暗号資産決済Triple-Aがサイバー攻撃で約19億円流出 顧客資金は被害なし

2026年7月28日 13:25

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記事提供元:Tech Times

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シンガポールを拠点とするステーブルコイン決済企業Triple-Aが、先週末の31時間に及ぶ攻撃で、自社のトレジャリーウォレットから推定1180万ドル(約19.4億円)を失った。攻撃者は7つのブロックチェーンネットワークから資金を流出させ、Ethereum上に集約した。一方、シンガポールの規制に基づき、別の信託口座で分別管理されていた加盟店の資金に被害はなかった。Triple-Aが7月27日に公表した公式声明で明らかにした。

本稿に記載した米ドルから円への換算額は、1ドル=164円で概算している。

オンチェーン調査員のSpecter氏は、7月24日金曜日の米国東部時間午後5時18分ごろ、不審な資金流出を最初に検知した。BeInCryptoの報道によると、同氏はTriple-Aに関連するウォレットから930万ドル(約15.3億円)以上がすでに流出し、別の資産に交換されたうえでEthereumへブリッジされていたとXに投稿した。Triple-Aが侵害を公に認めたのは7月27日月曜日で、オンチェーン上で警告が出てから約35時間後だった。

■顧客資金を守ったものと、守らなかったもの

Triple-Aは7月27日に公式声明を発表し、7月25日に自社のトレジャリーウォレットへの不正アクセスが発生したことを確認した。エンジニアが影響を受けたインフラを保護する間、約3時間にわたり一部のサービスを一時停止したという。同社は、顧客資金が危険にさらされることは一度もなかったとしている。

大手の認可済み決済企業に対する31時間、7チェーンに及ぶ攻撃から加盟店の資金が守られた理由は、シンガポール金融管理庁(MAS)がFTXの破綻を受け、2024年10月に導入した規制にある。認可を受けたデジタル決済トークン(DPT)サービスプロバイダーは、顧客資金を別途承認された保全機関の信託口座で保持し、顧客資産を企業自身の保有資産とは完全に分離されたブロックチェーンアドレスで管理しなければならない。

Triple-Aの公式声明によると、同社ではこの分別構造が導入されている。さらに同社は、顧客に代わってデジタル資産を保管するカストディサービスを提供していない。加盟店の資金はTriple-Aの決済網を通じて処理され、法定通貨で決済されるため、今回標的となったホットウォレットに滞留することはなかった。

これは、シンガポールがFTX破綻後に整備した規制の仕組みが意図した結果である。一方、この規制が保護できず、もともと保護対象ともしていなかったのが、Triple-A自身のトレジャリー資金だった。今回の侵害で流出したのは同社の運転資金であり、顧客資産ではない。

■7つのチェーンをまたいだ攻撃

攻撃は、高度な専用インフラが使われた場合と整合するスピードと連携パターンで進行した。Specter氏による当初の被害推定額は930万ドルだったが、ブロックチェーンセキュリティ企業PeckShieldが土曜日の朝に独自の警告を公開した後、970万ドル(約15.9億円)に増加した。PeckShieldは、攻撃者が盗んだ資産を、約5226.67 ETHを保有する単一のEthereumアドレスに集約したと報告している。

Specter氏はその後、日曜日にBitcoinとTRONのネットワークから追加の流出を追跡し、総額を約1180万ドル(約19.4億円)に上方修正した。ただし、Triple-Aは損失の総額を公式には確認していない。

影響を受けたウォレットは、Ethereum、Solana、TRON、The Open Network(TON)、Polygon、Arbitrum、Bitcoinの7つのネットワークにまたがっている。攻撃者の手法は、既知のクロスチェーン集約パターンに沿ったものだった。各ネットワーク上の資産をまず分散型取引所(DEX)で流動性の高いトークンに交換し、ブリッジを通じてEthereumへ移動させ、単一のアドレスに集約していた。

crypto.newsの報道によると、Ethereumが集約先に選ばれたのは、その後の資金分散に利用できる流動性が最も厚く、Tornado Cashのようなプライバシーミキシングツールにもアクセスできるためだという。

