【コラム橋詰雅博】売り上げ前年比4.5%減の出版業界、生き残りをかけて斬新な再編成に挑戦

2015年4月17日 13:43

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記事提供元:さくらフィナンシャルニュース

【4月17日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

  出版市場の縮小が加速している。2014年の書籍、雑誌を含む出版物推計販売額は1兆6065億円と前年と比べて4.5%減。1950年の調査開始以来、最大の落ち込み。ピークだった96年の2兆6560億円より1兆円以上も減っている。長引く不況に対応するため出版界は変革時代に突入した。

  講談社は4月から組織を一新した。今まで第1編集局から第6編集局まであった編集局の名称をなくした。出版社から編集局の名称が消えたのだから驚く。

  代わって第1事業局から第6事業局に名称が変更された。これに伴い第1から第6まであった販売局を1つに統合。局長が一人となり、6人いた局長の中で一番若い50歳がそのポストに就任した。

  販売局は6つの販売部に分かれ、それぞれ第一事業局から第6事業局に配置された。組織は第1事業局販売部、第2事業局販売部といった具合に名称が変わった。出版社の仕事のやり方を縦割り型から製販一体型に切り替えたのだ。不況に立ち向かうため出版ビジネスを大きくモデルチェンジした。

  日本は欧米のような書店のチェーン化が進んでいないが、いよいよチェーン化が始まると思われる出来事が起きた。電子書店の仕入れなどを統合する新会社を紀伊国屋書店と、丸善、ジュンク堂、文教堂などの書店を傘下に持つ大日本印刷が共同出資で設立した。

  ライバル書店が電子書店のワク内で協力して仕事をしていこうというわけだ。やがてはそれが書店チェーン化に発展するかもしれない。書店業界の台風の目になる可能性を秘めている。

  書店と出版社の間に立ち、書籍や雑誌などを流通させている大手出版取次会社の仕事の中身も変化している。日本出版販売(日販)、トーハンとも書店相手にセールスする第3商材と呼ばれる文具や雑貨の売り上げが急伸中。

  また、日販は書店の空間プロデュースとしてカフェづくり事業を推進、トーハンは高齢者住宅・介護事業への参入を決めた。両社とも書籍や雑誌の取次以外の事業に軸足を移しつつある。

  米アマゾンに牛耳られる電子書籍分野でも、新たな動きがある。書店と出版社100社が連携し開業した電子書籍共同販売サービス「BooCa(ブッカ)」は、ドイツの電子書籍販売サービス「TOLINO(トリノ)」がモデルだ。13年春スタートしたトリノは欧州での電子書籍市場のトップシェアを握る米アマゾンに肉薄し、急成長している。「トリノ日本版」が米アマゾンの競争相手になれるかが焦点だ。

  出版業界、各社は生き残るためもがいている。【了】

 橋詰雅博
 日刊ゲンダイ記者を経てフリーのジャーナリスト。
■ブログ「橋詰雅博の焦点」
http://blogs.yahoo.co.jp/mintia1950

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