米・イランの攻撃応酬でホルムズ海峡の混乱拡大、原油85ドル超でIMFの「ディスインフレ停滞」が鮮明に

2026年7月19日 14:35

印刷

記事提供元:Tech Times

米軍とイランによる攻撃の応酬が17日に激化し、イランの港湾都市バンダル・アッバース周辺では橋や送電線などのインフラが標的となった。これを受けてブレント原油は1バレル=85ドルを突破し、国際通貨基金(IMF)が9日前に示した「2024年初頭から続いてきた世界的なディスインフレ傾向が停滞した」との判断を裏付ける展開となっている。ホルムズ海峡を通常通過する原油の58%には代替ルートがなく、金融市場は攻撃対象の拡大とインフレ長期化への懸念を強めている。

S&P 500は17日の取引開始時に0.51%下落し、ナスダック100は1.62%下落した。両指数を含む米国市場は3日間の上昇基調に終止符を打った。また、複数の情報源や家族、在ドバイ・インド総領事館によると、MV GFS Galaxyに乗船していた30歳のインド人船員ヘランブ・カルマルカル氏の死亡が確認された。2月下旬以降、この紛争では非戦闘国出身の船員12人以上が死亡または行方不明となっている。

■金曜日の夜間に何が起きたのか

米軍は17日(金)にイランの防空拠点や軍事物流インフラを攻撃した。これは、2月28日の紛争開始以来、イランがホルムズ海峡に及ぼしている封鎖圧力を標的としたものだ。イラン側によると、攻撃対象にはホルムズ海峡に面するホルモズガーン州の6つの橋や電力インフラが含まれていた。また、オマーン湾に面したチャバハール港の海上管制塔も破壊されたとみられ、ピート・ヘグセス国防長官は崩壊する管制塔の写真をSNSで共有した。

これに対し、イランは同日、クウェート、バーレーン、オマーンにある米軍施設に向けてミサイルやドローンを発射して報復した。国営メディアによると、ヨルダンもイランのミサイルを迎撃したという。イラン革命防衛隊(IRGC)に近いファルス通信は、IRGC航空宇宙軍司令官のマジド・ムーサビ氏が、南部沿岸とホルムズ海峡に平穏が戻るまで「イラン全土から」の攻撃を継続すると述べたと報じた。法学者らは以前から、民間で広く利用されるインフラへの攻撃は国際法上の戦争犯罪に該当する可能性があると警告している。

イラン側は、今回の米軍によるインフラ攻撃で少なくとも7人が死亡し、20人が負傷したと発表した。イランの保健当局によると、過去1週間では38人が死亡し、400人以上が負傷している。

■ホルムズ海峡の原油「58%」に代替ルートがない理由

ホルムズ海峡は通常、日量約2000万バレルの原油を取り扱っている。これは世界の海上原油貿易の約20%に相当し、世界の液化天然ガス(LNG)の20%も同海峡を通過する。しかし、2月28日以降、同海峡は事実上閉鎖されている。イランは、商船へのミサイル、ドローン、ボートによる直接攻撃、機雷の敷設、船舶の航行を妨害する衛星信号の偽装やGNSS(全球測位衛星システム)ジャミング、VHF無線による閉鎖命令という4つの手段で封鎖を実施している。米軍情報機関によると、イランは敷設した機雷の一部をその後見失ったという。

市場では、OPECプラスの余剰生産能力や国際エネルギー機関(IEA)の備蓄放出で供給途絶を相殺できるとの見方が一般的だった。しかし、ホルムズ海峡の封鎖が長期化すれば、その前提は成り立たない。既存の迂回パイプラインの輸送能力は日量約900万バレルである。サウジアラビアの東西パイプラインは原油を紅海沿岸のヤンブー港へ送り、UAEのアブダビ原油パイプラインはアラビア海に面するフジャイラへ通じている。イラクのキルクーク・ジェイハン・パイプラインは、トルコ経由で地中海へ接続する。

これらの代替ルートをすべて合わせても、通常のホルムズ海峡通過量の約42%しかカバーできない。残りの58%に当たる日量約1160万バレルには、陸路やパイプラインによる代替手段がない。IEAによる過去最大規模の4億バレルの備蓄放出も、これほどの供給不足に対しては数カ月ではなく数週間分の時間を稼ぐにすぎない。

