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フーシ派がサウジのジザンとヤンブーを同時攻撃、ブレント原油は100ドル超に
イランの支援を受けるイエメンの武装組織フーシ派が、サウジアラビアのジザンにあるアラムコの製油所とヤンブーの輸出ターミナルを同時攻撃した。これにより、サウジアラビアに残された唯一の原油輸出回廊が脅かされている。ブレント原油は1バレル100ドルを突破し、世界のエネルギー供給に対する懸念が急速に高まっている。
■サウジの原油輸出ルートを狙った同時攻撃
イランの支援を受けるイエメンの武装組織フーシ派は25日未明、サウジアラムコのジザン製油所コンプレックスを攻撃して火災を発生させるとともに、北方のヤンブー輸出ターミナルに対する同時攻撃を行った。地域メディアが確認したフーシ派によるミサイルとドローンの攻撃で、ヤンブーは現在機能しているサウジアラビア最後の原油輸出回廊を支える唯一の港である。NASAの衛星火災検知システムは、協定世界時(UTC)1時17分ごろ、ジザンの施設で複数の顕著な熱異常を確認した。ブレント原油は早い時間帯の取引で再び1バレル100ドル(約1万6400円、1ドル=164円換算)を突破した。
これにより、戦略的な「罠」が完成した。サウジアラビアは過去5カ月間、イランによって封鎖されたホルムズ海峡を迂回するため、約1,200マイル(約1,930キロメートル)の東西パイプラインを通じて原油輸出を西部のヤンブーへと振り替えてきた。しかし、この迂回ルートはホルムズ海峡の問題を別の場所に移したにすぎない。ヤンブーで積み込まれた原油は、フーシ派が7月20日に封鎖海域に指定したバブ・エル・マンデブ海峡を通過しなければならないからだ。パイプラインはチョークポイント(海上交通の要衝)の問題を回避したのではなく、そのチョークポイントを別の敵対勢力の手に委ねたことになる。現在、サウジアラビアは東西両側の輸送経路を同時に攻撃されている。
■ジザンでの火災とヤンブーでのミサイル迎撃
フーシ派の軍事報道官を務めるヤヒヤ・サレア准将は、2つの同時作戦を発表した。サレア報道官によると、最初の作戦は「数十発の弾道ミサイルとドローンでジザンにあるアラムコ関連の重要施設」を標的とし、2つ目の作戦は「複数の弾道ミサイル、巡航ミサイル、ドローンでヤンブーにあるアラムコ関連の重要施設」を標的としたという。
ジザンでの状況は宇宙からも確認できた。NASAのFIRMS(火災情報リソース管理システム)は、製油所コンプレックスの東半分で、過去の観測時間帯には見られなかった複数の顕著な熱異常を検知した。CNNが撮影場所を特定したソーシャルメディア上の動画には、同市の工業地域で大規模な火災が発生している様子が映っていた。地域メディアは少なくとも5回の爆発を報じ、同地域へ向かう民間航空機は目的地を変更するか、上空で待機する事態となった。
一方、ヤンブーではサウジアラビアの防空システムがより効果を発揮した。ギリシャの安全保障筋がロイターに確認したところによると、飛来した2発の弾道ミサイルが迎撃された。この防空システムはギリシャ軍の要員によって運用されていた。サウジ民間防衛局はジザンとヤンブーの住民に緊急警告を発し、窓から離れて避難するよう勧告した。その後、ヤンブーについては迎撃後に危険が去ったとして警告を解除した。
25日早朝の時点で、サウジアラムコやサウジ政府から公式な被害評価は発表されていない。アジアを拠点とする2人の取引関係者はロイターに対し、ジザンの施設で何らかの被害が出たとの報告を受けていると語った。サウジアラムコはメディアからのコメント要請に応じていない。
■ジザン製油所とヤンブーの重要性の違い
2021年に商業稼働を開始し、2023年ごろからフル稼働しているジザン製油所は、日量40万バレルの原油を処理している。これは重要な下流インフラではあるが、今回の事態における戦略的な重心ではない。
真の重心はヤンブーにある。イランがホルムズ海峡を事実上閉鎖した後、サウジアラビアは2026年3月、東西パイプライン(ペトロライン)の輸送量を過去最高の日量700万バレルまで引き上げた。毎日紅海沿岸に到達する700万バレルのうち、約200万バレルがサウジ国内の製油所に供給され、残りがヤンブーの北・南ターミナルでタンカーに積み込まれる。Signal Oceanの船舶追跡データによると、ヤンブーでの積み込み量は7月13日ごろに日量470万バレルに達し、同ターミナルとして過去最高を記録した。AFPが報じたKplerのデータによれば、2026年6月には、サウジアラビアの海上原油輸出の92%をヤンブーが占めていた。
これは副次的な輸出ルートではない。ホルムズ海峡が閉鎖されている間、ヤンブーはサウジアラビアの輸出事業そのものになっている。第3の回廊は存在しない。クウェート、カタール、イラクにはこれに匹敵する陸上の代替ルートがなく、ホルムズ海峡に依存する各国の輸出は完全に停止している。
