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Anthropic、「Mythos」同等の最高性能モデル「Fable 5」を一般提供開始―22日まではサブスクリプション内で無料提供

Anthropicは6月9日、「一般公開した中で最も高性能」の大規模言語モデル「Claude Fable 5」を発表した。Photo by Solen Feyissa on Unsplash[写真拡大]
Anthropicは2026年6月9日、同社が「一般公開した中で最も高性能」とする大規模言語モデル「Claude Fable 5」を発表した。同時に、Fable 5と中身は同一ながら一部の安全策を解除した「Claude Mythos 5」を、サイバー防御の担い手など限られた組織向けに提供する。両者を分けるのはモデルの能力ではなく、その周囲に設けた安全策(ガードレール)だ、というのが同社の説明である。開発者・企業ユーザーは本日から利用できる一方、サブスクリプション提供は段階的で、無料提供は6月22日まで。
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■ 中身は同じ、囲いだけが違う「双子」のモデル
Anthropicは2026年6月9日、自社が一般公開した中で最も高性能だとする「Claude Fable 5」を発表した。あわせて、サイバー防御の担い手や重要インフラ事業者からなる小規模なグループ向けに「Claude Mythos 5」を提供する。これはFable 5と同じ基盤モデルでありながら、一部の安全策を解除したものだ。
両者が名称を共有するのは意図的なものだという。「Fable」はラテン語のfabula(「語られるもの」)に由来し、ギリシャ語のmythosに通じる。両者を分けるのはモデルそのものではなく、その周囲に設けた安全策だ。
今回のローンチを一言でいえば、こうなる。Anthropicは、制限を取り払った「双子」を公に出すには危険すぎると自ら考えるシステムを、一般向けに送り出した。しかもそれは、フロンティアAI(最先端AI)が危険な水準にまで高性能化しつつあると同社が公に警告した数日後だ。そして広い一般公開を可能にしたのは、能力を落としたモデルではなく、より強固な「囲い」、すなわち安全策の側だった。
■Mythosクラスとは何か
Mythosクラスは、Anthropicが能力面で従来のOpusクラスの上位に位置づける新しい階層だ。その第一弾であるClaude Mythos Previewは4月、「Project Glasswing」という枠組みを通じて、サイバー防御の担い手や重要インフラ事業者からなる限られたグループに提供された。高度なサイバーセキュリティ能力を備えるため、一般公開は見送られたという。
Fable 5は、Anthropicが「誰にでも公開して十分に安全」と判断したバージョンだ。一方のMythos 5は性能を高めた制限付きバージョンで、当初は米政府と連携してGlasswingを通じて提供される。同社はこれを「世界のどのモデルよりも強力なサイバーセキュリティ能力を持つ」と説明している。
■ 価格と提供スケジュール
価格は両モデルとも、入力100万トークンあたり10ドル(約1,600円)、出力100万トークンあたり50ドル(約8,000円)で、Mythos Previewの半額未満にあたる(1ドル160円で完全)。
Fable 5は本日から、Claude APIおよび従量制のEnterpriseプランで利用できる。サブスクリプション系プランでの提供は段階的で、Pro・Max・Team・席数ベースのEnterprise各プランでは6月22日まで無料で含まれる。6月23日以降は容量が拡大するまで利用クレジット制に移行し、その後は標準プランの機能として復帰させる方針だとしている。
■ Claude Fable 5の性能は
Anthropicによれば、Fable 5はソフトウェア開発、ナレッジワーク(知識労働)、画像認識、科学研究といった分野にわたり、テストしたほぼすべてのベンチマークで最高水準(state-of-the-art)の成績を収めた。しかも、タスクが長く複雑になるほど、その差は広がるという。
ソフトウェア開発では、Stripeが早期テストの段階で、このモデルが数カ月分の作業を数日に圧縮したと報告している。5,000万行規模のRubyコードベースにおいて、人手ならチームで2カ月以上かかるコードベース全体の移行作業を、1日で完了させたという。
CognitionによるFrontierCodeという評価は、本番運用レベルの品質を満たしつつ難度の高いコーディング課題をこなせるかを測るものだが、ここでFable 5は「中程度」のeffort設定でもフロンティアモデルの中で最高得点を記録し、従来のClaudeモデルよりトークン効率が高かった。CursorのCEOは、同社の社内ベンチマークCursorBenchで最高水準であり、これまで手の届かなかった長期的(long-horizon)な課題に道を開いたと述べている。
