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EU、AliExpressに過去最大5億5000万ユーロの制裁金――危険な商品を推奨したアルゴリズムを問題視
欧州委員会は、オンラインマーケットプレイス「AliExpress」に対し、デジタルサービス法(DSA)に基づく過去最大となる5億5000万ユーロ(約1023億円)の制裁金を科した。調査の結果、同社の推薦アルゴリズムや広告ツールが、安全基準を満たさない玩具や禁止成分を含む化粧品などの危険な商品を、削除前に欧州の消費者に積極的に推奨していたことが判明した。今回の決定は、プラットフォームのアルゴリズムによる拡散行為そのものを消費者の不利益の構造的要因と認定した初の事例であり、今後のオンラインマーケットプレイス規制に大きな影響を与える可能性がある。
■過去最大の制裁金とアルゴリズムの責任
欧州委員会は2026年7月20日(月曜日)、AliExpressに対し5億5000万ユーロ(約1023億円、1ユーロ=186円換算。ドル換算では約6億2900万ドル/約1025億円、1ドル=163円換算)の制裁金を科した。これはEUのデジタルサービス法(DSA)の下で科された過去最大の罰則であり、プラットフォームがアルゴリズムを用いて購入者に推奨する商品に対して、EU当局が法的責任を追及する姿勢を明確に示したものである。
今回の判断の核心は、単にAliExpressが危険な出品を迅速に削除しなかったという点にとどまらない。欧州委員会は、同プラットフォームの推薦システムや広告ツールが、安全基準を満たさない玩具や禁止成分を含む化粧品、偽造衣料品などの危険な出品が削除される前に、欧州の消費者を積極的に誘導していたと認定した。この違いは極めて重要であり、マーケットプレイスのアルゴリズムによる拡散メカニズム自体が、消費者に害を及ぼす構造的な原因であると特定された初のDSA執行事例となった。
■調査で判明した「5つの怠慢」
2024年3月に開始され、2年間にわたる証拠収集が行われた調査により、AliExpressの商品リスク管理における5つの重複する怠慢が特定された。
第一に、違法な可能性のある出品を審査する人的モデレーターの数を著しく過小評価していた。審査員には1つの出品に対して数十秒しか与えられないこともあり、プラットフォームのコンプライアンス体制の根本的な欠陥となっていた。
第二に、推薦アルゴリズムや広告ツールが危険な商品のリーチをどのように拡大しているかを評価していなかった。審査対象としてフラグが立てられた(つまり疑わしいと分かっている)商品が、ランキングや有料プロモーションシステムを通じて他の購入者に提示され続けていた。同プラットフォームのアルゴリズムインフラには、審査前の疑わしい出品を抑制するためのフラグ管理システムとの効果的な連携が欠如していた。
第三に、モデレーションシステムの有効性を測定するために単一の定量的指標のみを使用していた。これは、違反でペナルティを受けたセラーが別のアカウントや異なる商品カテゴリーで出品を続ける「再出品行為」を捉えるには不十分であった。
第四に、セラーが出品前審査の緩いカテゴリーに意図的に商品を分類し、既存のチェックを回避できていた。第五に、偽造品の販売を防ぐためのブランド授権システムの人員が不足しており、偽物の出品者に容易に回避されていた。
この結果、問題があるとフラグが立てられた後も、偽造衣料品や不安全な玩具、危険な化粧品などが数週間にわたって掲載され続け、欧州の消費者に積極的に推奨されていた。
欧州委員会のヘンナ・ヴィルックネン執行副委員長は、月曜日の記者会見で次のように述べた。「偽造衣料品や不安全な玩具、危険な化粧品などの拡散は、オンラインショッピングの避けられないコストではない。AliExpressがDSAに基づく義務を怠った結果だ。規模は言い訳にならない。消費者が安全にオンラインショッピングを楽しめるよう、リスクは体系的に特定され、対処されなければならない。」
■アルゴリズムによる害――新たな法的フロンティア
推薦エンジンを単なる中立的な分類ツールではなく「害をもたらすメカニズム」と位置づけたことは、eコマースプラットフォームに対するDSA適用の重要な拡大を意味する。
DSA第34条および第35条に基づき、超大型オンラインプラットフォーム(VLOP)は、自社の技術システムがもたらすリスクを含むシステム的リスクを評価・緩和する義務がある。今回の制裁金の根拠となる法的理論は、閲覧数やクリック数、購入履歴などのエンゲージメントシグナルを利用して商品を浮上・推奨するアルゴリズムは、商業的な関連性を最適化しているという理由だけでその義務を免除されるわけではない、というものだ。アルゴリズムが、自社のモデレーションシステムでフラグが立てられた出品に購入者を誘導する場合、そのアルゴリズムは害の媒介者であり、プラットフォームがその管理責任を負うことになる。