■パイプラインはいかにして「罠」となったか
今回の攻撃の背景にあるインフラの歴史は1980年代にさかのぼる。サウジアラムコはイラン・イラク戦争中、まさに現在起きているシナリオ、すなわち敵対勢力によるホルムズ海峡封鎖に備える戦略的な保険として、東西パイプラインを建設した。約40年間、このパイプラインは緊急時の備えとしてほとんど使われずにいたが、2026年には世界で最も重要なエネルギーインフラの一つとなった。
ペトロラインは、サウジアラビア東部州のアブカイク石油処理施設から紅海沿岸のヤンブーまで、1,201キロメートル(746マイル)にわたって延びている。設計上の最大輸送能力である日量500万バレルでは、ホルムズ海峡経由の輸出を完全に代替できなかった。このためアラムコは、並行する天然ガス液(NGL)用パイプラインを原油輸送用に転用し、輸送量を日量700万バレルまで引き上げた。これはNGLの輸出収入を犠牲にして原油の輸送量を確保する緊急措置だった。
ここにフーシ派が突いた構造上の問題がある。ペトロラインを経由してヤンブーに到着した原油を積んだタンカーが南へ向かう場合、紅海とアデン湾を結ぶ南端の幅29キロメートル(18マイル)のバブ・エル・マンデブ海峡を通過しなければならない。パイプラインはイランの影響下にあるホルムズ海峡を迂回してサウジ原油をヤンブーに届けるが、そこから出港するタンカーは、フーシ派が封鎖海域に指定した海峡を通過することになる。イランとフーシ派は同じ敵対勢力の連合に属している。つまりパイプラインは、チョークポイントを同じ連合の一方から他方へ移したにすぎなかった。
バブ・エル・マンデブ海峡では日量約740万バレルの石油が輸送されており、これは世界の石油生産量の約7%に相当する。ホルムズ海峡とバブ・エル・マンデブ海峡が同時に封鎖されれば、世界の石油・ガス供給の約25%にアクセスできなくなる可能性がある。
フーシ派が艦船を1隻も展開することなく、ヤンブーから出港するタンカーを攻撃できるのは、射程約400キロメートル(249マイル)の陸上発射型対艦弾道ミサイルを保有しているためだ。この射程はバブ・エル・マンデブ海峡の全幅に加え、紅海南部のかなりの範囲をカバーするのに十分である。標的の特定には、自動船舶識別装置(AIS)の情報が利用されている。AISは、国際法により総トン数300トンを超える商船に搭載が義務付けられている海上追跡システムで、各船の識別情報、位置、目的地、進路をVHF無線で継続的に発信する。フーシ派は、この公開情報とサウジの港への寄港記録を照合し、サウジ関連の船舶を特定している。
■同時攻撃に至るまでの5日間のエスカレーション
今回の製油所攻撃は予想外のものではなかった。5日前から段階的に進んでいた緊張激化の延長線上にある出来事だった。
7月20日、フーシ派はサウジアラビアに対する全面的な海上封鎖を宣言し、サウジのターミナルに寄港する船舶は作戦範囲内のどこでも標的になり得ると警告した。タンカー運航会社はほぼ即座に対応した。
7月22日から23日にかけて、フーシ派は紅海でサウジの石油タンカー「エンセリア」と「レイラ」を攻撃し、両船が封鎖に違反したと主張した。ブレント原油は7月23日に1バレル100.69ドル(約1万6513円)で取引を終え、5月以来の高値となった。取引時間中には101.01ドル(約1万6566円)まで上昇した。
7月23日、トランプ米大統領はSNS「Truth Social」への投稿で、フーシ派による今後の攻撃について米国はイランに「責任を負わせる」とし、「大規模な軍事的処罰」を科す可能性があると警告した。さらにトランプ氏は、同地域における船舶や貨物の損害は、米国が保有する凍結イラン資産から支払わせると発表した。イランのアッバース・アラーグチー外相は、この措置を「扇動的な前例」だと非難した。
7月24日、サウジアラビア主導の連合軍は、ホデイダにあるフーシ派の軍事目標に対し、「相応の軍事的対応」とする攻撃を実施した。連合軍は、商船への攻撃に関係する拠点を攻撃したと説明した。フーシ派が運営するアル・マシラ・テレビは、通信施設が攻撃され、カマラン島で女性1人が負傷したと報じた。フーシ派の外務省は、今後は「エスカレーションにはエスカレーションを」で応じると宣言した。
そして7月25日のUTC1時17分ごろ、ジザン製油所で火災が発生した。
■原油市場の反応とさらなる供給ショック
今回の攻撃に対する市場の反応は、すでに強い圧力を受けていた原油相場の上昇傾向をさらに押し進めた。ブレント原油は25日の早い時間帯の取引で1バレル100ドルを突破し、2026年7月だけで約40%上昇した。その後は、トレーダーが持続的な生産減少の有無を確認しようとする中、上げ幅を縮小した。期近物のブレント原油は7月23日の時点で取引時間中に101.01ドルを付け、すでに100ドルの大台を突破していた。