ナレッジワークの領域では、Hebbiaが用意した上級者向けの金融ベンチマークで首位の成績を収め、文書の読解や図表の解釈で大きく伸びた。トレーディング会社のIMCは、自社のトレーディング分析の評価でほぼ全面的に高得点を取ったとしている。画像認識では——Anthropicはこの分野で新たな最高水準だとしている——詳細な科学図版から正確な数値を読み取ったり、スクリーンショットだけからWebアプリのソースコードを再構築したりでき、しかも従来より補助(足場)が少なくて済むという。
目玉となるデモはこうだ。従来のClaudeは補助ツールを使ってもポケモン「ファイアレッド」のプレイに苦戦していたが、Fable 5は地図やナビゲーション補助なしに、生のスクリーンショットだけでゲームをクリアした。デッキ構築型ゲーム「Slay the Spire」では、ファイルベースの永続的なメモリを与えられた状態で、Opus 4.8の3倍の伸びを示し、最終章(final act)への到達回数も3倍に達した。
■ Mythos 5は研究室で何をしたか
もっとも目を引く主張は、社内の科学研究に用いられた制限の少ないバージョン、Mythos 5に関するものだ。Anthropicのタンパク質設計の専門家によれば、創薬プロセスの一部を約10倍に高速化したという。あるテストでは、タンパク質設計やバイオインフォマティクスのツールを与えられただけで人間の手助けなしに、熟練した人間の担当者と互角かそれ以上の成果を出し、通常は科学者が担う一連の作業——結合部位の選定、設計ツールの選択と実行、失敗からの立て直し——をこなしたとしている。この研究で扱った14のタンパク質標的のうち、9件で有望な創薬候補が得られ、現在検討が進められているという。
さらにAnthropicは、Mythos 5を、新規性があり説得力のある科学的仮説を一貫して生み出せる初のモデルだとしている。Opusクラスのモデルとのブラインド比較では、同社の科学者が分子生物学の仮説についてMythos 5側を約80%の確率で支持した。そのうちの一つ——大腸菌(E. coli)のあるタンパク質に関する新しいメカニズム——は、独立した別の研究室によって裏付けられたという。
ゲノミクスの分野では、1週間以上にわたるほぼ自律的な作業を通じて独自の研究を進め、138種の動物にまたがる単一細胞(single-cell)データを集約し、独自の機械学習モデルを訓練した。このモデルは、最近『Science』誌に発表されたモデルを、その100分の1の規模で上回ったという。アライメント(AIの挙動を意図に沿わせること)の面では、Anthropicの自動評価によると、Mythos 5の不整合な挙動の発生率は低く、Opus 4.8と同程度だった。Fable 5は中身が同一のモデルであるため、その水準も同程度とされる。
■ 安全策はどう機能するのか
広い一般公開を可能にしている仕組みが、3つの領域をカバーする一連の「分類器(classifier)」だ。分類器とは、悪用の可能性を検知する別建てのAIシステムを指す。いずれかの分類器が反応した場合、その要求は拒否されるのではなく、Anthropicが次に高性能とするモデルClaude Opus 4.8が応答を担当し、ユーザーには引き継ぎが起きたことが知らされる。
この設計では、フラグが立った要求は行き止まりになるのではなく、なお高性能なモデルへと「格下げ」されるにとどまる点が重要だ。Anthropicによれば、Fable 5のセッションの95%超ではフォールバック(切り替え)はまったく発生しない。つまり大半のユーザーにとって、性能は実質的にMythos 5と同等だという。
1つ目の分類器はサイバーセキュリティを対象とする。Mythosクラスのモデルは、ソフトウェアの脆弱性の発見や、複数段階にわたる攻撃タスクの遂行が際立って得意とされる領域だ。Anthropicによると、外部のバグバウンティ(脆弱性報奨)テストを1,000時間以上実施したが、あらゆる防御を破る「ユニバーサル・ジェイルブレイク」は見つからなかった。
長時間に及ぶエージェント的なタスクでも、外部のレッドチームは今のところ突破口を発見できていない——ただし英国のAI安全研究所(UK AI Safety Institute)は短時間ながら一定の前進を見せた——という。また、ある外部パートナーは、有害なサイバー関連の問い合わせに対するFable 5の防御力を、テストしたどのモデルよりも強固だと評価したとしている。
2つ目は生物学・化学を対象とする。Anthropicによれば、従来は生物兵器に関連する限られた範囲の問い合わせだけをブロックしていたが、もはやそれでは不十分と考えるようになったという。現実世界での科学的能力が高まったことと、潤沢な資金を持つ悪意ある主体への懸念の両方を理由に挙げている。このためFable 5は現在、生物学・化学に関する要求の大半をOpus 4.8に振り向ける。