この攻撃で異例なのは、その継続時間である。Specter氏の報告によると、オンチェーン調査員は、最初の流出から31時間以上が経過した後も、Triple-Aのウォレットに新たに入金された資金が引き続き流出させられていることを確認した。

この持続性は、攻撃者が秘密鍵を盗み、一度だけ資金を抜き取ったのではない可能性を示している。認証情報の侵害、APIの悪用、または内部関係者による脅威などを通じ、ウォレット管理層への認証済みアクセスが継続していた状況と整合する。ただし、Triple-Aは攻撃経路を明らかにしておらず、公式声明では正確な原因を引き続き調査しているとしている。

■Fireblocksの存在だけでは攻撃を防げなかった理由

Triple-Aは、デジタル資産インフラの一部としてFireblocksを使用している。Fireblocksは、機関向け暗号資産企業で広く利用されているプラットフォームであり、マルチパーティ計算(MPC)暗号技術によって、鍵の侵害における単一障害点を排除する仕組みを採用している。

FireblocksのMPC-CMPモデルでは、秘密鍵が一度でも単一の場所で完全な形に組み立てられることはない。鍵は暗号学的なシェアに分割され、Fireblocksのサーバーと顧客自身のシステムに分散される。トランザクションへの署名はシェア同士を連携させて行われ、いずれの当事者も完全な鍵を保持しない。

独立した研究者の中で、今回の侵害の原因をFireblocksに帰属させたり、Fireblocksのプラットフォーム自体が侵害されたと指摘したりしている者はいない。Fireblocksも公式声明を出していない。

この点は、Triple-Aの事件が示すMPCアーキテクチャの重要な限界につながる。MPCは署名権限を分散するが、トランザクションを開始できる正規の認証済みアクセスを攻撃者が取得した場合、それ自体を防ぐものではない。

攻撃者が侵害された認証情報やAPIアクセスを通じ、通常の運用と見分けがつかない有効なトランザクション要求を生成できれば、MPC署名インフラはその要求を正しく処理する。今回の侵害は、暗号技術の層ではなく、その上位にあるアクセス層で発生したとみられる。

業界データも、この攻撃傾向の変化を示している。2026年には初めて、秘密鍵の盗難、認証情報の悪用、アクセス権の侵害などによるアカウント侵害が、被害額ベースでスマートコントラクトの悪用を上回り、暗号資産損失の最大の原因となった。

2026年の被害を追跡している研究者らは、最初の7か月間に重要なDeFiインフラを狙った攻撃で、累計6億3000万ドル(約1033億円)の被害が発生したとしている。大規模な個別被害の多くは、コードの脆弱性ではなくアクセス管理の不備から生じている。

■シンガポールのFTX後の規制が受けた初の大きな試練

今回の侵害は、MASが2024年10月に導入した決済サービス規則が、認可済みの決済事業者を狙った現実の高度な攻撃に対して受けた、初の重要な公的試練となる。その結果は規制の設計意図に沿うものだった。企業自身のトレジャリー資金は失われたが、顧客資産を囲い込む規制上の防壁は機能した。

決済サービス規則の下では、MASから認可を受けたDPTサービスプロバイダーは、顧客資産を自社のアドレスではなく、別途承認された保全機関の信託口座で保持しなければならない。顧客資産は企業の運用資産とは完全に異なるブロックチェーンアドレスで管理し、MASの決済サービス規則に従って毎日照合する必要がある。

Triple-Aの仕組みは、さらに一歩進んでいた。同社は顧客のデジタル資産を保管せず、取引中に法定通貨へ変換する。このため、Triple-Aの公式声明によれば、同社のホットウォレットを通じて顧客がデジタル資産のリスクにさらされる構造にはなっていなかった。

FTXとの対比は示唆的である。FTXが2022年11月に破綻した際には、顧客資金が企業の運転資金と混同され、ほかの事業活動に使用されていた。これは、MASが現在義務付けている分別管理構造とは正反対である。MASは、シンガポールの認可企業で同様の構造が存在することを防ぐため、2024年10月の要件を設計した。