UBSのストラテジスト、ジョバンニ・スタウノボ氏は「石油市場の逼迫」を指摘し、世界各地で再び発生した供給混乱を背景に、ブレント原油が3週間で約28ドル(約4,592円)上昇したと述べた。
さらに、同時進行する3つ目の供給ショックが市場の不安を増幅させた。カスピ海パイプライン・コンソーシアム(CPC)は、ロシアのノヴォロシースク近郊にある黒海ターミナルで、原油の積み込みを停止した。ウクライナのドローン攻撃により、同ターミナルで積み込み中のタンカーが攻撃を受けたためだ。CPCルートはカザフスタンの石油輸出の約80%を扱っている。カザフスタンは、輸出できずに貯蔵タンクの容量が限界を超えたため、一時的に生産を削減したことを確認した。RBCキャピタル・マーケッツのアナリスト、ヘリマ・クロフト氏は、本格的な地域戦争に発展した場合、ブレント原油が2022年のロシア・ウクライナ戦争時の高値である1バレル128ドル(約2万992円)、あるいは2008年の最高値である146ドル(約2万3,944円)に迫るシナリオを挙げた。
小売段階では、全米自動車協会(AAA)が7月23日に記録したレギュラーガソリンの全米平均価格は1ガロン当たり4.09ドル(約671円)で、1週間に15セント(約25円)上昇していた。しかし、これはタンカーへの一連の攻撃のみを反映した価格だった。今回の製油所攻撃で持続的な被害が生じたことが確認されれば、数日以内にガソリンの店頭価格へさらなる影響が及ぶ可能性がある。現在の米国の消費水準では、ブレント原油が1バレル当たり10ドル(約1,640円)上昇した状態が続くと、ガソリン価格は1ガロン当たり約24セント(約39円)上昇する。
■停戦努力の崩壊と米国の姿勢硬化
ホワイトハウスは製油所攻撃の前から姿勢を硬化させていた。米中央軍は13夜連続でイランの軍事目標に対する空爆を実施し、司令部、ドローン保管施設、通信ネットワーク、沿岸監視インフラを攻撃した。6月に合意された停戦の枠組みが崩壊し、いずれの側も覚書の条件を守らない中で、空爆は継続された。
マルコ・ルビオ国務長官は東南アジアで開かれた外交会合で、テヘランが持続可能な和平合意を受け入れるまで、イランが支払う代償は「毎晩高くなる」と警告した。パキスタン、イラク、湾岸諸国による自制の呼びかけは、ほとんど効果を上げなかった。
フーシ派のサレア報道官は、今回の製油所攻撃を、同組織がサウジアラビアによる「我々の国民に対する包囲を継続する決意」と呼ぶ行為への直接的な報復だと位置付けた。
■サウジ原油と米国ガソリン価格の今後
サウジアラビア主導の連合軍は、フーシ派による敵対行為が続けば「妥協のない」対応を取ると表明した。一方、フーシ派は今後の段階を、上限を設けないエスカレーションと位置付けている。
こうした応酬があっても、構造的なジレンマは変わらない。ホルムズ海峡がイラン海軍の阻止行動下にあり、バブ・エル・マンデブ海峡がフーシ派の宣言した封鎖海域内にある。さらにヤンブーの輸出インフラが直接攻撃されたことで、サウジアラビアに残された選択肢はコストのかかるものに限られている。スエズ運河とSUMEDパイプラインを使って原油を南ではなく北へ送り、より高いコストと遅い輸送を受け入れること、輸出量の減少を受け入れること、あるいはジザンとヤンブーの被害が輸送を継続できる程度にとどまることを期待することだ。
スエズ運河を利用する代替ルートにも構造的な制約がある。超大型原油タンカー(VLCC)は運河の喫水制限に直面するため、より小型の船舶に積み替える必要があり、輸送費が増加する。アフリカ大陸を完全に迂回する喜望峰ルートは、1航海当たり2〜3週間余計にかかり、アジアの買い手にとっての引き渡しコストを大幅に押し上げる。
2024年の両海峡の通航量データに基づくと、ホルムズ海峡とバブ・エル・マンデブ海峡が同時に完全閉鎖された場合、世界の石油・ガス供給の約25%にアクセスできなくなる可能性がある。ゴールドマン・サックスは、ホルムズ海峡の混乱だけでも長期化すれば、第4四半期までにブレント原油が1バレル120ドル(約1万9,680円)を超えると予測していた。今回の製油所攻撃により、その水準が持つ意味は変わった。市場が織り込みつつあるのは単一の供給混乱ではなく、明確な解決への道筋がない中東の石油輸出物流全体が機能不全に陥る可能性だ。
米国の消費者にとって、今ガソリンを購入して満タンにするべきかという問題は、もはや机上の議論ではない。ヤンブーでの混乱が続くことが確認される週が増えるたびに、1ガロン当たり4.09ドルの全米平均ガソリン価格には上昇圧力がかかる。値上がりは値下がりよりも速く店頭価格に反映されるという、非対称な「ロケットと羽(rockets and feathers)」と呼ばれる価格伝達の傾向も、すでに確認されている。
■注目ポイントQ&A
●ヤンブーへの攻撃がジザン製油所への攻撃よりも重要視されるのはなぜですか?
