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スペースX株が16%急落、200億ドルの社債発行で露呈した「債務返済」の現実
新規上場した米スペースX(SpaceX)の株価が、上場後初となる社債発行計画の発表を受けて急落している。IPOで調達した巨額資金の多くが既存の債務返済に充てられることが判明したほか、今後の巨額なAI投資や、早ければ2026年8月にも始まる大規模なロックアップ解除による株式需給の悪化が懸念されている。投資家は、同社の長期的な成長ストーリーと、アナリストが指摘する割高なバリュエーションとの間で慎重な判断を迫られている。
■200億ドルの社債発行で露呈した債務返済の現実
新規上場したスペースX(SpaceX、Nasdaq: SPCX)の株価は、2026年6月22日(現地時間)に約16%下落し、3営業日連続の続落となった。同社が200億ドル(約3兆2400億円、1ドル=162円換算、以下同)規模の社債発行を計画していることが確認され、投資家の間に動揺が広がったためだ。IPOで一般投資家などから調達した857億ドル(約13兆8834億円)のうち、どれだけが手元に残るのかという疑問に対し、社債の発行申請書は「ほとんど残らない」という厳しい現実を示している。
申請書によると、今回の社債発行による調達資金は「ブリッジローン(つなぎ融資)の未払い債務の全額返済」に充てられる。このブリッジローンは、スペースXが2026年2月にイーロン・マスク氏のAI企業であるxAIを約1.25兆ドル(約202.5兆円)で買収した際に抱えた債務だ。スペースXがロケットや人工衛星、AI開発に充てる850億ドル(約13兆7700億円)規模の豊富な資金を確保したと期待していた個人投資家は、同社が上場後の最初の行動として、既存の借入金を返済するためにさらに200億ドルを借り入れる様子を目の当たりにすることになった。
■ブリッジローン返済の期限と市場の動揺
スペースXは6月22日朝、上場からわずか10日後となる初の無担保シニア社債の発行を申請した。この社債は適格機関投資家向け(ルール144Aに基づく)に販売されるため、ナスダック上場時にSPCX株を買い進めた個人投資家は購入できない。ブルームバーグは先週、発行規模が200億ドル程度になると報じていたが、公式な申請書では規模は明記されず、資金使途が「xAI買収資金として大手5行(バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、JPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー)から受けたブリッジローンの返済」であることが確認された。
このブリッジローンは、いずれ恒久的な資金調達によって借り換える必要があった。しかし、市場を動揺させたのはそのタイミングと緊急性だ。スペースXは6月12日のIPOで750億ドル(約12兆1500億円)を調達し、その3日後に引受会社がグリーンシュー(超過割当)オプションを行使したことで、調達額は857億ドルに達した。同社は6月19日時点で約100.8億ドル(約1兆6330億円)の現金および現金同等物を保有していると開示していたが、その大部分はすでに使い道が決まっている。ブリッジローンの返済期限は2027年9月に迫っており、株価の動向に関わらず借り換えが必要な状態だった。
■株価下落の背景とCursor買収による希薄化懸念
スペースXの株価は、6月16日に過去最高値の225.64ドルを記録して以降、下落に転じている。最高値を記録した同日、同社はAIコーディングスタートアップ「エニスフィア(Anysphere、Cursorの開発元)」を600億ドル(約9兆7200億円)の全株式交換で買収するオプションを行使した。その後、6月18日の米連邦準備制度理事会(FRB)による金利据え置き決定が株式市場全体のお荷物となり、IPO後の上昇ラリーは終了。SPCX株は同日に約5%下落し、格付け機関から投資適格格付けを得た19日にもさらに3.6%下落した。22日の終値は約165ドルとなり、ピークから約27%の下落となっているが、IPO価格の135ドルは依然として約22%上回っている。
