天の川銀河の形成過程は2段階 東北大が解明

2018年7月29日 16:54

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野口准教授による天の川銀河の進化の想像図。(画像:東北大学発表資料より)

野口准教授による天の川銀河の進化の想像図。(画像:東北大学発表資料より)[写真拡大]

 東北大学大学院理学研究科の野口正史准教授は、天の川銀河での星の形成過程が異なるメカニズムにより2段階に分かれていることを理論的に解明した。これにより、天の川銀河が50億年前に再生し、その時に太陽も誕生したということが明らかになった。野口准教授は、「冷たい降着流」と呼ばれるガスの流入に着目し、天の川銀河の進化をコンピューターを用いてシミュレーションした。

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 「冷たい降着流」とは、宇宙空間のガスが低温のまま銀河に流れ込む現象であり、また、一度高温になったガスが冷えるにつれて流入する過程は「冷却流」と呼ばれる。この「冷たい降着流」を理論モデルに組み込み、100億年にわたる銀河の進化を計算した。

 これにより、まず、天の川銀河は、始めに「冷たい降着流」によって星が作られ始めたが、今から約70億年前に衝撃波が発生し、ガスが高温になり流入が止まったため、いったん星形成が終了。続いて、約50億年前から第2段階目の星形成が始まった。この過程が現在も続いていると考えられる。太陽も第2段階目の過程で作られたものと言える。

 天の川銀河には、元素組成の異なる2種類の星が存在しており、その理由は謎であった。その謎を解く鍵となる、「冷たい降着流」の流入によって、星の形成が中断されるという仮定は、他の研究者によって予想されてたが、実際に天の川銀河でこのような2段階の星の形成が確認されたのは今回が初めてとなる。

 この計算により、第1段階の「冷たい降着流」によって、α元素と呼ばれる酸素やマグネシウムなどが主成分である星が形成され、第2段階の「冷却流」により、鉄が主成分の星が形成されたことが明らかになった。

 天の川銀河の隣のアンドロメダ銀河など他の渦巻銀河もこのように2段階に分けて形成された形跡があり、今後の研究によって銀河進化の考え方が大きく書き換えられるのではないかと期待される。

 この研究の成果は、2018年7月26日号の英科学誌「Nature」(オンライン版)に公開されている。

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