DSAは2024年2月にすべてのプラットフォームに完全適用された。AliExpressは2023年にVLOPに指定されており、規則施行の瞬間から最も厳しいコンプライアンス基準の対象となっていた。欧州委員会は、DSAが完全適用されてから2カ月足らずの2024年3月に調査を開始した。
■AliExpress側の反論と制裁金の規模
AliExpressは欧州委員会の評価に同意せず、制裁金は不当に高額であると反論している。同社は声明で「本日の決定や、不当に高額な制裁金には同意できない。これは当社の長年の原則や、当社が実施してきた重要かつ積極的な対策を反映したものではない」と述べ、あらゆる法的手段を検討しているとした。
欧州委員会は、DSAの枠組みが比較的新しいものであることを減免要因として認めた。DSAの下では、不遵守に対する制裁金は企業の年間世界総売上高の最大6%に達する可能性がある。Alibabaの年間売上高は約1200億ユーロ(約22.3兆円)であり、理論上の上限は約72億ユーロ(約1.3兆円)となる。今回の5億5000万ユーロの制裁金は、その1%未満にとどまる。
2025年6月、欧州委員会はセラーの本人確認、広告の透明性、研究者へのデータアクセスに関するAliExpressからの確約パッケージを受け入れ、法的拘束力を持たせた。しかし、今回の制裁金は、それらの確約では解決されなかった「危険な商品の流通というシステム的リスク」に関する別個の調査結果によるものである。
■中国系プラットフォームへの包囲網
今回の決定はDSAに基づく3番目の制裁金であり、そのうち2件が中国資本のeコマースを対象としている。Temuは2026年5月に同様の違法商品販売対策の怠慢により2億ユーロ(約372億円)の制裁金を科され、これに異議を唱えている。Sheinも2026年2月に開始されたDSAの正式調査の対象となっている。また、X(旧Twitter)は2025年12月にコンテンツモデレーションと推薦システムの透明性に関するDSA違反で1億2000万ユーロ(約223億円)の制裁金を科された。
ヴィルックネン氏は、欧州における中国系プラットフォームの浸透規模を指摘した。AliExpressの欧州における月間ユーザー数は昨年時点で1億9300万人に達し、Sheinの1億5600万人、Temuの1億3000万人を上回る。欧州人の5人に1人が、少なくとも月に1回はこれら3つのいずれかで買い物をしている。
この取り締まりの動きは、EUの関税改革とも並行している。EUは2026年7月1日、小口貨物輸入に対する150ユーロ以下の免税措置を廃止し、一律3ユーロの通関手数料を導入した。これは、DSAの制裁金では対処できない、中国からの直接配送の物流コストをターゲットにした措置である。
さらに、AliExpressの親会社であるAlibabaは、今回の判決のわずか18日前に、米司法省(DOJ)の調査を解決するために6億ドル(約978億円)を支払うことに合意していた。DOJの調査では、2016年から2024年の間にAlibaba.comおよびAliExpress.comで、違法医薬品や規制物質、前駆化学物質、錠剤製造機などの取引が約8万件行われていたことが判明していた。
■10月までに求められる対応
AliExpressは2026年10月20日までに、欧州委員会が特定した各怠慢をどのように是正するかを示す詳細な是正計画を提出しなければならない。欧州デジタルサービス委員会が1カ月以内に意見書を出し、その後欧州委員会が最終的な遵守期限を設定する。原状回復が不十分な場合、上限のない定期的な制裁金が科される可能性がある。
規制当局が求めるのは、単に削除された出品数が増えることではない。AliExpressは、人的審査の人員配置、推薦・広告システムのアルゴリズム制御、再出品セラーへの対策、カテゴリー検証、ブランド授権プロセスのすべてにおいて測定可能な改善を示す必要がある。この10月の計画は、欧州で運営されるすべての主要なマーケットプレイスが注視するコンプライアンスの青写真となるだろう。
業界全体に対する今回の決定のメッセージは明確だ。EUにおいて、マーケットプレイスのアルゴリズムインフラは法的遵守義務の一部となった。DSAはもはや単なるコンテンツモデレーションの法律ではなく、オンラインコマースの全アーキテクチャに及ぶ新たな責任体制の法的基盤となりつつある。
■中国法下におけるデータプライバシーのリスク