Cursorの買収劇は、IPO目論見書で示唆されていた構造的な懸念を浮き彫りにした。上場からわずか4営業日後に買収オプションを行使したことで、スペースXは自社の株式を買収資金として即座に活用する姿勢を示した。しかし、600億ドルの全株式交換による買収は、既存株主に対して約3.4%の株式希薄化をもたらす。この取引は規制当局の承認を経て、2026年第3四半期に完了する見通しだ。
■巨額の資本燃焼とAI事業への投資予測
スペースXに対する弱気派の根拠は、同社の3つの事業セグメントの収支状況にある。衛星インターネット部門の「スターリンク(Starlink)」は唯一の黒字部門であり、2025年の営業利益は約44億ドル(約7128億円)、マージンは39%だった。しかし、ロケット打ち上げ事業と、チャットボット「Grok」やソーシャルプラットフォーム「X」を含むAI部門(xAI)がその利益を食いつぶしている。スペースXの2025年通期の純損失は49億ドル(約7938億円)と赤字に転落し、2026年第1四半期だけでも42.8億ドル(約6933億6000万円)の純損失を計上した。特にxAI部門は、2025年に12.7億ドル(約2057億4000万円)の設備投資を行い、63.6億ドル(約1兆303億円)の営業損失を出している。
今後の資金需要はさらに膨らむ見通しだ。エバーコアISI(Evercore ISI)の予測によると、スペースXの設備投資額は2025年の約200億ドルから、2031年には7320億ドル(約118兆5840億円)に急増し、そのうち約6660億ドル(約107兆8920億円)がAI分野に投じられるという。また、主幹事会社であるゴールドマン・サックスは、同社のフリーキャッシュフローが2029年に1050億ドル(約17兆100億円)の赤字となり、黒字化するのは2031年になると予測している。強気派のシナリオは、投資家が今後数年間にわたる赤字拡大に耐え、計画通りの収益拡大を待つことができるかどうかにかかっている。
■Reflection AIとの提携による一部の収益機会
一方で、好材料もある。スペースXのAI部門は、オープンソースAIスタートアップの「リフレクションAI(Reflection AI)」との間で、メンフィスにあるデータセンター「コロッサス2」のNvidia製「GB300」プラットフォームを用いたGPU計算能力を供給する新たな商業契約を発表した。元Google DeepMindの研究者らが設立し、250億ドル(約4兆500億円)の評価額を持つリフレクションAIは、2026年7月1日から月額1.5億ドル(約243億円)を支払い、2029年までの契約総額は最大63億ドル(約1兆206億円)に達する見込みだ。
Nvidiaは以前、リフレクションAIに8億ドル(約1296億円)を出資しており、今回の取引は、Nvidiaが自社チップを購入するスペースXの顧客に対して資金援助を行うという、一種の循環的な構図を作り出している。この契約は、スペースXがすでに結んでいるアンソロピック(Anthropic)やグーグル(Google)との計算能力供給契約に加わるものとなる。強気派は、ロケット、衛星、AIインフラを垂直統合しているスペースXが、大規模な計算能力の提供において構造的な優位性を持つと主張するが、弱気派は、こうした契約による収益の裏には、それをはるかに上回る巨額の設備投資が存在すると指摘している。
■迫るロックアップ解除と需給悪化のリスク
現在、スペースXの市場流通株(フリーフローティング)は全株式の約4.2%にとどまっており、この極端な品薄状態が上場直後の急騰と現在の急落を増幅させている。22Vリサーチ(22V Research)のストラテジスト、ジェフ・ジェイコブソン氏によると、最初のロックアップ解除は一般的な180日間の制限よりも早く、複雑なスケジュールで実施されるという。
最も重要なトリガーは株価連動型だ。SPCX株がIPO価格(135ドル)を30%上回る175.50ドル以上で維持された場合、インサイダー保有株の10%が解除される。さらに、2026年8月中旬に予定されている上場後初の決算発表に伴い20%が解除され、その後8月21日頃と9月10日頃にそれぞれ7%ずつ、株価に関わらず解除される。ジェイコブソン氏は、9月初旬までにインサイダーが保有株の最大44%を売却可能になり、現在の浮動株が約900%増加する可能性があると試算している。この大量の売り圧力が、通期決算の開示前に市場を襲うことが、現在の株主にとって最大の構造的リスクとなる。