ゴールドマン・サックスのユリア・ジェトコワ・グリグズビー氏率いるアナリストチームは7月8日付のメモで、湾岸地域の原油生産量は依然として紛争前の水準を日量1050万バレル下回っていると指摘した。日量1340万バレルの供給不足が生じている市場では、近く緊張が緩和されない限り「より大幅な需要の減少と、新たな在庫の取り崩し」が必要になるという。湾岸地域からの輸出回復が停滞し続ければ、ブレント原油は2026年第4四半期に1バレル=110ドルを上回る可能性があると同行は警告している。

■市場の反応:S&P 500は3日続伸でストップ

金曜日の市場では、リスク資産から広範に資金が逃避した。S&P 500(SPX)は約0.51%安の7,534、ハイテク株中心のナスダック100(NDX)は1.62%安の29,026で取引されていた。ナスダック100の下げ幅が大きかったのは、同指数のバリュエーションが割引率の変化により敏感であるためだ。ダウ工業株30種平均は0.20%下落し、VIX指数は9.38%上昇して18.30となった。

S&P 500は、3営業日分の上昇を1回の寄り付きで失い、史上最高値を約1%下回る水準となった。

アジア市場はさらに大きな衝撃を受けた。日本の日経平均株価は4.03%下落し、韓国の総合株価指数(KOSPI)は6.37%下落した。地政学的な緊張の激化に加え、原油の純輸入国である両国の経済がエネルギー価格の変動に強く影響されることを反映している。

暗号資産もリスクオフの流れに連動し、ビットコインは約1.33%、イーサリアムは1.58%、ソラナは0.92%下落した。

一方、投資家が伝統的な安全資産を求めたことで、金は1トロイオンス当たり約4,000ドル(約64万8000円、1ドル=162円換算)まで上昇した。米10年債利回りも約4.57%へ上昇し、インフレの長期化によってタームプレミアム(期間プレミアム)が高まるとの懸念を反映した。

■ブレント原油は前年比2割超の上昇

エネルギー市場は、この紛争の影響が最も直接的に波及する経路となっている。ブレント原油は金曜日に1バレル=85.95ドル(約1万3924円、1ドル=162円換算)まで上昇し、前日比2.04%高、前年同期比では24%超の上昇となった。WTI原油も1バレル=79ドル(約1万2798円、同)を上回り、週間で11%を超える上昇となる見通しだ。

ホルムズ海峡の原油輸送は、6月18日に米国とイランが交わした覚書(MOU)を受けて一時的に回復し、合意から10日以内に紛争前の83%の水準に達していた。しかし、タンカーへの攻撃が再開され、イランが7月12日に4度目となる海峡閉鎖を正式に宣言したことで、輸送量は紛争前の70%程度まで落ち込み、その後さらに減少した。米国が海上封鎖を再開した後、最初の丸1日に同海峡を通過した船舶は7隻にとどまり、前日の13隻から減少した。海峡の船舶通航量は現在、2カ月ぶりの低水準となっている。

IMFは2026年通年の平均原油価格を1バレル=89ドル(約1万4418円、1ドル=162円換算)と想定しており、エネルギー価格は紛争前の水準を約25%上回っている。

■IMFが示した「ディスインフレの停滞」と金利への影響

IMFが発表した2026年7月版「世界経済見通し(WEO)改訂版」は、今年最も重大な経済判断の一つとなる可能性がある。2024年初頭から続いていた世界的なディスインフレ、すなわちインフレ鈍化の傾向が停滞したという判断だ。2026年の世界総合インフレ率の見通しは4.7%へ上方修正された。2025年の4.1%から上昇し、4月時点の予測からも0.3ポイント引き上げられた。主な要因はエネルギーと食料価格の上昇である。

IMFは2027年にはインフレ率が3.9%に低下すると予測しているが、これは7月中旬からホルムズ海峡の状況が段階的に正常化し始めることを前提としている。金曜日の緊張激化により、この前提には大きな疑問が生じている。

IMFは2026年の世界成長率予測を、4月時点の3.1%から3.0%へ0.1ポイント引き下げた。一方、2027年の成長率予測は3.4%へ引き上げた。今年の戦争による低迷の後に回復する「V字型」の見通しである。