AliExpressの親会社であるAlibabaは中国・杭州に本社を置いている。この管轄権により、ユーザーデータがどこに保存されているか、プライバシーポリシーに何が記載されているかにかかわらず、中国法に基づく法的義務が生じる。AliExpressを利用する読者は、以下の固定された法的条件を認識しておく必要がある。
中国の国家情報法(2017年)第7条は、いかなる組織や市民も「法に基づき国家の情報活動を支持し、これに協力し、これと協調しなければならない」と定めている。この法律の下、Alibabaは中国情報当局からの要請を拒否できず、要請があった事実を開示することも法的に禁止されている。
また、サイバーセキュリティ法(2017年)やデータセキュリティ法(2021年)も、政府のネットワーク検査への協力やデータローカライズ、政府によるデータアクセスを義務付けている。
AliExpressが欧州のユーザーから収集するデータ(購買履歴、検索クエリ、デバイス識別子、閲覧行動、決済関連記録など)は、原則としてこれらの法的要求の対象となる。EUのGDPR(一般データ保護規則)による保護はあるものの、欧州の裁判所で中国情報法との衝突が完全に解決されたわけではない。本記事の公開時点で、AliExpressのデータ送信慣行に関する独立したセキュリティ監査は公表されていない。リスクを抑えたい利用者は、専用のブラウザプロファイルの使用、決済情報の保存回避、GDPRに基づくデータアクセス・削除権の行使などを検討できるが、これらは中国の管轄権による構造的リスクを完全に排除するものではなく、提供するデータ量を減らすにとどまる。
■注目ポイントQ&A
●AliExpressはEU法において具体的にどのような違反を犯したのですか?
欧州委員会は3つの核心的な怠慢を特定しました。最も重大なのは、AliExpressの推薦アルゴリズムや有料広告ツールが、フラグの立った危険な商品や偽造品を削除するどころか、より多くの購入者に積極的に推奨していた点です。また、不審な出品を審査する人的モデレーターが不足していたこと、モデレーションの有効性を不十分な単一の指標で測定していたためリスクの規模を過小評価していたことも挙げられます。
●この制裁金の後、AliExpressを安全に利用することはできますか?
制裁金は利用禁止を意味するものではなく、AliExpressはEU内で運営を続けています。しかし、欧州委員会の調査では、2025年6月の時点で同社の推薦システムが欧州の利用者を不安全な商品や偽造品に誘導していたことが確認されています。同社は2026年10月20日までに是正計画を提出する予定ですが、それまでにシステムが実際に改善されるかは第三者による検証が不可能です。独立した適合確認が行われるまでは、玩具や子ども向け製品、化粧品、電化製品などを同プラットフォームで購入する際は細心の注意を払う必要があります。
●今回の決定は、AliExpress以外のオンラインマーケットプレイスにどのような影響を与えますか?
今回の決定により、DSAの下でマーケットプレイスの推薦アルゴリズムや広告配置システムは、中立的な技術ツールではなく、法的遵守義務の一部であることが確立されました。欧州で運営される超大型オンラインプラットフォーム(VLOP)のうち、自社のモデレーションシステムがリスクありと判断した出品をアルゴリズムが推奨している場合、AliExpressと同様の法的リスクに直置します。これはAmazonやeBayなど、月間アクティブユーザー数が4500万人以上の基準を満たすすべてのマーケットプレイスに適用されます。
●AliExpressの運営元と、欧州の利用者のデータプライバシーへの影響はどうなっていますか?
AliExpressは中国に本社を置くAlibaba Groupが所有しており、中国の国家情報法(2017年)、サイバーセキュリティ法(2017年)、データセキュリティ法(2021年)の適用を受けます。これらの法律は、中国企業に対して政府の情報活動への協力を義務付け、その事実の開示を禁止しています。そのため、欧州の利用者が生成した購買データやデバイス識別子、閲覧履歴などは、原則として中国当局からの要求に応じて提供されるリスクがあります。これは同社のプライバシーポリシーやEUのGDPRへの準拠、サーバーの物理的な場所に関係なく存在する構造的なリスクです。
元記事: AliExpress Algorithms Promoted Dangerous Goods Before Removal, EU Finds in Record €550M Fine
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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