一方で、7月6日頃にはナスダック100指数のリバランスに伴うパッシブ買いが期待されている。スペースXがナスダックの「ファスト・エントリー(早期参入)」ルールに基づき、上場15営業日目を迎えるためだ。TDセキュリティーズ(TD Securities)は7月6日を具体的な組み入れ日と特定しており、インデックス追随ファンドによる数十億ドル規模の買い入れが発生するとみられる。この需要が、数週間後に迫るロックアップ解除による売り圧力を相殺できるかどうかが、今夏の焦点となる。
■アナリストによる厳しい評価とガバナンスの課題
スペースXの適正価値を巡っては、市場の評価と独立系アナリストの見解との間に大きな開きがある。現在の株価約165ドルは、2025年の実績売上高の約115倍に相当する。ゴールドマン・サックスの予測通り、xAIの売上高が2025年の32億ドルから2030年までに3220億ドル(約52兆1640億円)超へと急成長しなければ、この株価水準を正当化することは難しい。
ニューヨーク大学(NYU)スターン経営大学院の財務学教授で「バリュエーションの権威」として知られるアスワス・ダモダラン(Aswath Damodaran)氏は、スペースXの新規上場申請書(S-1)を分析し、同社の株主価値を約1.3兆ドル(約210.6兆円)、1株あたり約103ドルと試算した。同氏は、目論見書に記載された28.5兆ドル(約4617兆円)という獲得可能な最大市場規模(TAM)の数値(うち26兆ドルがAI関連)を「幻覚(ハルシネーション)」と切り捨てている。また、モーニングスター(Morningstar)のアナリスト、ニコラス・オーウェンズ(Nicolas Owens)氏は、Cursorの買収劇を受けて適正株価を62ドルに引き下げ、同社がカバーする銘柄の中で「2番目に割高な株式」と評した。現在の株価は、同氏の適正評価額の約2.7倍に達している。
さらに、イーロン・マスク氏は議決権の約85%を保有するクラスB株を握っており、一般投資家は経済的なリスクを全面的に負う一方で、資金配分や買収、社債発行などの重要な意思決定に対するガバナンス上の影響力はほぼ皆無である点にも留意が必要だ。
■注目ポイントQ&A
●スペースXの株価が急落している主な理由は何ですか?
主な要因は3つあります。1つ目は、IPO直後に発表されたAIスタートアップ「エニスフィア(Cursorの開発元)」の600億ドル規模の買収による株式希薄化懸念です。2つ目は、200億ドルの社債発行計画により、IPOで調達した資金の多くが既存の債務(xAI買収時のブリッジローン)の返済に充てられることが判明した点です。3つ目は、早ければ2026年8月にも始まる大規模なロックアップ解除に伴う、株式需給の悪化懸念です。
●200億ドルの社債発行は、投資家にとってどのような意味を持ちますか?
この社債は、2026年2月にイーロン・マスク氏のAI企業「xAI」を買収した際のブリッジローン(返済期限2027年9月)を返済するために発行されます。スペースXは主要格付け機関から投資適格格付けを得ており、有利な条件での借り換えが可能とみられますが、上場直後に巨額の債務返済を迫られている現実が浮き彫りになりました。
●インサイダー保有株のロックアップ解除はいつ、どの規模で行われますか?
解除スケジュールは段階的です。株価が175.50ドル以上を維持した場合に10%が解除されるほか、2026年8月中旬予定の第1四半期決算発表時に20%、さらに8月21日頃と9月10日頃にそれぞれ7%ずつ解除されます。9月初旬までに最大で全株式の44%が売却可能になり、現在の市場流通株(浮動株)が約900%増加する可能性があります。
●アナリストはスペースXの適正株価をどのように評価していますか?
評価は非常に厳しく、現在の株価(約165ドル)を大きく下回っています。バリュエーションの権威であるアスワス・ダモダラン教授は1株あたり約103ドル(企業価値1.3兆ドル)と試算し、目論見書の市場予測を「幻覚」と指摘しています。また、モーニングスターのニコラス・オーウェンズ氏は適正株価を62ドルとしており、現在の株価は極めて割高であると警告しています。
元記事: SpaceX Stock Falls 16% on $20 Billion Bond Debut: Capital Already Owed
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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