中央銀行にとって、IMFのこの判断は明快な解決策のない難局を意味する。

米連邦準備制度理事会(FRB)について、市場は2026年初頭の段階で年内2~3回の利下げを織り込んでいた。しかし、ケビン・ウォルシュ議長の就任後初となった6月の連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利を3.50~3.75%で据え置いた。6月のドットプロットでは、FOMC参加者18人のうち9人が2026年末までに少なくとも1回の利上げを予測した。利上げを見込む予測がなかった3月時点からの顕著な変化である。

FRBが直面する難しさは、今回のインフレの構造にある。原油高による物価上昇は、消費者の過剰需要ではなく、海峡閉鎖による供給側のショックに起因する。利上げは需要を抑制することで症状に対処できても、海上ルートを再開させることはできない。

短期金融市場では金曜日、FRBが10月の会合より前に利上げするとの見方が強まった。

欧州では、欧州中央銀行(ECB)がすでに動いている。ECB理事会は6月11日、3つの政策金利をそれぞれ0.25ポイント引き上げ、中銀預金金利を2.25%とした。新たな金利は6月17日に適用された。これは2023年9月以来の利上げであり、2024年6月から2025年6月までの8回連続の利下げからの急転換となった。

ECBは中東での戦争を直接の理由として挙げ、「中東の戦争がインフレ圧力を生み出しており、利上げの決定は幅広いシナリオの下で妥当である」と説明した。ECBは現在、ユーロ圏の総合インフレ率を2026年に3.0%、2027年に2.3%と予測し、2026年のユーロ圏GDP成長率予測を0.8%に引き下げている。

■OPECやIEAは供給不足を補えるのか

完全には補えず、持続的な対応にもならない。これこそが、IMFの「ディスインフレ停滞」という判断を単一のデータ以上に持続的なものにしている構造的要因である。サウジアラビアの日量500万バレルの東西パイプライン、UAEのアブダビ原油パイプライン、イラクのキルクーク・ジェイハン・パイプラインという3つの迂回ルートを合わせても、通常同海峡を通過する日量2000万バレルのうち約900万バレルしかカバーできない。

OPECプラスは危機の発生当初、日量20万6000バレルの増産を約束した。IEAは史上最大の協調備蓄放出となる4億バレルの戦略備蓄を放出した。いずれの措置も一時的な緩和にはなったが、ホルムズ海峡を通常通過する原油のうち、ペルシャ湾から外へ出る代替ルートを持たない日量約1160万バレルという物理的な制約は解消できない。

IMFが認めるように、民間在庫や戦略備蓄の取り崩しは緩衝材となっている。しかし、サプライチェーン圧力指数や製造業購買担当者景気指数(PMI)などの先行指標は、今後の勢いが弱まることを示唆している。ホルムズ海峡の混乱による経済的影響は、数週間ではなく数四半期にわたって表面化する可能性がある。

さらに、湾岸地域は世界の尿素輸出の約30~35%、アンモニア輸出の約20~30%を占めており、肥料の供給途絶が原油ショックと並行して進んでいる。3月下旬時点で、尿素価格は紛争開始以降50%上昇していた。北半球の春の作付け期に肥料が不足すれば、2027年にかけて世界の食料価格に波及する可能性がある。

■米・イラン外交への影響

金曜日の外交状況は、6月18日のMOUによってホルムズ海峡の正常化への道筋が見えたかに思われた6月中旬に比べ、著しく悲観的なものとなっている。イランは、米国が支援する南部航路を利用する船舶への攻撃を開始し、それらの航路がMOUの枠組みに違反していると主張した。これにより合意は崩壊した。イランは7月12日に4度目の海峡閉鎖を正式に宣言し、米国は7月14日に海上封鎖を再開した。

イランの聖職者は金曜日、米国とのいかなる合意も最高指導者モジュタバ・ハメネイ師の立場に反するとして、交渉の放棄を公に求めた。トランプ米大統領は、攻撃を継続しながら交渉上の圧力として標的リストを維持している。アナリストはこの姿勢を「攻撃後に一時停止し、事態のエスカレーションを避けながら外交を機能させようとする」ものだと説明している。一部のアナリストは、イランが早期合意を目指すのではなく、米国の中間選挙を前に交渉上の立場を強めようとしている可能性があるとみている。

紛争を通じて重要な仲介役を果たし、テヘランと比較的敵対性の低い関係を維持しているカタールは、攻撃を受けていない。カタールは金曜日、イランによる湾岸地域のアラブ諸国と、より広い中東地域への攻撃を非難した。