Triple-Aは公式声明で、引き続き十分な資本を有し、すべての債務を履行できると説明した。今回の侵害による財務的影響は、既存のトレジャリー準備金から全額吸収するという。

■Triple-Aの事業と実際に危険にさらされた資金

Triple-A Technologies Pte. Ltd.は、企業が暗号資産による支払いを受け付け、現地の法定通貨で決済できるようにする認可済みのステーブルコイン決済インフラ企業である。同社のプラットフォームを利用する加盟店は、デジタル資産を直接保有したり管理したりする必要がない。

同社の公式声明によると、Triple-AはMASから主要決済機関(MPI)ライセンス「PS20200525」を取得している。また、フランスの規制当局から決済機関ライセンスと暗号資産サービスプロバイダー登録を受けており、フランス金融市場庁(AMF)におけるCASP登録番号は「A2026-015」である。米国では、金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)にマネーサービス事業者として登録されている。

同社の公式声明では、1000社を超える法人顧客を抱えていると説明している。侵害の数日前には、ドバイの仮想資産規制局(VARA)からブローカー・ディーラーサービスの原則承認を取得したと、Triple-Aのニュースルームで発表していた。これは、同社が地域展開を広げていたことを示している。

今回資金が流出したウォレットは、Triple-A自身の運用トレジャリー口座だった。ブロックチェーンネットワーク間の社内流動性を管理するための運転資金であり、決済事業者がリアルタイムの交換に必要な各資産を確保するために使用するものだ。

これらは顧客資金ではなく、信託口座による保護要件の対象でもない。Triple-Aの顧客ではなく、同社自身に帰属する資金だからである。

Triple-Aは2026年3月、CircleのCircle Payments Network(CPN)と統合し、国際的な取引経路におけるステーブルコインから現地通貨への決済に対応した。これにより、送金、給与支払い、仕入れ先への支払いが同社のサービスに加わった。Circleは今回の侵害について声明を出しておらず、CPNとの統合が影響を受けたことを示す証拠もない。

■暗号資産インフラにとって厳しい1週間

Triple-Aの侵害は、暗号資産セキュリティに大きな被害が相次いだ期間の終盤に発生した。BeInCryptoの報道によると、7月23日だけで3件の異なる攻撃が発生し、合計3555万ドル(約58.3億円)が流出した。

AFX TradeはArbitrum上のカストディブリッジを通じて約2415万ドル(約39.6億円)を失った。Verus-Ethereumブリッジでは5月以降2度目となる侵害が発生し、約754万ドル(約12.4億円)の被害が出た。B2 Networkも約386万ドル(約6.3億円)の被害を受けた。さらに7月26日には、Garden Financeを狙った45万ドル(約7380万円)の攻撃も報告されている。

DeFiに対する攻撃を追跡している研究者らは、2026年の最初の7か月間に重要なサードパーティーインフラを標的とした攻撃による累積被害が、6億3000万ドル(約1033億円)を超えたと推定している。主な攻撃手法として、オラクルの操作、価格設定の欠陥、認証情報の侵害、ブリッジにおける検証の不備などが挙げられている。

Triple-Aの侵害もこの総額に加わるが、その規模は2026年を代表する事件よりかなり小さい。4月に発生したDrift Protocolの侵害では2億8500万ドル(約467億円)、KelpDAOに対する攻撃では2億9200万ドル(約479億円)の被害が出た。

決済処理に使用されるホットウォレットは、構造上避けることの難しい標的であり続ける。出金を遅らせ、資産の大部分をコールドストレージに保管できる取引所とは異なり、決済ゲートウェイは、対応するすべてのブロックチェーン上で、流動性がありインターネットからアクセス可能な運用準備金を維持しなければならない。

