クリスマス商戦の内実 AI・暗号通貨・金利が映す「消費の分断」

2025年12月20日 14:07

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 2025年のクリスマス商戦は、小売データ上は底堅く推移している。だがその内実を細かく見ると、消費マインドの改善というより、消費の二極化がより鮮明になっている。

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 AI投資や暗号資産を通じて資産形成を意識する層は消費を抑制し、物価高に直面する層は必要最小限の支出にとどまる。この構図を下支えしているのが、年末特有の季節性による一時的な支出集中だ。

■AI投資家は消費しない 資産形成マインドの定着

 足元ではAI関連株が調整局面に入っている。エヌビディア株は12月第3週にかけて週間で数%下落し、AI投資の持続性を巡る警戒感が市場に広がった。

 ただし、AI投資家の行動は必ずしも消費拡大につながっていない。新NISAを通じてAI関連の投資信託や個別株に資金は流入しているが、いわゆる「資産効果」は限定的だ。

 新NISAは長期・非課税を前提とする制度設計であり、短期的な利益確定や消費への転化が起こりにくい。投資で得た余剰資金を使うより、再投資に回す意識が強まっている点が、従来との大きな違いと言える。

■暗号通貨の調整と底値観測 制度化期待は継続

 暗号通貨市場も調整局面にある。ビットコインは10月に一部取引所で12万ドル台を付けた後、12月中旬には8万ドル台後半まで下落した。

 市場では投げ売り指標の上昇を背景に底値観測が出始めている。過度な悲観が広がる局面は、過去のサイクルでも反発の起点となることが多い。

 トランプ次期政権の暗号資産推進姿勢や、米国で議論される戦略的備蓄構想を背景に、ビットコインは投機対象から資産クラスとしての位置づけを強めつつある。

■金利環境の安定化 消費より投資を後押し

 FRBは年後半以降、段階的な利下げを進め、直近のFOMCでも0.25%の利下げを決定した。米10年債利回りは4%台半ばで安定し、変動幅も小さい。

 この金利環境は長期投資家にとっては好材料だが、消費マインドを直接押し上げる効果は限定的だ。日本では円安が続き、輸入物価の上昇が家計を圧迫している。

■筆者の視点:平均値に現れない年末商戦

 AI投資や暗号資産投資で資産形成を意識する層は消費を抑え、物価高に直面する層は支出を切り詰める。

 小売データが示す堅調さは、こうした分断を平均化した結果にすぎない。短期の売上数字にとらわれず、この構造変化を軸に見ることが、2026年の消費動向を読み解く出発点になる。

◇3つの視点
・AI:調整局面でも投資優先の姿勢は崩れていない
・暗号通貨:価格調整と制度化期待が同時進行
・金利:安定は投資を後押しするが、消費効果は限定的

◇小さな定点観測
 年末の支出増は、消費マインドの回復というより、季節性による一時的な集中に近い。マーケットはこわくない。生活の一部だ。

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