つる植物は「味覚」によって仲間を避けるという研究、東大

2017年3月12日 07:52

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ヤブカラシの葉と巻きひげ。

ヤブカラシの葉と巻きひげ。[写真拡大]

 まず、味覚とは何か。それは、「接触したものを化学的に識別する能力」のことだ。実は植物にもこの能力があり、ある種のつる植物は、接触化学識別によって同種を見分け、そこに巻きつくことを忌避している、という事実が明らかになった。東京大学の研究である。

 今回研究の対象となったのは、ヤブカラシというブドウ科のつる植物だ。ちなみに、つる植物はウリ科・ブドウ科・マメ科などに見ることができる。つる植物は、つる、すなわち巻きひげを持つ。つる植物の巻きひげは植物の中においては刺激に対する反応性や運動性が高いため、進化論の父チャールズ・ダーウィンの時代から、様々な研究の対象となってきた。

 この研究において、東京大学大学院農学生命科学研究科の深野祐也助教は、ヤブカラシの巻きひげが、同種に対しては巻きつかない、ということを確認。さらに、複数の葉と接触したときに正確に同種だけを避けることができること。他種の葉に巻き付いている状態で同種の葉と接触したときには巻き戻る性質も持っていること、などを明らかにした。

 ヤブカラシなどのつる植物は、自身だけでは上に伸びていくことができず、他の植物に巻き付いて登っていく必要がある。従って、巻き付くべき相手(異種)と、巻き付くべきでない相手(同種)を見分ける能力は重要なのである。

 では、ヤブカラシがどうやって相手を識別しているかを、深野助教はいかに明らかにしたのか。実はこれは偶然によるものだったという。たまたま研究中、ヤブカラシがカタバミに巻き付かないことが発見された。カタバミとヤブカラシの共通点は、シュウ酸を多く含むことである。

 そこで、ホウレンソウなどシュウ酸を多く含む植物を片端から試したところ、ヤブカラシはシュウ酸が多ければ多いほど巻き付きを拒否するという性質を示し、したがって、接触することにより対象のシュウ酸量を化学的に識別する能力を持っていることが明らかになったのである。

 なお、この研究の詳細は、Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciencesのオンライン版に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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