3つ目は「蒸留(distillation)」を対象とする。蒸留とは、競合モデルを訓練するためにClaudeの能力を抜き取ろうとする試みのことだ。同社は、権威主義的な国々に結び付いた大規模な抽出(抜き取り)の試みを確認したとしており、これを受けた措置だという。
■ データ保持とアクセスの変更点
Anthropicはさらに、Mythosクラスのモデルについて、自社および第三者のプラットフォームをまたいだすべての通信に30日間のデータ保持を課す。同社によれば、このデータはモデルの訓練や安全性以外の目的には使われず、人によるアクセスはすべて記録され、ほぼすべてのケースで30日後に削除されるという。狙いは、複数の要求を組み合わせた複雑な攻撃を防ぐことと、誤検知(false positive)を特定して減らすことにあるとしている。
アクセスは段階的に広がる。Glasswingのパートナーは本日から、サイバー関連の安全策を解除したMythos 5に移行できる。さらに数週間のうちに、審査を経た生物医学の研究者が、サイバー関連の安全策は維持したまま生物学・化学の安全策を外したバージョンを使える「信頼済みアクセス(trusted access)」プログラムが始まる予定だ。
■ このローンチが持つ意味
Fable 5でもっとも影響が大きいのは、個々のベンチマークの数字ではなく、それが打ち立てるリリースの「型」かもしれない。何を世に出せるかを決めるのは、もはや能力ではなく安全策の側になっている——という見方だ。
Anthropicは、フロンティアシステムを公開せずに抱え込むのではなく、決定論的な分類器と段階的な信頼済みアクセスで囲い込むことで、一般利用に向けてパッケージ化した。拒否ではなくフォールバック、義務的なデータ保持、そしてもっとも機微なサイバー・生物分野には制限付きの階層を用意する、という構えだ。
ユーザーにとっての実務上の難点は、安全側に厳しく調整された分類器が、無害な要求まで時に低性能なモデルへ振り向けてしまうことだ。Anthropicもこの摩擦を認めており、縮小すると表明している。より広い意味では、この手法は、同じデュアルユース(軍民両用・善悪両用)のジレンマに直面する他のフロンティア研究機関が、追随を迫られかねない「ひな型」として受け止められつつある。
■注目ポイントQ&A
●Claude Fable 5とMythos 5の違いは何ですか?
両者は中身が同一のモデルです。Fable 5は安全性の分類器を有効にした状態で一般公開されたバージョンで、Mythos 5はその安全策の一部を解除し、Project Glasswingを通じて審査済みのサイバーセキュリティ・パートナーに限定提供されるバージョンです。生物分野向けの「信頼済みアクセス」プログラムも予定されています。名称の違いは能力差ではなく、安全策の違いを反映したものです。
●Claude Fable 5の料金はいくらですか?
Fable 5とMythos 5は、入力100万トークンあたり10ドル、出力100万トークンあたり50ドルで、Claude Mythos Previewの半額未満です。サブスクリプションプランでは、Fable 5は2026年6月22日まで無料で含まれ、その後はAnthropicが容量を拡大するまで利用クレジットが必要になります。
●Claude Fable 5の安全策は何をするのですか?
Fable 5の分類器が、サイバーセキュリティ、生物学・化学、またはモデルの蒸留に関わる要求を検知すると、その応答はFable 5ではなくClaude Opus 4.8が担当し、ユーザーに通知されます。Anthropicによれば、このフォールバックが起きるのはセッションの5%未満で、大半のユーザーはFable 5の能力をそのまま利用できるとしています。
●Claude Fable 5はClaude Opus 4.8より優れていますか?
Anthropicは、Fable 5がテストしたほぼすべてのベンチマークで最高水準にあり、長く複雑なタスクではOpus 4.8を上回ると報告しています。一部の評価では、初期の顧客が二桁(パーセント)の向上を報告したとしています。改善がもっとも顕著なのは、コーディング・分析・科学研究における長期的なエージェント作業です。
元記事: Anthropic Launches Claude Fable 5: Most Powerful Public Model, Gated by Safeguards
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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