どれほど厳格なライセンス制度、規制当局の監督、MPCベースの鍵管理が導入されても、このリスクを完全に排除することはできない。

■Triple-Aの対応と今後

Triple-Aは、社内外のサイバーセキュリティ専門家、ブロックチェーンフォレンジック企業、シンガポール警察を含む関係当局と協力し、侵害の調査、影響を受けた資産の追跡、回収作業を進めていると説明した。

同社は、調査完了までの予定、具体的な攻撃経路、盗まれた資産の一部が凍結または回収されたかどうかについては明らかにしていない。

同社のマーケティング責任者であるTatyana Chernov氏は土曜日、BeInCryptoに対し、Triple-Aは「状況を積極的に調査している」と述べ、顧客資金への影響がなかったことを確認した。

Triple-Aにとって当面の課題は、サービス品質や財務の安定性に影響を及ぼすことなくトレジャリーの損失を吸収できると加盟店に示すことである。同時に、認可を受けた決済機関でこの規模の侵害が発生した後の精査に耐えられるセキュリティ体制を備えていると、シンガポール、フランス、米国の規制当局に示す必要がある。MASは、執行措置や調査の開始を公には発表していない。

■注目ポイントQ&A

●Triple-Aの加盟店の資金は攻撃後も安全ですか?

現在確認されている情報に基づけば、安全です。Triple-Aの公式声明によると、顧客資金は流出のあったホットウォレットではなく、別の保全機関に設けた信託口座で管理されていました。同社は顧客に代わってデジタル資産を保管しておらず、加盟店の資金はTriple-Aの決済網を通じて法定通貨で決済されます。シンガポールが2024年10月に導入した決済サービス規則に基づく分別管理により、これらの資金は同社自身のトレジャリーから完全に分離されていました。損失を報告した加盟店はありません。

●攻撃者はどのように7つのブロックチェーンから資金を流出させたのですか?

攻撃手法は、2026年に発生した高度な暗号資産攻撃で確認されているパターンに沿っています。攻撃者は単発の秘密鍵窃取ではなく、Triple-Aのウォレット管理層への継続的な認証済みアクセスを取得したとみられます。各ネットワークの資産を組織的に流出させ、分散型取引所で流動性の高いトークンに交換した後、単一のEthereumアドレスへブリッジしていました。正確な攻撃経路は公表されていません。認証情報の侵害、APIの悪用、内部関係者によるアクセスなどが可能性として挙げられます。FireblocksのMPC署名インフラが侵入経路だったとは指摘されておらず、同インフラ自体が侵害されたことを示す情報もありません。

●なぜシンガポールの暗号資産規制は流出を防げなかったのですか?

シンガポールの決済サービス規則は、企業自身のトレジャリー資金ではなく、顧客資金を保護するために設計されています。今回、その顧客保護の仕組みは意図した通りに機能しました。MASは認可企業に対し、顧客資産を承認された保全機関の信託口座で分別管理するよう義務付けており、Triple-Aもこれに従っていました。一方、企業自身の運転資金はこの分別管理要件の対象ではありません。決済ゲートウェイのトレジャリーウォレットはリアルタイムの業務に構造上必要であり、本質的なリスクを伴います。規制は企業の破綻から顧客を保護できますが、企業自身の財務リスクを完全になくすことはできません。

●暗号資産決済ゲートウェイを利用する企業にとって、この事件は何を意味しますか?

この事件は、シンガポールの規制による保護と、その限界の両方を示しています。利用する決済事業者がMASの認可を受け、顧客資金を適切に分別された信託口座で管理していれば、加盟店は決済事業者自身のセキュリティ障害に対して構造的に保護されます。一方、サービス中断に対する保護はありません。Triple-Aも侵害への対応中、約3時間にわたって一部の決済サービスを停止しました。時間的制約のある決済を暗号資産決済ゲートウェイに依存する企業は、事業者が顧客資金をどのように分別管理しているか、メンテナンス時間帯に関する方針はどうなっているか、その分別管理を義務付けるライセンス制度の下で運営されているかを確認する必要があります。

元記事: Triple-A Treasury Wallets Drained $11.8M Across Seven Chains in 31-Hour Attack

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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