要因になっていたことは紛れもない事実である。ここまでの話は宇宙好きの人間にとっては常識に近い。だが太陽系外の宇宙で起きた超新星爆発が、人類の直立歩行を促した張本人であるという大胆な仮説がつい最近、米国カンザス大学の研究チームによって唱えられた。

 人類の直立歩行のきっかけになったのは、森林の消失であるというのは以前からの定説である。樹上生活をしていた人類の祖先は、二足歩行をする者もいたが、森林の草原化で二足歩行を余儀なくされた。

 太陽系外で起こった超新星爆発が地球に放射線をもたらし、それが地表に近い大気層をイオン化させ、激しい雷雨を誘発した。その際の落雷により世界中で森林火災が発生し、森林の草原化が進行したというのが、今回の仮説の大胆で新しいところである。

 研究チームは海底で鉄60(鉄の同位元素)が多く分布する堆積層の深さを測定することで、放射線が降り注いだ時期を推定した。彼らが出した結論は、人類の直立歩行を促した超新星爆発は260万年前に地球からほんの50パーセク(163光年)の位置で起きたというものである。

 現時点でこの天体は特定できていない。1054年に超新星爆発の目撃記録が残っている有名なおうし座のかに星雲は、地球から7000光年の距離にあるが、今回の発表のあった天体までの距離は、それよりはるかに近い。もし今回の仮説が正しいとするならば、その痕跡を示す天体の特定ができる日が来るかもしれない。(記事:cedar3・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事