■今後の市場の注目点

金曜日には、地政学的ショックと相互に作用する2つの重要な米国の経済指標が発表される。ミシガン大学が発表する7月の消費者態度指数速報値は、家計のインフレ期待が悪化しているかを示す。FRBが政策金利を据え置くか引き上げるかを判断する上で、注意深く見ている指標である。6月の鉱工業生産と設備稼働率も公表される。

原油価格と米国債利回りが上昇すれば、金融環境が引き締まるリスクが高まり、経済成長を圧迫する可能性がある。同時に、7月28~29日のFOMCを前にFRBの政策判断をさらに複雑にする。

ウォール街が終止符を打った3日間の上昇は、この文脈では市場の基調的な底堅さを示すものというより、一時的な猶予だった。IMFの警告は、単なるデータの修正に関するものではない。最も狭い場所で幅34キロメートルしかない物理的なチョークポイントに関する警告であり、どれほど金融を引き締めても、そこに追加の原油を1バレル送り込むことはできない。

■注目ポイントQ&A

●なぜサウジアラビアやOPECは、ホルムズ海峡で滞っている原油を増産で代替できないのですか?

サウジアラビア、UAE、イラクは利用可能な迂回パイプラインを稼働させていますが、これらの代替ルートの最大輸送能力は合計で日量約900万バレルにとどまります。通常、海峡を通過する日量約2000万バレルには遠く及びません。日量約1100万~1200万バレルの不足分を補う陸上ルートや代替海上ルートは存在しません。OPECプラスの増産やIEAの戦略備蓄放出は、価格ショックを和らげて時間を稼ぐことはできますが、海峡の混乱が続く限り、失われた輸送量を物理的に代替することはできません。この構造的な制約があるため、IMFは今回の事態を一時的な供給途絶として扱わず、2026年の世界インフレ率予測を4.7%に引き上げました。

●中東の紛争による原油高を受けて、FRBは利上げを行うのでしょうか?

FRBは非常に難しい判断を迫られています。6月のFOMCでは、18人の参加者のうち9人が2026年末までに少なくとも1回の利上げを予測しました。利上げを見込む予測がなかった3月時点からの大きな変化です。しかし、原油高によるインフレは過剰な消費需要ではなく、海峡閉鎖という供給側のショックが原因です。利上げは需要を抑えてガソリンや航空燃料の消費を多少減らすことはできても、ホルムズ海峡を再開させることはできません。FRBの政策手段は、これまで対応してきた需要側のインフレには適していますが、供給主導のショックに対して、失業率の上昇や景気減速という代償を伴いながらどこまで積極的に行使するかが、この紛争における金融政策上の中心的なジレンマとなっています。

●IMFが示した「ディスインフレの停滞」とは何ですか?

IMFの2026年7月版「世界経済見通し改訂版」は、2024年初頭から着実に進んでいた世界的なインフレ鈍化、すなわちディスインフレの傾向が停滞したと判断しました。世界の総合インフレ率は、2025年の4.1%から2026年には4.7%へ上昇すると予測されています。IMFは、この反転の主因を中東での戦争に伴うエネルギー価格と食料価格の上昇だとしています。主要中央銀行と金融市場は2026年の利下げ再開を織り込んでいましたが、IMFの判断によって、その期待を維持することは構造的に難しくなりました。インフレ見通しの上昇は、特にエネルギー輸入国において、賃金や貯蓄の実質的な購買力を低下させる点でも重要です。

●ホルムズ海峡の紛争は、投資家以外の一般市民にどのような影響を与えていますか?

市場指数だけでなく、一般の消費者にも燃料価格の上昇を通じて直接的な影響が及んでいます。2026年3月には、カリフォルニア州のガソリン価格が一時1ガロン=5ドルを上回りました。また、ペルシャ湾地域は世界の尿素輸出の約30~35%、アンモニア輸出の約20~30%を占めているため、肥料の供給途絶がサプライチェーンを通じて食料価格にも波及しつつあります。国際海事機関(IMO)によると、非戦闘国出身の2万人以上の船員が、約2000隻の船舶に乗ったままペルシャ湾内に取り残されています。紛争開始以来、少なくとも12人が死亡または行方不明となっています。金曜日には、MV GFS Galaxyに乗船していた30歳のインド人船員ヘランブ・カルマルカル氏の死亡も確認されました。

元記事: Iran Strikes Bandar Abbas Infrastructure as IMF Confirms Global Disinflation Has Stalled

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

関連キーワード

関連記事