ジザン製油所は日量40万バレルの原油を処理する大規模施設ですが、その処理分は理論上、ほかの製油所や備蓄で補うことができます。一方、ヤンブーは根本的に異なります。ヤンブーはサウジアラビアの東西パイプラインの出口であり、イランがホルムズ海峡を閉鎖した後、2026年には同国で唯一機能している原油輸出ルートとなりました。AFPが報じたKplerのデータによると、2026年6月には、サウジアラビアの海上原油輸出の約92%をヤンブーが扱っていました。ヤンブーの機能が停止しても、サウジアラビアの精製能力が直接低下するわけではありません。しかし、閉鎖が長期化すれば、同国が世界市場へ原油を供給する能力そのものが失われる恐れがあります。
●東西パイプラインはチョークポイントを迂回するのではなく、なぜ「罠」を生み出したのですか?
ペトロライン(東西パイプライン)は、アブカイクの処理施設から紅海沿岸のヤンブーまで1,201キロメートルにわたって延び、ホルムズ海峡を完全に迂回しています。しかし、ヤンブーで原油を積み込んだタンカーは、アジアや欧州の市場へ向かうため、南のバブ・エル・マンデブ海峡か、北のスエズ運河を通過しなければなりません。現在、バブ・エル・マンデブ海峡はフーシ派が宣言した海上封鎖海域内にあり、フーシ派はホルムズ海峡の閉鎖に関与するイランと同じ陣営に属しています。つまり、パイプラインはチョークポイントを同じ敵対勢力の連合の一方から他方へ移しただけなのです。これが、今回の攻撃によって浮き彫りになった構造的な罠です。
●バブ・エル・マンデブ海峡とは何ですか?なぜ米国のドライバーが気にする必要があるのですか?
バブ・エル・マンデブ海峡は、紅海とアデン湾を結ぶ南端にある幅29キロメートルの海峡です。日量約740万バレル、世界の石油生産量の約7%に相当する石油の輸送を担っています。ヤンブーから南へ向かうサウジ原油が世界市場へ到達する際に通過する重要な関門です。原油価格が1バレル当たり10ドル上昇して高止まりすると、米国のガソリン店頭価格は通常、1ガロン当たり約24セント上昇します。ブレント原油はすでに3週間で約28ドル上昇しています。今回のインフラ攻撃によってヤンブーの輸出量が減ったことが確認されれば、すでに100ドル台に達した市場へさらなる上昇圧力がかかります。
●ヤンブーからの出港を保護する軍事的な選択肢はありますか?
EUの海上部隊「アスピデス」は、最近サウジアラビアの港に寄港した船舶に対し、フーシ派に標的情報を与える可能性を減らすため、AIS(自動船舶識別装置)の送信を最小限にするよう勧告しています。しかし、AISを無効にすれば、航行の安全や捜索・救難に役立つ機能も同時に失われます。フーシ派の陸上発射型対艦弾道ミサイルは射程が約400キロメートルあり、海上に迎撃用の艦船を配置するだけでは無力化できません。サウジアラビアの防空システムは、今回、ギリシャ軍要員が運用するシステムによってヤンブーへ向かう弾道ミサイル2発を迎撃しており、攻撃が成功する確率を下げることはできます。しかし、今回のような複数目標に対する一斉攻撃を、継続的かつ確実に無力化できる能力は実証されていません。
元記事: Houthi Strike Burns Jizan Aramco Refinery; Yanbu Attack Seals Saudi Arabia’s Oil Trap
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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